ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP018

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海外からのオファー

「一馬に気合入れるのはいいっスけど、倉崎さん。試合は、アップ(ウォーミングアップ)とか終わってからじゃ無いんスか?」
 紅華さんが指摘した。

「オレはこれから、名古屋リヴァイアサンズの練習に合流せねばならん。悪いがもう、行かないと間に合わないんだ」
 そ、そうなんだ……。

「なんだよ、せっかくオレさまのスピード、見せたかったのに」
「ワイの初陣かて見て貰いたかったんやが、まあしゃ~ないわな」
 ボクだって、黒浪さんや金刺さんと同じ気持ちだ。

「倉崎、向こうのチームの監督に、挨拶くらいしてくね」
「そうですね。それじゃお前ら、頑張れよ」
 倉崎さんは、立てた2本指で敬礼した後、セルディオス監督と出て行った。

 2人は、オーバーレイ狩里矢のチーム関係者に挨拶をした後、ボクたちがアップを始めた練習場の隣道を歩く。

「すみません、セルディオスさん。監督を引き受けていただいて、感謝してます」
「なあに、ヒマなメタボ親父の道楽ね。それに彼ら、中々見どころあるね」

「ええ、一馬以外の中核メンバーは、ウチの弟がリストアップしてくれた人材ですからね」
「でも、その御剣に10番預けたのはナゼね?」

「アイツは、オレが始めて自分の眼で見てスカウトした人材なんです」
「弟さん、許してくれそうね?」
「アイツのチームの中心は、オレでしたからね」

「確かに良くないね。倉崎1人で、チームの財政が傾きそうな人選よ」
「もしかしたらアイツらの中にも、そんな人材が眠っているかも知れませんよ」

「甘いね。10代の時点でスター扱いもされて無い人材、何年か後には全員別の職業に就いてるコトだってあるよ」
「相変わらず、厳しいですね、セルディオス監督」

「10代のスターがプロで挫折して行く姿、いっぱい見て来たからね。海馬だってそうよ。高校時代にアイドル扱いされていい気になって、今じゃあの体たらくよ」
「オレも、気を付けないとですね」

「今日の試合、相手は地域リーグでの最高峰リーグまで昇ったコトもある強豪ね。勝てる見込みはマズないよ」
「はい。オレも彼らを、3年のスパンでプロ意識を植え付け、育てようと思っています」

「3年後……高校を卒業する頃までに彼らが、何人残っているか賭けてみない?」
「プロとしてスカウトされて、チームを離れる以外の理由でしたら乗りますよ」

「彼らがスカウトされてチーム離れるより、倉崎が日本離れる方が先だと思うね」
「え……?」
「今、何チームからオファー来てるね?」

「さ、流石ですね」
「サッカーの伝道師(エヴァンゲリズモ)の眼は、伊達じゃないよ」

「オランダの1部リーグから3チーム。スペイン2部から2チーム。イタリア2部から2チーム。あと、ドイツの1部からも昨日……」
「どっちが流石よ。呆れたオファーの数ね」

「でも、流石に迷ってます」
「何で迷う必要あるね。さっさと行くよ」

「オレがプロで活躍し始めたのは、たった2ヵ月前ですよ。実績が……」
「プロのスカウトの眼、舐めない方がいいね。1件や2件ならまだしも、それだけ大勢のスカウトが倉崎、アナタを評価してるんだよ」

「で、ですが……」
「彼らのコトが、心配ね?」
「そ、それは……」

「チームのコトは、ワタシに任せるよ。雪峰も居るし、柴芭も優秀そうよ」
「セルディオスさん……」

「彼らに、世界の舞台で活躍する背番号14番の姿、見せつけてやるね」
 メタボリックな監督は、天才プレーヤーの背中を押した。

 その頃~。
アップを終えたボクたちは、練習場でボール回しを始める。

「なあ、ピンク頭。倉崎さんがウチのメタボ監督と話してるケド、なに話てんだろうな?」
「さあな。それより直ぐに試合だ。集中しろ、クロ」
 黒浪さんと紅華さんとの間で、ダイレクトパスのボールが行き交う。

「そうですね。今は目の前の対戦相手に、集中しましょう」
「どうやらお相手さんも、アップ始めたみたいやしな」
 コンビを組んだ柴芭さんと金刺さん目が、狩里矢の選手たちの様子を捉えた。

「今日の試合、胸を借りるなどと考えていては、対戦してくれる相手に失礼だ」
「そうでありますな、雪嶺士官。全力で行きましょう」
 雪峰さんと杜都さんも、気合を入れる。

 龍丸さんは、野洲田さんと一緒にパスを回してるし、キーパーの海馬さんは受け身の練習をしている。
他のメンバーも、それぞれ相手を見つけてパス練習をしていた。

……よ~するに、ボクだけ練習相手がいない!
人数が奇数だと、ボクが1人になる可能性ってメチャクチャ高いんだよね。

「やあ、キミも練習相手がいないのかい?」
 振り返ると、背は高いけど気の弱そうな人が立っていた。
どことなく、女性っぽくも見える。

「オレは、亜紗梨 義遠。よかったら、一緒に練習しない?」
 ボクは有難い助け舟に、首を大きく縦に振った。

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