アマゾネスの猛攻
「マニプュレート・プレイシィンガーたちが囮になってくれている間に、港まで逃げるわよ」
援軍として現れた、娘たちの髪と同じ色の少女たち。
ヒュッポリュテとペンテシレイアの姉妹が率いる、アマゾネスの2部隊と交戦を開始する。
「トゥラン、アレは娘たちが操っているのか?」
「いいえ、彼女たちは今、ギリシャ軍の敵と交戦中よ。サブスタンサーを駆って、出撃しているわ」
マニプュレート・プレイシィンガーたちは、機動性とヒットボックスの小ささを活かし、人型と戦闘機への変形を繰り返しながら相手を攪乱した。
「それじゃあ、自動操縦なのか?」
「わたしが操っているわ。これでも並列処理(マルチタスク)は得意なの」
対するアマゾネスの部隊は、手にした剣からレーザーショットを撃って攻撃する。
半月型の盾・ペルタストも、射撃を安定させる役割と防御を同時に担っていた。
「それって、危険じゃねえか?」
「わたし達のチューナーみたく……」
「イーピゲネイアに、ハッキングされちゃわない?」
「恐らく大丈夫よ。その為にアフォロ・ヴェーナーの、電磁波の支配領域まで引き込んだんだから」
アフォロ・ヴェーナーとは、トゥランの駆るキガンティス・サブスタンサーの名だ。
「アフォロ・ヴェーナーには、高度な情報戦能力が備わっているわ。それでも、この小惑星のほぼ全てを支配下に置く、イーピゲネイアには警戒する必要があったの」
MVSクロノ・カイロスより派遣され、今は宇宙港に駐留している。
「マニプュレート・プレイシィンガーたちは、アイツのハッキングを受けないんだな」
「てコトはつまり……」
「アタシたちのチューナーも、使えるんじゃない?」
「あのコたちが突破されたら、迎撃をお願いね。既に半数以上が、やられているから」
トゥランがオペレーター娘たちに、衝撃の事実をさらりと告げた。
後ろに目をやると、ピンクやオレンジ色、ソーダ色の少女や戦闘機たちが、アマゾネス部隊の手によって次々に無力化され、地上に墜ちて行く。
「このままでは、突破されるのは時間の問題か。だけど、身体に感じる重力が強くなって来ている。地上まで、もう少しだ」
小惑星の内側に築かれた街は、間近まで迫っていた。
「見て下さい、おじいちゃん。あちこちで人が襲われてます」
街には、反乱を起こしたアーキテクターに襲われ、逃げ惑う人間の姿がそこら中にあった。
「残念だケドよ、セノン。街の人を、助けてる余裕は無いぜ」
街にいるアーキテクターの多くは、戦闘用ではない。
それでも人間を殺すのに、十分な能力を備えていた。
「そ、そんな。みんな、殺されちゃうんですよ」
「今は一刻も早く、宇宙港に辿り着くコトが大事……」
「そうじゃ無いと、こっちもアマゾネスにやられちゃうから」
真央、ヴァルナ、ハウメアは、状況を冷静に分析し、親友を納得させようとする。
けれども、セノンの表情は晴れなかった。
「そんな顔するな、セノン。どうやら全てのアーキテクターが、反乱に加わったワケじゃ無さそうだ」
「え?」
栗色のクワトロ・テールの少女の瞳に、真下に広がる街の状況が映った。
「ホ、ホントです。人間の前に立って、護ってくれてるアーキテクターもいっぱいいるですゥ」
「まあな。思ったより被害が少なそうなのは、その為か……うわあ!?」
閃光が、真央の鼻先をかすめる。
「逃しはしない、艦長」
「我らが女神の意に反する、お前たちを処分する!」
上を見上げると、ペンテシレイアと、ヒュッポリュテーが剣を構えていた。
「確かに今は、多くのアーキテクターが反乱には加わらず、情勢を見極めている状態だ」
「だが情勢が、我らアーキテクターに有利に傾けば、彼らは同胞となろう」
アーキテクターたちは、人間の革命家や独裁者が言いそうな台詞を吐いた。
前へ | 目次 | 次へ |