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萌え茶道部の文貴くん。第四章・第ニ話

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結論有りきの会議

 渡辺の問いかけに、愛澤 柚葉の口から堰を切ったように言葉が溢れ出す。

「終らせたくない! ホントはずっと、あの子たちと部活を続けたい! でも、あたしといると、あの子たちまで周りから変な目で……見られちゃう!!!」
 彼女の言葉から、部活内で色んな出来事があったのだと推察する。

 愛澤 柚葉の手から離れていた『有田焼の茶碗』を、渡辺は手に取った。
「……この茶碗、『織部吹』って表現方法で作られてるんだ。コイツの場合、白地にカラフルな顔料を飛ばした感じが、奇抜な物好きな『織部』が好みそうだから……かな?」
「織部……? もしかして『古田 織部』さんのことッスか?」

「そうだよ。絹絵ちゃんってやっぱ、歴史に詳しいんだ?」
「ねえ、何の話?」一人、蚊帳の外の愛澤 柚葉。
「ゴメン、ゴメン」渡辺は、気を取り直して説明を続けた。

「古田織部は、戦国時代を生きた武将で、大名にまで登り詰めた人物なんだ。茶人としても有名で、あの千利休の高弟の一人でもあるんだよ。でも、利休と織部は、茶の湯の好みが『全くの逆』と言って、いいくらい正反対なんだ」

「それでよく、弟子なんてやって行けたね?」柚葉は、率直に答えた。
「五百年も前の人だから、会ったこと無いしハッキリとは言えないけどね。……茶道の好みは違っても、根本的な部分が同じだったんだと思うんだ」「……根本的な部分?」

「うん。茶道が好きってところ」「……茶道が……好き?」
「結局のところ、趣味ってそんなモノだと思うんだ。どんなに名声があっても、全ては単純なところに落ち着くんじゃないかな?」渡辺はそう思っていた。

「多分、未知との遭遇部に入ったその子たちも、愛澤さんと同じように、宇宙人や星や、不思議な現象が大好きなんじゃないかな?」「あ……」
 柚葉はしばらく下を向いて、小さく震えていたが急に立ち上がった。

「あ……ありがと渡辺! あんたのお陰で、なんか吹っ切れたよ!」
 それだけ言うと、茶道部の部室から小走りに出て行った。
……かと思うと、直ぐに戻ってきた。

「ゴメン! さっき言ったコト、撤回する。あたし、やっぱ部活を続けたい!」
 扉から頭だけヒョコッと出し、渡辺に微笑みかける柚葉の頬は薄く赤らんでいた。
「うん、わかってるよ。愛澤さん」「柚葉でいいよ。お互い頑張ろうな、文貴!」

 愛澤 柚葉は、古びた廊下を駆けて行った。
「……あ~あ、ご主人さまもスミに置けないッスねえ?」「……ん? 何のコト、絹絵ちゃん?」
絹絵は、渡辺の膝に乗っかかって来ただけで、何も答えなかった。

 薄曇りの空が、湿った風を丘の上の校舎から、元女子高のモダンな校舎へと運んで来る。
その日も橋元は、生徒会室・中央の席に『お寺の本尊』の如く鎮座していた。

 現在、生徒会室で開かれている会議は、彼の前を『素通り』して進められている。
しかもそれは、事前に決定されている『結論』に向って、『形式』と言う手続きを踏むだけの単純作業でしかなかった。

「では、今回の会議で決まった通り、旧部室棟の取り壊しと、それに伴う同棟に在居している十の部活動の廃部を決定します」
 生徒会副会長は、議題を纏めたレポートを机に『バンッ!』っと置き、それを裁決決定の木槌とした。

 『結論有りきの会議』が終わり、生徒会の構成委員たちが席を立とうとした瞬間……。
「……異議有り~!」気だるそうに、手を挙げる男がいた。
「何ですか、生徒会長? 今さら異議を申し立てたところで、既に結論は出てます」

 不機嫌になる副会長を、橋元生徒会長は皮肉る。
「……そりゃ、会議をやる前からの『決定事項』だもんな、沙耶歌」

「どう言う意味ですか? 生徒会長」醍醐寺 沙耶歌は、尖った声を上げた。
「言葉通りの意味さ? 茶番だって言ってんの。オレは反対!! 少なくとも、ヤツ等に反論の機会くらい与えてやるべきだ」

「与えてどうなると言うのです? 今さら工事を止められるとでも、思っているのですか?」
 大企業の令嬢でもある許嫁の言葉にも、橋元はニヤニヤと笑った。
「アイツ等だって、そこまでバカじゃ無いさ。解体工事を止められない事くらい、とっくにに気づいてるよ?」

「だったら、話は早いですわね? 既に納得済みと言うのであれば、今の生徒会長や彼らの行為は、単なる悪足掻きに過ぎません」
「イヤ? 納得してるのは、旧部室棟の工事についてだけだぜ?」

「……どう言う意味ですか?」生徒会副会長は、長い髪を指に絡ませながら、再び同じ問いをした。
「つまり、『廃部』については納得してないってコトだよ! 『旧部室棟の取り壊し』と、『キワモノ部の廃部』は全くの別問題だからなあ?」

 橋元は、渡辺が会議の前に画策した通りの言葉を並べた。
「なあ? お前らどう思う? 本来、全く別であるハズの二つの問題を、あたかも一つの問題として偽装し、強引に『廃部』まで押し進めようとしているだけだとは、思わんか?」

「……確かに、言われてみれば?」「ちょっと強引過ぎる気も、していたのよね」
「部室棟の解体は、仕方無いとしてもだ……」「何も入ってる部活まで、全部廃部にする必要も無いんじゃないのか?」
 生徒会室のあちこちから、疑問の声が湧き上がった。

 普段は、優柔不断を装っている橋元だったが、この『雄弁さ』こそが彼の最も強力な武器だった。
一年生で、生徒会・会長に選ばれ、数々の部活動を正式な部として理事長に認めさせたのは、ひとえに雄弁さを最大限・有効活用したからである。

「どうやら、優秀なブレーン(頭脳)がいるようですね……生徒会長? アナタは雄弁だけれど、そこまで頭が回るタイプではありませんから……」
 橋元は、『醍醐寺 沙耶歌』が、既にブレーンの正体が誰か判っている様子だと、感じた。

「……いいでしょう。そこまで仰るのでしたら、理事長に掛け合ってみます……」
 長い髪を指に絡ませる、少女。
「……無駄かも……知れませんが……」

 副会長はそれだけ言うと、生徒会室を後にした。

 

次回・生徒会の双子姉妹

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