ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・11話

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シスターの日記

 ~皇女と栗毛のシスター見習いが、ニャ・ヤーゴの教会で窮地に陥るより、少しだけ時間は遡る~

 谷間の村に残った舞人たちは、新たな手掛かりを見つけていた。

「死んだシスターが描き貯めたであろう、日記じゃ。瓦礫の中に埋もれておったわ」
「ねえねえ、なにが書いてあったの?」
 舞人たちと合流を果たしたカーデリアが、催促するように聞く。

「金髪の少年……幼き日のサタナトスが描かれた絵が、あったじゃろう」
「地下の隠し部屋から、たくさん見つかったヤツね」
「その絵、やはり描いたのは、地下祭壇で亡くなったシスターでした」

「多くの絵に、サタナトスと共に描かれていた、蒼い髪の少女……」
「日記によれば、少女もこの村の住人だったみたいです」

「名は、『アズリーサ』。サタナトスの、双子の妹じゃ」
 ルーシェリアは、日記のページをめくる。

「兄妹なのに、髪の色が違うのね」
「別に不思議でもあるまい」
「目や肌の色まで違う兄弟も、普通にいますからね」

「二人の母は、天使の血を引く巫女でな。痩せた土地のこの村で、人々を魔法で癒していたそうじゃ。それがある日、王より呼び出しを受けての」
「り、理由は……?」

「『魔王を討伐せよ』との命令でな。ヒーラーとして、魔王を倒すべく結成されたパーティーに、参加するように要請があったのじゃ」

「目的の魔王ってのは、心当たりはあるの、ルーシェリア?」
「まあ、あるにはあるの。悪の権現、悪そのものと言った方が、正しいか」

「その話、聞いたコトあるわ。覇王パーティーが結成される以前にあった、最強パーティーの噂。確か蜃気楼の剣士と謳われた、ムハー・アブデル・ラディオ様も参加されてたハズ」

「じゃが、魔王討伐は失敗に終わったのじゃ……」
「そ、それじゃあ、パーティーの人たちはどうなったの?」
「ラディオと呼ばれた剣士以外は全滅し、剣士も瀕死の重症を負ったらしい」

「そんな……」
「二人の母親である巫女も、死んだかに思われた……じゃが」
「い、生きていたのね!?」

「日記によれば、魔王討伐から二年が経過したある日、ひょっこりとこの村に戻って来たそうじゃ」
「そ、そうなの、良かったわね」

「それが、そうとも言えなくての」
「ど、どうしてよ?」
 パッションピンクの勝気な少女は、元魔王の少女を問い詰める。

「巫女は……身籠っていたのじゃ」
「そ、そんな……」
「その後、生まれたのがサタナトスと、アズリーサでの」

「そ、それじゃ、二人の父親は……」
「巫女は、二人を生んで直ぐに、死んだそうじゃ。父親が誰なのか、はっきりとは解からぬが、村人たちは二人を忌み嫌い、酷い仕打ちを繰り返したらしい」

「たぶんサタナトスは、この村の人たちを本気で嫌いだったんだと思う」
 舞人は空を見上げた。
かつて、ニャ・ヤーゴの教会で、孤児として暮していた日々を思い出しながら。


 ~時と場所は移り、ニャ・ヤーゴの丘の上に建つ、みすぼらしい教会~

「ボクは、天使と魔王、そして人間の血を引いているんだ」
 王都の聖職者たちを贄とし生まれた巨大なタマゴ。
膨張し切ったそれは弾け、中から巨大な魔獣が姿を現した。

「ア、アレは、巨大な狼!?」
 栗毛の少女が、悲鳴のような声を上げる。

「『マルショ・シアーズ・フェリヌルス』……巨大な翼と、大蛇の尾を持つ魔王さ」
 生まれたばかりの魔王は、聖堂の長椅子を踏み潰し、翼によって巻き起こった突風でステンドグラスも砕け散る。

「ゴ、ゴメンなさい、パレアナ。貴女まで、巻き込んでしまって……」
 吹き荒れる暴風の中で飛び散ったガラス片から、パレアナを庇うように抱きかかえるレーマリア。

「こ、皇女さま……」
 シスター見習いの少女も、自分たちは助からないだろうと思った。

 その時、聖堂の玄関ドアが開かれ、数名の武装した少女たちが突入してくる。
彼女たちは皆、銀色の鎧に蒼いマントを身に着けていた。

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