ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第5章・14話

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女子力!

 豪華な料理が並ぶテーブルには、リーセシルとリーフレアの双子姉妹も、既に席に付いていた。

「うわッ、このスープすっごく美味しいよ! これ、舞人くんが作ったの?」
「このチキンの照り焼きも最高ですよ~姉さま。舞人さん、凄いです!」
 双子の姉妹は、舞人が作った料理に最大限の賛美の言葉を送った。

「明らかに、姉ちゃんたちのより美味えぜ! 腕を上げたなぁ、兄ちゃん!」
「このお肉、柔らかくて美味しい!」「舞人兄ちゃんの料理、最高~♪」
「最近、レベルの低いモノばっか喰ってたから、舌がおかしくなってたんだな~?」

「……なんだろうねぇ……この虚しさは?」「舞人さん……女子力、高過ぎですよ」
「昔っからコイツ、料理は上手かったんですケド……」
 幼い弟や妹たちの辛らつな言葉に、双子姉妹と栗毛の幼馴染みの心は、大いに傷付けられた。

「どうです? 気に入ってもらえましたか?」
 精一杯の料理で持て成しをしてニコニコ微笑む少年に、ルーシェリアがチクリと言う。
「ヤレヤレ……じゃからご主人サマは、間抜け(=スチューピット)などと呼ばれるのじゃよ」

「な……なんでぇ!?」沈み切った双子姉妹と幼馴染みに、疑問だらけの舞人。
「これは美味なるぞ……」「イケる。もぐもぐ……」
 それをしり目に『白い髪にオレンジ色の瞳』をした双子は、料理を堪能する。

「うんまぁ~いモン♪」「こっちのスープも、おいしいモン」「美食なんだモン!」
 まだ名前の決まっていない八つ子も、黙々と料理を食べていた。

「……そう言えば、コイツ等にまだ名前付けてなかったな。何がいっかな~?」
「そうだモン!」「早く付けるモン!」散々待たされた八つ子は、雑に催促する。
「ちょっと、舞人! 仮にも人様の名前を決めるんだから、ちゃんと考えて慎重に決めなさいよ!」

「まあ、そんなのテキトーで良いモン」「チャッチャとするモン!」
「ええ!!? そんなダメよ!」「本人たちがいいって言ってるんだから、いいモン!」
 意外とドライな反応をする八つ子に、栗毛の幼馴染みは呆れかえる。

 食事が終わると、テーブルの上の食器はパレアナや幼い弟や妹たちによって、洗い場に持ち去られた。
リーセシルとリーフレアも、栗色の髪のシスター見習いを手伝いに行く。
残った舞人は、八つ子のうち一人を丸椅子に座らせた。

「えっと……、元の名前が富の魔王『マモン・アマイモン・マンモーン』だからぁ……」
 見分け易くするため髪型を変えようと、舞人はハサミを片手に少女を布で覆った。
「レモン色のボサボサ髪の四人は、多少ボーイッシュな方が似合うな」

 舞人は少女の髪を器用に二段に分けて、『レイヤー・ショート』の髪型にカットする。
「お前は今日から、『アイーナ・アマイモン・マンモーン』な」
「良し……次!」 少年はテキパキと仕事をこなし、カットされたレモン色の髪が床に落ちる。

「お前は、『アキーナ・アマイモン・マンモーン』でいいか?」「良いモン♪」
 すると今度は、少女の髪型を『カジュアル・ショート』に切り揃える。
「お前らは『アミーナ・アマイモン・マンモーン』と、『アリーナ・アマイモン・マンモーン』な」
 アミーナの髪を『ヘルシー・ショート』に、アリーナを『ショート・ボブ』にカットする。

「これで良しっと。みんなショートだケド、少しずつ髪質も違うから、個性に合わせて切ってみたよ。どうかな?」「いい感じだモン♪」「アリガトだモ~ン♪」「お洒落な気がするモ~ン♪」

 ボサボサ髪だった四人の変容を見て、サーモンピンク色の長い乱れ髪の四人が怒り出す。
「アイーナたちだけ、ずっこいモン」「こっちも、早くやるモン!」
「そうだなあ。お前らは天然パーマだし、ミディアムヘアで行ってみるか?」

「お前は、『マイーナ・アマイモン・マンモーン』な」
 舞人は、少女の天然パーマの髪を、小さな棒に巻きつける。
「『レイヤーミディアム』だぞ。凝ってるだろ?」「アリガトモン」少女は直ぐに、入れ替わる。

 舞人は、『マキーナ・アマイモン・マンモーン』は、『外はねミディアム』に、『マ三ーナ・アマイモン・マンモーン』を『ストレートミディアム』に、『マリーナ・アマイモン・マンモーン』を、『ゆるフワミディアム』に、パーマをかけて整えた。

「アリガトモン」「お疲れ~モン」「なんか反応薄いな。髪型に興味無いか?」
「どうかモン?」「あるような、無いようなモン?」「少し前まで鳥の頭だったから、仕方ないか?」
 すると、洗い物を終えたパレアナたちが、入って来た。

「な、なにコレ……メチャクチャお洒落だし、可愛いよ!!」
「舞人さん……まるでプロの美容師みたいです!!」
「ア、アンタ、そんな高度な技術(テクニック)をどこで覚えたのよ!?」

 双子司祭と幼馴染みに詰め寄られ、少年はあまりの反応の違いに驚く。
「……え……えっとホラ。ボク、殆どお金を持たずにココを出ただろ? だから他の街で、評判の美容室でバイトしたんだよ。すぐにクビになっちゃったけど……。その前は三ツ星のレストランで働いたんだケド、そこもすぐにクビにされてさ。やっぱ、世の中って厳しいよね~?」

 詰め寄った少女たちは、少年の答えに唖然とする。
「……それ、プライドを傷付けられたから……」「クビにされたんだと思います……」
「舞人……アンタってヤツは、器用なんだか、不器用なんだか解んないよ!!」

「心底『間抜け』なんじゃよ……ご主人サマは」
 ルーシェリアの答えが、一番的を射ていた。

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