ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第12章・11話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

力と恐怖の魔王だった少女たち

 サタナトスの野望の犠牲となり、深く傷付いた海底都市・カル・タギア。

「ハアハアッ……パレアナ……ああ、パレアナ……」
 小さく崩れた建物の中の一室で、ベッドに横たわりうめき声を上げる、蒼い髪の少年。

 彼は、助けるコトが叶わなかった幼馴染みの少女の名を、必死に呼び続けていた。

「ヤレヤレじゃの。ご主人サマにとってはそれホドまでに、パレアナのコトが大事だったのじゃな」
 少年の頭に乗せたタオルを取り換えながら、漆黒の髪の少女は苦笑いを見せる。

「妾の目から見てもパレアナは、良き娘じゃからな。普段はケンカばかりしておったクセに、やっとその大切さに気付きおったか!」
 ルーシェリアは、まだ意識の戻らない舞人に向かって、愚痴をこぼした。

「ねえねえ、シェリー。ダーリン、まだ目覚めない?」
 半透明な鎧を纏った、黄緑色のショートヘアの少女が入って来る。
彼女は名をスプラ・トゥリーと言い、ルーシェリアをシェリーの愛称で呼ぶようになっていた。

「なんじゃ、スプラか。毎日そう何度も来られても、状況が変わるワケが無かろう」
「え~、これでもボクは、7海将軍(シーホース)の1人なんだよ。忙しい中、来てるんだからさあ」

「だったらさっさと、持ち場に戻るが良い。バルガ王が留守の今、この国の防衛の要は、お主とガラ・ティアの2人なのじゃろう?」

「そのガラ・ティアもさあ。ケッコンしてから、旦那のクーレマンスさんとベッタリなんだよねェ。あんなの毎日見せつけられると、部下の兵士たちの指揮もゼンゼン上がらないんだよ」
 部屋にあった瓶から、水をコップに注ぐスプラ。

「そこを上げるのが、お主の任務じゃろうて」
「だって兵士をいくら鍛えたところで、サタナトスや大魔王になった海皇さまたちと、戦えると思う?」
「それは思わんがの。じゃが他に、戦力を補充する有効な手立てもあるまいに……」

「シェリーって、元は名のある大魔王なんだろ。魔王に知り合いとか、居ないの?」
 ストローで水をすすりながら、テーブルに腰かけ足をジタバタするイカの少女。

「フムウ。魔王の知り合いはおっても、今の姿の妾を見て話しを聞くとも思えぬ。ご主人さまが目覚めて、ジェネティキャリパーを使えるのであれば別じゃがな」

「そっかあ。やっぱ、ダメか」
 大きく伸びをして、テーブルに寝転がるスプラ。

「ま、すでにご主人サマの剣によって、少女の姿とされてしまった者ならおるぞ」
 見かねたルーシェリアは、助け船を出す。
「え、ホント!?」

「数日前に、手紙で連絡を入れて置いたのじゃ。今日の便で、やって来るやも知れぬ」
「キミと同じ、元魔王の女のコが?」
「正確には……女のコたち、じゃがの」

「スゴイじゃないか。さっそく港に、行ってみよう!」
「まて、ご主人サマの看病はどうするのじゃ」

「少しくらいなら、大丈夫だよ」
 スプラはルーシェリアの手を取り、強引に外へと連れ出した。

 港に到着すると、カル・タギアの街をスッポリと覆う泡の球体の一部が割れ、天井から船が降下して来るのが、2人の視界に入る。

「リー・セシルとリー・フレアも、手慣れたモノじゃの」
「双子司祭サマには、いくら感謝しても物足りないよ。海皇サマも、女王サマもおられないカル・タギアの泡のドームを、必死に支えてくれているからね」

 2人が話しているウチに、蒼い船体をした船が海底都市の港にある、桟橋に接弦した。

「オオ、スプラにシェリーだ!」
「港に出迎えとは、珍しいな」
「残念だが王さまは、まだ用があって帰れないぞ」

 ヤホッカ、ミオッカ、イナッカの3人の獣人娘が、桟橋に掛けられたタラップを駆け降りて来る。

「それは、解っておるのじゃ」
「それよりさ。元魔王の女のコたちって、この船に乗ってない?」

「ああ、あの娘たちか」
「それなら船倉で、倒れているぞ」
「案内してやるから、付いて来い」

 ルーシェリアとスプラは、タラップを昇って船に入ると、船倉へと案内された。

「ウ、ウウ、ル~サマが、グルグル、ぐるじいミル~!」
「頭がジンジン、ニンジンミル~!」

「グログロ、グロッキーミル~!」
「ゲロゲロ、もうお家にカエルミル!」

 バイオレット色のクルッとした巻き髪に褐色の肌、真珠色の瞳をした4人の少女が、船倉でグッタリしながらも、しょ~もないギャグを言ってる。

「ふ、船酔いとは、不覚でござるレヌ~!」
「し、しばし待たれよレヌ~!」

「な、情けない姿を、お見せするレヌ~!」
「め、面目しだいもござらぬレヌ~!」

 マスカット色のポニーテールに白い肌、ワインレッドの瞳をした4人の少女は、不調な身体をなんとか起こそうとしていた。

「ね、ねえ。キミが言ってた、元魔王の女のコたちって、まさかッ!?」
「その、まさかじゃ。これでもかつては、力と恐怖の魔王と言われておったんじゃがの」
 漆黒の髪の少女は、深いため息を吐く。

 前へ   目次   次へ