ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・37話

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ケイオス・ブラッド

 薄暗い洞窟を、何層も下へと降った先にある地下牢。
辺りには水の雫が成長させた石筍がそびえ立ち、そこをねぐらにする蝙蝠が煩く飛び回っていた。

「オレにはもう、何の価値も残っていない。さっさと殺せ」
 牢に繋がれた黒髪の少年が、眼を真っ赤にしながら叫ぶ。

「殺しはしないさ、ケイダン。キミには、この剣と1つになって貰うからね」
 金髪の少年は、彼の師匠の剣を目の前に翳(かざ)す。

「……なにを……言っている?」
「まあ、キミが解らなくてもいいさ」
 そう言うとサタナトスは、バクウ・ブラナティスを少年の心臓へと突き立てた。

「グアアアァァ……キ、キサマ!?」
「心配するなよ、キミは死なない」
 サタナトスは、アメジスト色の自らの剣を構えた。

「正確を期して言えば、人間としてのキミは死んでしまうのだがね」
 そしてそれを、かつての友に向かって一閃する。

「『プート・サタナティス』!!」
 剣は、黒髪の少年の身体を切り裂いた。

「ガハッ……ガアアァァ!?」
 束縛していた鎖も断ち切られ、ケイダンは地面に崩れ落ちる。

「さあ……新たなる魔王として、甦るんだ」
 切り裂かれた傷から、紫色の眩い光が発せられる。
もがき苦しむケイダンの身体は、魔族のそれへと変化して行った。

「どうやら、成功したみたいだね」
「グ……うう……」
 魔王と化したケイダンは、立ち上がる。

 相変わらずの長い黒髪ではあったが、肌の色は紫色へと変化し、瞳もピンク色に輝いていた。
腕や脚の外側は鱗で覆われ、頭には角が長く伸びている。

「生まれ変わった気分はどうだい、ケイダン?」
「オレ……は……誰だ……?」
 人間としての記憶を無くし、困惑するケイダン。

「そうだね。魔王の名がケイダンってのも、なんだか迫力に欠けるな」
 サタナトスは、友人の名前を思案する。

「ケイオス(混沌)・ブラッド(血)なんて、どうだろうか?」
「ケイ……オス……」
 旧友に提案された名前を、口にするケイダン。

「オレは……魔王ケイオス・ブラッド」
 そう呟いた瞬間、新たな魔王の身体が禍々しい瘴気に覆われる。

『どうやら、予想以上の出来栄えだな……小僧』
「フフフ、そうだね。これは、面白くなってきたよ」
 脳裏に響く魔王ザババの声に、答えるサタナトス。

「世界を混沌へと導く、闇と幻影の魔王だ」
 ケイオスの背中から、竜を彷彿させる6枚の翼が広がる。

「それがキミの翼……そして、新たなる『剣』かい?」
 金髪の少年の瞳には、強靭な鉤爪の腕に握られた剣が映っていた。

「刻影剣・バクウ・プラナティス!」
 ケイオスは、剣を軽く振り抜く。
本来は地下牢だった空間には、何も存在しない闇が広がっていた。

 サタナトスが、新たなる力を得ていたのと同じ頃。
女王レーマリアから直々に、サタナトス兄妹の過去の調査を依頼されたルーシェリアは、キャス・ギアの街で聞き込みを行っていた。

「残念じゃが妾は、人間の世情に疎いからのう。お主に頼るコトになるわ、カーデリア」
 漆黒の髪の少女は、隣を歩くパッションピンクのクルクル髪の少女に向かって言った。

「シェリーは元は魔王だったものね。仕方ないわよ」
「オイ、なんだよカーデリア。シェリーってのは?」
 2人の前を歩いていた、小柄な赤毛の少女が振り返って問いかける。

「ルーシェリアちゃんだから、シェリーよ。ちょっと長い名前だし、愛称があった方がいいかなって」
「お前の名前だって、そんな変わらんだろうが、カーデリア」
 赤毛の少女は、後ろ向きのまま器用に歩いた。

「アタシだって、女友達からはカーリーって呼ばれてるわよ。知らなかったの、シャロ?」
「お前の愛称なんて、興味ね~し」
「アンタってヤツは……」

「魔族や魔王は、歴史が積み重なって他の魔王と集合したりして、やたらと名前が長いヤツが多いでの。確かに愛称があった方が便利じゃな」
 冥府の魔王にして暗黒の魔王だった少女、ルーシェリア・アルバ・サタナーティアは納得する。

「他にも、ルーシェとか、リアとか色々考えたんだケド」
「シェリーで構わんよ。何となく綺麗な響きじゃ」
「でしょ、アタシも、そう思ったんだ」

「ふう、ヤレヤレ。今は調査の途中だぞ、お前ら」
 1人女子トークに付いていけない赤毛の女の子は、不貞腐れながら言った。

 

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