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一千年間引き篭もり男・第02章・08話

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避難小屋

「どうしましょう、おじいちゃん。このままじゃ避難小屋の中の人たち……」
 セノンはそれ以上、現状を言葉にする勇気は持っていなかった。

「炎が迫っている避難小屋の中に、キミの学校の生徒がいるのか!?」
 ボクが避難小屋に向かおうとすると、セノンがボクの頭に宇宙服のヘルメットを被せる。
「これ、被っていてください。一酸化炭素中毒で、死んじゃいますよ!!」

 辺りには燃える重機ロボットと共に、かつての作業員が使ったであろう作業用の宇宙服が、あちこち散乱していた。
恐らくは、目の前の半壊した避難小屋にあった装備であり、セノンはそれをボクに被せたのだ。

「ア、アリガト、セノン。一酸化炭素の煙を吸ってしまったら、肺の中の酸素が急激に奪われて、身体が自由に動かせなくなるからな。危ないトコだった」
 ボクは宇宙服のヘルメットを、始めて内側から見た。

「中のコたちって、これと同じモノを被ってるの?」
「わたしと同じ、学生用の宇宙服です。酸素も一時間しか持ちませんし、耐熱強度も高くないです」
 すると避難小屋の中から、気品のある声が聞こえた。

「わたしは、『クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ』です! 中に閉じ込められてしまい、出られません。どなたか、いらっしゃるのでしょう? 何とかドアを開けて下さい!!」
 それまでのパニックに陥った声とは違い、気高さのある声だった。

「あッ! 『クヴァヴァさま』です! カルデシア財団って大財閥の、ご令嬢なんですよ!」
「変った名前だな。でも、どんなに高貴な人かは知らないケド、炎を相手じゃ無意味だよ」
 ボクは避難小屋に駆け寄り、状況を出来る限り把握しようと務めた。

「マズイな……入口が完全に塞がれている! それに……」
 小屋を半分押し潰している巨岩は、真っ赤に燃え盛る。
炎が勢いを増して、小屋の方へと延焼しようとしていた。

「待っていて! 今助けるから!」ボクは、何の根拠も持たない希望を、口にする。
(……どうする……この巨岩を退けないと。でも、そんなコトが可能なのか?)

 巨岩を前に希望を失いかけていると、中から少女たちの混乱した声が聞こえて来た。
「中には怪我人もいるのです。どうか……どうか急いで下さい!」
「クーヴァルヴァリア……キミ以外にも人が居るのか?」「はい……全員で十五人居ます!」

「そ……そんなにッ!?」予想以上の数字だった。
「わ、わたしだけドジだから、穴から落っこちたと思ってたのに」
「その声……セノンか? アタシだ……真央だ!」避難小屋から、別の少女の声がした。

「マケマケ……? マケマケまで、逃げ遅れたんですかぁ!?」
 セノンのネーミングセンスの酷さは、この際スルーするコトにする。
「ああ……ゴンドラに乗り込もうとした瞬間、巨石が落ちてきやがった」

 辺りを確認すると、採掘場の四隅にゴンドラ用のレールが上に向って設置されてあった。
その内の三台は、避難に使ったのか空でゴンドラは無い。
残る一台が、マケマケの話の通り、巨石に押し潰されている。

「岩はヴァルナとハウメアのお陰で、いち早く発見出来て、間一髪避けられたんだ。でも、そん時に二人がケガをして……酷い大ケガなんだ。早く治療しないと……このままじゃ二人は!」
 セノンに『マケマケ』という愛称を付けられた少女・真央は、声に悲壮感を込めて訴えた。

「ど、どど……どうしようッ!? このままじゃ、ヴァルナちゃんとハウメアちゃんが!」
 セノンは、避難小屋の中に閉じ込められた、知り合いの多さにパニックになる。

「慌てないで。これ以上、避難小屋に混乱が広がるのはマズイ。炎が迫ってるのも、伝えちゃダメだ」
「は、はいィ!」頼りない感じのセノン。
 しかし、ボクの懸念は現実となって表面化する。

「なあ、クーヴァルヴァリア……何とかならないのかよ!? ここは、アンタの財団の採掘プラントなんだろ? 見学の時に随分と自慢してたじゃないか?」
 『マケマケ』が、棘のある言葉で『クヴァヴァ様』を糾弾した。

「そんなコトを言われましても……ここは百年も前に採掘を終えたプラントですのよ。わたしに、どうこう出来るハズが無いでしょう!」
 クーヴァルヴァリアの反論に続き、更に別の少女達の声が聞こえる。

「お姉さまの言う通りです!」「お姉さまの悪口は許しません!」「この凶暴女!」
 一番最初に聞こえた、パニックになっていた少女たちの声だった。
「彼女たちは……?」「……クヴヴァさまの、取り巻きの女の子たちです」

 ボクの質問に、セノンは俯いて答えた。
「……普段はとっても、可愛くて良い子たちなんですよ。十一人いて、みんな中学生なんです」
 セノンは、ボクの手をそっと握ってきた。

「なんだって!? こっちは、友だちが死にかけてんだぞ!」
「それは、みんな同じですよ!」「こっから出られなかったら、わたしたち全員……!」
 真央(マケマケ)の言葉に、クヴァヴァさまの取り巻きの少女たちはやり返す。

「……お姉さま……怖い……怖いです!」「わたし……まだ死にたくないよォ!」
「お願いします! 何でも言うこと聞くから、ここから出してェ~!」
 その言葉の一つ一つに、恐怖と混乱が満ちていた。

「貴女たち、取り乱してはなりません! 気をしっかりお持ちなさい!」
「だ……だってェ~!」「ええ~ん! 怖いよォ!」
 主であるクーヴァルヴァリアの言葉でも、混乱は収まらない。

「ちきしょう、アタシの力でもビクともしやがらない!! ……せめて『チューナー』があれば……」
 中から真央の声が聞こえ、同時に避難小屋の壁を何度も殴り付ける音が響いた。
「お……おじいちゃん……! 何とか、ならないですか!?」セノンがボクを見つめる。

 その時、セノンの茶色い瞳が一瞬だけ、『紅く』染まった気がした。
「黒……乃?」それは『時澤 黒乃』の瞳の特徴と重なっていた。

「お願いします! みんなを……助けて!」セノンの叫びに、ボクの中の何かが反応する。

「……ただの引き籠りに対して、余りに難題じゃないか……黒乃」
 ボクは胸に手をあて、三つの髪飾りの感触を確かめた。

 

次回・あるモノ

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