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一千年間引き篭もり男・第02章・07話

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採掘プラント

「凄いですゥ! ホントに元の場所に戻って来れちゃいました~!」

 ボクはセノンを抱えたまま、天井に開いた大きな穴を潜り抜けると、『下から見たときは天井だった床』へと着地する。

「ここがキミの言ってた、『爆発事故のあった採掘プラント』なのか?」
「そうですよ。わたし、今潜り抜けて来た穴から落っこちたんです」
 けれどもそこは、平穏とは真逆の場所だった。

 辺りは、巨大採掘プラントの設備や建物が崩壊して燃え盛り、破壊された掘削用の重機や、資源を運ぶのが目的であろう巨大な宇宙船が、炎の中に散乱している。
岩さえ降って来なければ、カプセルのあった穴の底の方が、まだ安全に思えた。

「あ……あの」「ん、どうしたんだい? どこか、ケガでも?」
「い、いえ~。そうじゃなくて……ですね」
 セノンは何故か、愛らしい白い頬を真っ赤に染めている。

「わ、わたし……男の人に『お姫様抱っこ』されたのって……初めてでして」
 ボクはセノンをまだ、両腕で抱え続けていることに、ようやく気が付く。
「ゴ、ゴメン! 重力が小さいから、抱えてる感じがしなくてさ」ボクは彼女を地面に降ろした。

「い……言っておきますケド、重力が普通でもわたし、そんなに重たくありませんからね!」
「わ、わかってるよ」どうやらセノンも『女性』らしい。
 ボクは、改めて辺りを確認した。

「……予想以上に酷い状況だなあ。この採掘プラントで、人は働いてたの?」
「いえ。ここは全部無人で、作業ロボが勝手に採掘や運搬を進めてるんですよ」
 だが、セノンの言う『ロボット』は、燃え盛る瓦礫の中には見当たらなかった。

「一応言っときますケド、ロボットと言っても、人型じゃ無いですからね」
「そ、そっか。そこのショベルや、巨大な運搬船なんかが、ロボットなんだ」
「ハイです」セノンは、大きくうなずいた。

「キミは、隣の軌道を周るハルモニアから、社会見学でフォボスを訪れたんだよね?」
「そうですよ?」「ってコトは、当然キミ一人……じゃないよね?」
「みんなは、全員避難したんだと思います。わたし、ノロマだから……」

「避難って、このプラントの上にも、やっぱ街とかあるんだ?」
「昔栄えた、鉱石の街ですケドね。三百年くらい前までは、人で溢れかえっていたと聞きます」
「その頃はまだ、『完全自動化』はされてなかったんだ?」

「地球では、とっくにされてたんですケド、火星圏ではまだ途中でしたね。仕事にやりがいを見出した人が、大勢集まっていたんです」
 ボクの脳裏に、黒乃と永い眠りに付いた山奥の廃坑が浮かぶ。

「随分と酷くやられてるなあ? あちこちに岩やら機材やらが飛び散ってるし、あそこなんて壁から岩が大量に抜け落ちて、巨大な空洞になってるよ」
「ホントですね。たぶん、さっきの爆発で落っこちてきた岩は、あそこから抜け落ちたんですよォ」

「つまり、ここもまだ『フォボスの地面の下』なんだ。安心してる場合じゃ無いってことか?」
「そう……なりますね」不安になったのかセノンは、ボクの右腕に抱き付く。
 すると、ボクの耳に微かに人の声が、聞こえた気がした。

「今、何か聞こえなかった?」「わたしには、何も……」
 採掘プラントは、まだ小規模な爆発を起こしている。
炎が生み出す煙は、重力の少ないフォボスでは辺りに立ち込める。

「いや……聞こえる。こっちだ!!」ボクはセノンを連れて、音の方向へと移動した。
「お、おじいちゃん。あれって、避難小屋じゃないですか!」セノンが指さす。
「声は、あそこから……まだ中に、人が取り残されているのか?」

 けれども避難小屋は、巨大な岩石によって、今にも押し潰されそうになっていた。
「カ……カプセルと違って強度があるからか、今は持ち堪えてはいるが……」
「いつペチャンコになっても、おかしくないですよ、おじいちゃん!?」

 カプセルの中で氷漬けになったまま、巨岩に押しつぶされた、時澤 黒乃の事が頭に過る。
「き……聞こえます! 女のコの声です。わたしにも、聞こえちゃいましたぁ!?」
 世音が、悲鳴の様に叫んだ。

 避難小屋に近づくと、それはかなりの年代物だという事が確認できた。
「人が、まだ働いていた頃の、残骸か。でも、それでまだ、人の命が救われているんだ」
すると、中から声が、ハッキリと聞こえる。

「だ、誰かいるのォ!? た、助けて!!」「ア、熱いィィ!」
「イ、イヤァ……アタシまだ、死にたくないィィ!!?」
 声は全部が、少女の声だった。

「ダ、ダメだ……ビクともしない!!」
 金属で出来た避難小屋は、爆発で起きた炎に包まれ、金属製の扉はねじ曲がって開きそうも無かった。

 

次回・避難小屋

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