ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・6話

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死者への手向け

 村に戻ると夕日が沈みかけ、辺りは暗闇に覆われようとしていた。
その夜、一行は崩れっ去った教会の地下室に宿泊する。

「シャロリュークさん……」
 蒼い髪の少年は、俯いたまま呟く。

「この村……どうなっちゃうんですか?」
「そうだな。子供たちだけ戻ってくるコトも、できねえからな……」
 赤毛の英雄の言葉は、廃村を意味していた。

「せめてサタナトスの手がかりだけでも、見つけ出せればよォ」
「そうね……あのシスター、何が伝えたかったのかしら?」
 クーレマンスも、カーデリアも、やるせなさを隠せないでいる。

「この上に聖堂があって、シスターが祈りを捧げていたのか……」
 石の床に寝転んだ舞人は、穴の開いた天井を見ながら思った。

「結局ボクは……この村の人を誰一人として救えなかった」
 孤児として教会に育ち、幼馴染みのシスターもいる少年。

「とんだ『英雄』だな……」
 彼にとって、小さな村の惨劇は他人事では無かった。

 次の日、谷間の村に朝日が昇る。

「まったく、昨日の悪夢がウソのように、キレイな朝日だぜ」
「でもシャロ。朝日をキレイって思う村人は……」
「もうこの村には、いねえんだな」

 崩れた建物だらけの村。
シャロリュークは、舞人は、名前も……顔さえ知らない大勢の村人の『墓』を建てた。

「誰も埋まっていない墓を作って、何の意味がある?」
「所詮は生き残った人間の、自己満足だろうに」
 人間の行動が解せない、ネリーニャとルビーニャ。

「それは概ね、正しいのじゃろうな……」
 漆黒の髪の少女は墓に、近くに咲いていた花を手向ける。

「のォ、ご主人サマよ。付いて来てはくれぬか?」
「どうしたの、ルーシェリア……」

「地下室に見せたい物があるのじゃ」
「地下室って……今朝までいた場所だろ?」
「それが崩れた壁の先に、部屋が見つかったのじゃ」

「ミーたちがみつけたミル」
「修行で壁を殴ってたら、崩れたでござるレヌ」
 それは、舞人たちが墓を作っている時の出来事らしい。

 あまり気乗りがしない舞人だったが、ルーシェリアに付いて行く。
一行も後に続くと、崩れた壁の先に小さな小部屋が存在した。

「一体、何を見せたいって言うんだ。ボクは疲れて……」
「アレを見るのじゃ。あの『絵』をのォ」

「絵だって……それが一体?」
 舞人は、ルーシェリアの指差す先に掲げられた、一枚の『絵』を見て驚愕する。

「こ、これって……まさかッ!?」
 絵には、金髪で真っ白な肌の少年が描かれていた。
「そうじゃ。この絵の人物は……」

「『サタナトス』じゃないか!!」

 絵の中の少年は、右側に白い鳥の翼を生やし、左には黒い蝙蝠の羽を生やし他姿で描かれている。

「描かれてんのは、紛れも無くサタナトス本人だぜ」
「でもよォ、シャロリューク。どうしてサタナトスの絵が……」
「教会なんかに、あるのかしら?」

「それに、この絵……誰が描いたんでしょうか?」

「推測じゃがな。あのシスターが、描いたモノでは無いかのォ」
「そんじゃこの部屋は、シスターのアトリエってとこか」
 辺りを見渡すと、絵の具やキャンバスの破片が幾つも転がっていた。

「部屋は比較的良好だわ」
「探せば他に、手がかりが見つかるかもな」
 一行は部屋を、くまなく捜索する。

「こっちの戸棚に、絵が仕舞ってあるぜ」
「ホントだ、何枚もあるわ」

「どの絵にも、サタナトスと一緒に、『蒼い髪の少女』が描かれてますね?」
「ご主人サマよ。これは何か、あるのやも知れぬぞ?」

「サタナトスの過去……か」
「シスターが言ってた、『忌まわしき過去』という言葉も気になるわ」
「この『蒼い髪の少女』と、何か関係があるのかよ?」

「調べてみる価値は、ありそうじゃな。ご主人サマよ?」
「ああ、ルーシェリア」
 舞人はルーシェリアと共に、村に留まってサタナトスの過去を調べ始めた。

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