罠に誘われた獲物
「60機ものマニプュレート・プレイシィンガーたちが、全て堕とされたというのか!?」
街の上空には、白い翼を生やしたアマゾネスだけが存在し、戦闘機や小柄な少女の姿の機体はことごとく、地面へと墜ちて行った。
「流石にこうも一瞬で、無力化してしまうなんて想定外だわ」
ボクを抱えながら街の地面に着地した、トゥランが嘆く。
「あの様なオモチャなど、通用しないと言ったハズだ」
「我らアマゾネスの戦闘力を、舐めないでもらいたい!」
二人のアマゾネス女王が、エメラルド色とサファイア色の髪を靡かせ突進して来た。
「ここはアタシらが食い止める。艦長はセノンを連れて、先に避難してくれ」
真央・ケイトハルト・マッケンジーはそう言うと、振り向きザマに両拳のチューナーで、アマゾネス姉妹の剣を受け止める。
「ククク、また貧弱なオモチャか」
「それで我らが攻撃を、止めたつもりですか?」
ヒュッポリュテーとペンテシレイアは、剣にレーザーの刃を発生させ、そのまま突き切ろうとした。
「真央!?」
「こっのォ、カエサル・ナックラー!!」
咄嗟に手を放し、両拳を打ち鳴らして発生させた放電で、二人の剣を跳ね上げる真央。
「人間にしては、素晴らしい反射神経だな」
「ですが、攻撃は終わってませんよ……」
「ぐあッ!」
支えていたラサごと建物の壁に叩き付けられ、悲鳴を上げる真央。
チューナーで威力は落としたものの、かなりの傷を負っている。
「マズいぞ、早く宇宙港に逃げ込まないと」
「でも宇宙港の入り口なんて、どこにも見当たりませんよ、おじいちゃん!」
「な、なんだって!?」
ボクたちが降り立った場所は、閑静な公園であったが、宇宙港らしき入り口など存在しなかった。
「フフ、悪あがきだな、人間どもよ」
「我ら26人のアマゾネスを相手に、たった数人で何ができる」
「戦争も狩りも、数と兵士の質が勝っている方が勝利するのだ」
他のアマゾネスたちも続々と、ボクたち目掛けて突っ込んで来る。
「させない。アクア・エクスキュート……」
「おりゃあッ、ペレアイホヌア!」
ヴァルナが、ナノ・マシンのチューナーを網目状に展開させ、ハウメアのチューナーが網目の間から火炎弾を射出し、敵の進路を塞ごうとした。
「小癪な……」
「だがそんな弾幕が、何時まで維持出来ると言うのか」
アマゾネスたちは遠距離攻撃に切り替え、ハウメアの火炎弾が切れる時を伺っている。
「トゥラン、キミも参戦しれくれないか。ボクを降ろし自由になったハズだ」
「その必要は無いわ、艦長」
「え……?」
「マケマケがケガしちゃって、大変なんですよ。宇宙港まで行かなきゃだし……」
「だから、必要は無いって言っているの」
「そんな……ま、まさかトゥランさん、向こうに寝返ったんじゃ!?」
「艦長、アクア・エクスキュートが突破される……」
「ペレアイホヌアの弾幕も、もう持たないよ!」
ヴァルナとハウメアが叫んだ。
「火山弾も弾切れがあるようだな、人間よ」
「覚悟するがいい!」
戦闘態勢を構築したアマゾネスが、再び攻撃を開始した……その時。
地面から巨大な閃光が立ち登り、アマゾネスの部隊を捕らえる。
「な……なんだ!?」
「ぐわッ!」
アマゾネスたちは盾で、何とか閃光を無力化したがダメージはあった。
「こ、これは、どう言うコトなんだ、トゥラン!?」
「地面から光が出て来ちゃったけど、なんで?」
「フフ……驚かせてしまったみたいね。この公園の下が、宇宙港なのよ」
クワトロテールのアーキテクターが、微笑む。
「なッ、そうなのか!?」
「ええ、そして閃光の正体は、アフォロ・ヴェーナーのレーザーよ」
「クッ、獲物を狩る側と思っていた我々が……」
「あのアーキテクターに、誘い込まれていたと言うのか?」
地面からの閃光が、アマゾネスたちを狙い続けた。
「ええ、そうよ。今は街への被害を無くす為に、威力を落としているケド、戦艦並みのレーザーをその小さな盾で、無効化(レジスト)できるかしら?」
「わ、我らの反乱は……」
「こんなところで、終わりはしない!」
アマゾネスたちは、トゥランをターゲットに攻撃を仕掛ける。
「愚かな判断ね。冷静さに欠けるわ」
気高き女戦士たちは、次々に白い閃光に包まれ、地面に墜ちて行った。
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