ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~外伝・15話

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すれ違う運命

「どうしてボクたちが、討伐されなきゃならない」
 ヘイゼルの瞳が、村長を睨み付ける。

「知れた事。お前たち兄妹の身体に、忌まわしき魔王の血が流れているからよ」
「そんなのは、デタラ……」
 サタナトスの脳裏に、リザードマンを屠った時の妹の姿が浮かぶ。

「なにやら思い当たる節が、あるようじゃの」
「うるさい、ボクたちは人間だ」

「死んだ小僧どもが、最期に言っておったわ。このバッタの群れをけしかけたのは、お前たち兄妹の仕業だとな」
「死んだって……ま、まさか?」

「ガキ共は、モレクス神に生贄として捧げてやったわ」
「マ、マルクたちが、死んだって言うのか」
「キノも、ハンスもな。巨像の中で消炭になっとるじゃろう」

「人の命を、なんだと思っている!」
「我が村だけでも飢饉で、何百もの死体がそこら中に転がっておる。少しばかり死体が増えようと、大差はあるまい?」

「それもそうだね……」
 サタナトスは、マントの下に隠していたナイフを振った。
食べ物を売って得た金を使い、街の武器屋で手に入れていたモノだ。

「……こ……ぞ」
 喉を裂かれ、吹き出す血飛沫。
直ぐに村長と、付き添いの村人一人が死体の数に加算される。

「始めて殺人を犯したケド、まあこんなモノか」
 サタナトスは、何の罪悪感も感じなかった自分を不思議に思った。

「オアシスに向かった剣士が、どれ程の腕かは解らないケド、アズリーサなら簡単にやられたりはしないだろう」
 村長の死体を蹴り飛ばし、金の入った袋を奪う。

「むしろボクの方が、足手まといになる可能性がある。武器と防具が必要だな」
 サタナトスは、市場に戻てそれらを調達した。
移動手段も手に入れたかったが、それらは既に人間の胃袋に収まっていた。

 街の空は、バッタと砂嵐で覆いつくされる。
サタナトスは、軽く防御力のあるミスリル銀製の防具を身にまとって、砂のカーテンへと身を投じた。

「ああ……アズ……リーサ」
 一人生き永らえた少年は、目の前の光景に怯えている。

「この蜃気楼の剣士を、ここまで手こずらせるとはな」
 グレーの長い髪をした男が、小脇に蒼い髪の少女を抱え、自分に向かって近づいてくるからだ。

 少年は、この無骨な剣士と、幼馴染みの少女が戦う様を目撃する。
戦いは凄まじく、背中に6枚の羽根を生やした少女が手にした大鎌と、男の剣が何度も火花を散らした。
死闘は、剣士が空間移動で少女の背後を取り、気を失わせるコトで戦いは終結する。

「小僧、確かケイダンと言ったな。街に戻るぞ」
「え……」
 無精ヒゲを撫でながら、男はケイダンをマントに包み込んだ。

「こ、ここは……」
「驚いたか。ここは、キャス・ギアの街よ」
 少年は、男の剣に目をやる。

「フッ、察しがいいな、ケイダン。お前、見どころがあるかもな」
 男は、剣持ちの少年に剣を投げた。

「はい、師匠(マスター)」
 ズシリと重い剣は、少年を少しだけ前に向かせる。

「とりあえず、領主に報告だ。この娘の処遇は、オレが何とかしてやれるなら、そうしてやる」
 ケイダンは、師匠がお人よしで、交渉事が苦手であるコトを理解した。

「それにしても、やけに街が騒がしいな。普段なら、腹を空かして喋る気力さえ無いヤツらが、どういう風の吹き回しだ?」
 市場で手に入ったばかりだという果実を調達し、半分をケイダンに分け与えて歩く剣士。

「おお、既に戻られていたのですか、ラディオ様」
 衛兵の一人が、ラディオに気付き駆け寄ってくる。

「何があった」
「それが、渓谷の村の村長が殺されました。宿泊している宿屋で、死体となって発見されたのです」

「な、なんだとォ」
 剣士は、依頼主が死んだことに眉をひそめると、領主の館へと向かった。

「依頼主が死んだってのは、本当かい?」
「ああ、本当だよ、ラディオ。今、犯人を追っているところだ」

「やれやれ、なんてこった」
「キミの方は、無事に任務を果たしてくれたって言うのに、申し訳ない」
「無事……ねえ。残念だが帰って来れたのは、オレとそこの坊主だけだぜ」

「な……アレだけの部隊が、全滅したと言うのか?」
「すまねェ。オレが、付いていながら」

「その娘は、それホドの脅威だと?」
 領主の顔には、恐れと憎しみの表情が浮かんでいた。

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