女神の狩り
「艦長、お覚悟を!」
腰に佩いだ剣を抜き、襲い掛かって来る、ペンテシレイア・シルフィーダ。
「まさか、彼女たちと戦うコトになるとはね」
自慢のクワトロテールで、アマゾネスの剣を弾き、ボクを守ってくれるトゥラン。
「ヴェルダンディは、このコトを予測していたのかしら」
「思えば、ペンテシレイアさんたちを艦橋(ブリッジ)には上げず、艦内の街中のハンバーガーショップで会合を開かせた。ヴェルは、気付いていたんだと思う」
「偵察任務には失敗したが、ここで艦長の首を獲れるなら問題はない」
「簡単に、艦長の首を獲らせると思って?」
小惑星パトロクロスの街の上空で、剣を交え火花を散らせるペンテシレイアとトゥラン。
「なんでアーキテクターと人間が、戦わなければならないんだ、ペンテシレイアさん!」
「人間はアーキテクターを、下僕か道具にしか思っていない。我々が自由を手に入れるには、人間と言う存在を排除せねばならない」
「そんなコトって……キミとは、解かり合えたじゃないか!」
「すっかりわたし達を洗脳した人間が、どの面を下げて言う!」
「例え洗脳であっても、キミにもみんなでハンバーガーを食べた記憶はあるハズだ」
「良い様に、してやられた記憶だけだ」
サファイア色の髪を風に舞わせ、ボクたちを猛攻するペンテシレイア。
左手に構えたラウンド・シールドの向こうから、剣の薙ぎ払いが飛んできた。
「クッ、流石に艦長を庇いながらじゃ、キツイわね。あのコたちは尚更……」
セノンと真央、ヴァルナとハウメアを抱えながら交戦中の、ラサたちを心配するトゥラン。
「人間を抱えながらじゃ、無理ィ」
「1人で3人相手にしなきゃだし」
ラサたちは4体だけで、ペンテシレイアの部下は12人もいる。
「このままじゃ、やられちゃう」
「もう、限界だよォ」
それは目に見えて、明らかだった。
「今は、全力で逃げるコトに専念するんだ。何とか、宇宙港まで逃げ切れれば……」
偉そうに命令するが、結局のところボクはトゥランのお荷物でしかない。
「トゥラン。貴女たちはわたくしの支配(コントロール)さえ受けない、優秀なアーキテクターです。無能で愚かな人間など放り出し、我が同胞となりなさい」
イーピゲネイアは、再びトゥランを勧誘する。
「お褒めにあずかり、光栄だわね。狩りの女神さまに何度も誘われて、悪い気はしないのだケド、答えはノーよ」
「そうですか、貴女とは是非、共に理想を追い求めたかったのですが……残念です」
金髪の少女は、ゆっくりと手を挙げた。
アマゾネスたちを、猟犬のように使って狩りをさせる、アルテミスの異名を持つ少女。
「か、艦長。行く手に敵が……」
「な、なんだってェ!?」
ボクは、真央の言葉に反応した。
「アマゾネスたちが、もう1部隊いる……」
「恐らくは、ヒュッポリュテーとその部下だろうね」
ヴァルナとハウメアが言った通り、新たな13人のアマゾネスが行く手を阻む。
「猟犬に追われる獲物となった気分はいかがです、人間の艦長?」
「ボクたちに、逃げる道は無いってワケか」
狩りの女神が率いる、26人ものアマゾネスに取り囲まれ、逃走を中止する他なかった。
「もっと早く、貴方たちを仕留めるコトも可能だったのですよ」
「だったらさっさと、そうするべきだったわね」
追い詰められたハズのトゥランが、笑みを浮かべる。
「どう言うコトでしょうか」
「切り札を出したつもりでしょうケド、それはこちらも同じってコトよ」
「何を言って……ッ!?」
するとアマゾネスの2部隊に大して、レーザー斉射が行なわれた。
「クッ、なんだ!?」
「我らが、攻撃を受けているだと!」
慌てふためく、アマゾネスたち。
「お、おじいちゃん。この戦闘機って……」
セノンが、周りを旋回する戦闘機を指さしながら言った。
「ああ、ボクの娘たち……ウィッチレイダーたちの『オモチャ』だ」
ボク達の周りには、60機に及ぶ小型戦闘機が元気に飛び回っていた。
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