ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第03章・05話

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ハンバーガーショップ

 ボクの目には、セミも夕日も、目の前にある見慣れたハンバーガーショップの看板すら、本物にしか見えなかった。

「ハンバーガーの、この安っぽい肉の感じも本物にしか思えない……」
 それは千年前に味わった味覚と、完全に一致する。

「なに独り言、言ってんだよ? それよりおとといの試合、惜しかったんだよな。アタシのシュートがバーを叩いてなけりゃあ……」
 六人掛けの席で、自らの武勇伝を語る真央は、サッカー部に入っている記憶を植え付けられていた。

「ヴァルナは、こないだの選考レース、どうだったんだ?」
「バッチシ……水の中でわたしに勝てる者など居ない」
 水色のセミロングの髪の少女は、どうやら水泳部のようだ。

「わたしは妹の面倒見なきゃだから、あんまラクロス部にも顔出せなくてさ」
「ナマカちゃんと、ヒイアカちゃんですよね? 二人とも、ハウメアにソックリなのですゥ」
 ハウメアに本当に妹が居るのかは、解らなかった。

「なあ、セノンは何部なんだ?」ボクはあえて、問題になるような質問をする。
「もう、新体操部ですよ。なに寝ぼけてるんですか、宇宙斗くん!」予定通り怒るセノン。

「そーそ、リボンを身体に巻き付けたり……」「頭でクラブをキャッチするのが得意……」
「フープに乗っかって、股を抑えて悶絶してたりもしたよね?」
 三人の女子高生のスマホには、レオタード姿のセノンの、その場面が映し出される。

「ふぎゃああぁぁぁーーッ!!? な、なに、宇宙斗くんに見せてるんですかぁ!!?」
 顔を真っ赤に染めながら、慌ててボクの目を塞ぐセノン。
「宇宙斗くんも、今みたことは忘れてください。いいですね」「あ……ああ……」

 ボクが強制的に納得させられていると、自動ドアが開いて見覚えのある顔が入って来た。
「プ、プリズナー!?」入って来た彼は短ラン姿で、昔のヤンキーのような格好をしている。

「そ……それに、一緒に居るのって……もしかして?」
 彼と共にハンバーガーを注文しているのは、バイオレットのクワトロヘアの女子高生だった。
彼女の足元には、ラズベリー色の髪の小学生が四人、赤いランドセルを背負いながら走り回っている。

「あの綺麗な女子高生って、トゥランなのか!? 走り回っているのは、ラサたち?」
 トゥランは、プリズナーの機構人形(アーキテクター)であり、女性型の美しい顔はしているものの、その容姿はアンドロイドのハズだった。

「オイ、ちょっとツラ貸せ!!」
 プリズナーがボクたちの席にやって来て、低い声で言った。
「そ、宇宙斗くんが、不良に絡まれてますゥ」「心配しないで、セノン。直ぐ戻るから」


 ボクはプリズナーの後に付いて行き、クワトロテールの女子高生の隣の席に着く。
「あの……トゥランさんだよね?」「はい、そのようです」彼女は、美しく笑った。
「同じクワトロテールでも、セノンより黒乃に似てるな……」ボクはポツリと呟く。

「まったく……ワケが解らんぜ。目覚めてみりゃあ、オレはこんな格好だしよォ。コイツらにいたっては、人間の姿になってやがる!」
 オラつく感じは、ヤンキーにしか見えない。

「わたしは気に入ってますケドね。どうです? 魅力的に感じませんか?」
「べ、べべ……別に感じるかよ、アホ!!?」動揺が隠せないプリズナー。
「わーい、わーい」「人間になれたぁ!」はしゃぐ女子小学生。

 彼女たちは、トゥランの四本の髪の先が分離した、小型アークテクターのラサたちだった。
「ウッセーぞ、お前ら!! 走り回るな! スカート、バサバサすんな、パンツ見えんだろ!!」
「うえェ~ん!」「プリズナーさまに怒られたぁ!」

「ほら、おいで」ラサたちは、手を広げるトゥランの元へと駆け寄る。
「ラサたちをイジメるなんて、悪い人ですね!」「ウ、ウッセー!!」
「あ……あの、それより……?」「わ、わーってるよ!」ボクはプリズナーに怒鳴られた。

「気になってるコトがあるんだケド、プリズナーたちは今までの記憶があるのか?」
「あ? 当たり前だろ。何を言って……って、まさかアイツらはッ!?」
「ああ……セノンたちは全員、記憶を書き換えられている」

「なんだと?」「それは本当ですか?」
「セノン、真央、ヴァルナ、ハウメア……それにクーリアたちも、記憶を入れ替えられていた。今の彼女たちは、自分がこの世界の普通の女子高生だと思って、生活しているんだ!?」

「マジかよ……『時の魔女』は一体、何を考えてやがるんだ!」
「コミュニケーション・リングに間違った情報を流せば、未来は簡単に支配できる……」
 ボクは学校で、中年教師が言った言葉をプリズナーに伝えた。

「そりゃ、そうかも知れんが……」腕を組んで考えるプリズナー。
「コミュニケーション・リングの情報は、二十一世紀に開発された『ブロックチェーン』の技術によって、互いの情報を担保し合ってます。本来であれば、簡単に書き換えられるハズは無いのですが……」

「ネットワークから切り離された、この宇宙船の中では、それも可能……と?」
「はい……」バイオレットのクワトロテールの女子高生は、小さく頷いた。