ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP032

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陰謀に塗れた世界

「陰謀が……世界を覆っている……」
 ボクからボールを受けた龍丸さんは、そのままドリブルで前線に押し上がっていた。

「センターバックが、ドリブルでオーバーラップとはな。ボールを奪って、カウンターを仕掛けるぞ」
「了解っす、キャプテン!」
 狩里矢の九龍キャプテンと、旗さんが龍丸さんに襲い掛かる。

「キサマら、ロスチャイルドの人間か?」
「……は?」
「コイツ、いきなり何言って……あッ!?」

「やはりな。オレの目は、誤魔化せんぞ!」
 龍丸さんは、大きなスライドのドリブルで、2人を抜き去っていた。

「オイ、ピンク頭。あの龍丸ってヤツ、センターバックなのに相手を抜いちまったぞ!」
「龍丸は小学生時代は、フォワードや中盤をやっていたかんな」
 ベンチの紅華さんが、黒浪さんの質問に答える。

「次は、湯楽とのマッチアップだ。大型選手同士の、競り合いになるが……」
 雪峰さんが言った通り、龍丸さんの進路を湯楽さんの長い手足が塞いだ。

「やはりこの地球も、既にヤツらの魔の手が伸びていたのか」
 龍丸さんは、右足のアウトでボールを右に出し、強引に突破を図る。

「お前、何言って……と、油断はしないよ」
 湯楽さんも直ぐに反応し、ボールに長い脚が伸びた。

「ああ、ボールを取られる。ここでカウンターを喰らったら……アレ?」
 途中で説明を止める、黒浪さん。
龍丸さんが、右のインサイドでボールを切り返し、相手の股の下を通して抜き去った。

「アレは、キミの得意とするフェイントですね」
「まあな、柴芭。龍丸は、ドリブルのセンスもあるから、盗んでやがったのさ」
「ですがあれだけの技術がありながら、どうしてセンターバックをやっているのですか?」

 鉄壁だった、旗さん、湯楽さんのダブルボランチが抜かれ、慌ててセンターバックが対処し、間合いを詰める。
けれども龍丸さんは、左にパスを出した。

「う、うわ!?」
 パスは、ピタリとボクの脚に収まる。

「うお、ここでパスかよ。意表を突くプレイだぜ」
「違うな、クロ」
「な、なにがチゲーんだ、ピンク頭?」

「こっちや、一馬!」
 金刺さんの、声がした。

 顔を上げると、龍丸さんの対処に飛び出したセンターバックの抜けた穴に、金刺さんが金髪ドレッドヘアを靡かせながら走り込んでいる。

 ボクは、フワリとボールを上げた。
金刺さんの身体が、軽やかに宙を舞う。

「これで、1点差やでェ!」
 サーファーらしい、美しい空中姿勢と長い滞空時間のボレーが、狩里矢のゴールに突き刺さった。

「なあ、ピンク頭。今のはスゴいゴールに見えたんだが?」
「決めたのは、イソギンチャクだろ」
「それが、どうした。起点は完全に、龍丸じゃんか?」

「なる程。そう言うタネと仕掛けでしたか」
「あ、柴芭は解かったのか?」
「ええ、単純な答えですよ。彼は……」

「アイツはフィニッシュが、ド下手なんだよ」
 答えは、至極単純だった。

「マジかァ。アレだけ技術があって、ボールが持てんのにィ?」
「むしろ、性格の問題だろうな。アイツは極度の陰謀論者で、あらゆるモノに疑いを持っている」

「あ、確かにヘンだとは思うケド、それと何の関係が?」
「アイツは、自分をも疑っている。イヤ、自分の能力を、最も信頼してないんだ」

「だから、シュートを撃たない……と?」
「ああ、肝心なところでパスして、味方に任せちまう。フォワードだった頃も、打てば決まる場面でパスを出して、チャンスを潰しちまうコトもザラだった」

「それで、センターバックにコンバートされたのですね」
「アイツから見れば、世の中は陰謀に塗れているらしいからな。陰謀に立ち向かうって意味でも、ディフェンスのが性に合ってたんだろうぜ」

 ゴールを決め喜ぶ金刺さんとは対照的に、チャンスを演出した龍丸さんはゆっくりと自陣に引き上げて行く。

 ……龍丸さんって、ストイックで寡黙な人なんだなあ。
ベンチでの会話など露も知らないボクは、そう思っていた。

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