ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第五章・第六話

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悲劇のヒロイン

「……それは……」
 綺麗な顔を、うつむかせる醍醐寺 副会長。

「大丈夫ですか、姉さま?」「でも、もう強がらなくていいんです」
 そんな彼女を、浅間 楓卯歌と穂埜歌の双子姉妹が支える。

「貴女が、ここにいるみんなの不満を一手に引き受け、悪役を演じたとしても、それは何の解決にもならない。橋元だって同じことです」
 渡辺が、一歩前にでて副会長に語りかけた。

 茶道部部長のうしろで、ヘッドロックから開放された橋本が、頭をポリポリ掻いている。
「みんなで考えましょう! 誰かのせいになんかにせず、みんなで考え、みんなで話し合い、みんなで行動する……どんな結果になろうと、それが一番だと思ってます」

 渡辺は、堂々と胸を張る。
副会長が部室を見渡すと、皆が納得した顔をしていた。

「……でも、今さら計画を中止するなんて無理なのよ。今日ここに来た理由だって、お父様に何とかあなた達の主張を、聞いて貰える機会を無理やり作ったってコトを、伝えに……」
「えッ……今なんて言いました!?」渡辺を含む全員が、驚きの声を上げた。

「き、期待させたなら、ごめんなさい。かなり悪い条件なのよ。聞くだけ聞いて、あなた達の非を付いて、逆にあなた達キワモノ部を、会議の場で糾弾するように……わたしが……提案したの……」
 醍醐寺 沙耶歌は、その場で泣き崩れた。

「さっすが、沙耶歌だぜ! オレのフィアンセちょわ~ん♪」橋元は両手を挙げて喜んだ。
「凄いですよ、副会長! もう、そんな約束を取り付けて来るなんて!」渡辺も賛同する。
「ま、待って、ホントに厳しい条件で……」副会長は、父親との経緯を説明した。

「元々、条件が厳しいのはわかってました」「で、でも、わたしはみんなを売ったのよ……!?」
「副会長のした交渉は、実はボクも考えていて……こちらの弱みを見せて、大人たちを会議の場に引っ張り出す作戦でしたが……まさか、既に副会長が実行してくれてるなんて凄いです!」

「まずは、大人共を交渉の場に引っ張りだすトコから、始めなきゃな~って思ってたからな、沙耶歌ちょわ~ん。その手間が、完全に省けたぜ」
「……蒔雄、わたし……わたし、みんなに酷いコト……」副会長は、目を真っ赤に腫らして泣いた。

「悪の醍醐寺に捕らわれし、悲劇のお姫様……」
 橋元は彼女の前で片膝を付いて、醍醐寺 沙耶歌の手を取る。

「お前も、悲劇のヒロインを演じるんなら、最後まで演じ切れよ。そんでもって、オレに救われるんだ。悲劇のヒロインってのは、最後にゃハッピーエンドが待ってるもんだぜ?」

「相変わらず、よくもまあそんな臭い台詞が吐けるもんじゃのぉ?」
「しかも皆が見てる前で、堂々と……ある意味、女たらしのプロだな」

 橋元は、『電気ウナギ発電・エコの会』の鯰尾 阿曇と、『アスファルト研究部』の工藤 梢に感心され、同時に呆れられた。

「オレはいつもクールに決めるぜェ!」「もう、蒔雄のバカ!」
 副会長は、橋元の腕の中で顔を真っ赤にしたなる。

「しっかし、これからどうすっよォ~渡辺。オレたちの本当の敵は、学園長じゃなくどうやら『醍醐寺グループ』みて~だぞ? それに奴ら、会議の場でオレたちを潰す気だ!」
「……いや、むしろそれが事前にわかったのは幸運だよ。対策を立てる余地が生まれた」

「……だってさ 沙耶歌」「あんたのお陰だよ」「あ……ありがとう、柚葉……礼於奈」
 二年で沙耶歌と同じ学年の愛澤 柚葉と、部長の天原 礼於奈は、既に打ち解けて話していた。
未知との遭遇部と、巫女・美娘ダンシング部の部長になぐさめられていると、さらに声がかかる。

 同じく二年の香住 癒音と、栗林 伊吹だった。
「これからはわたし達、お友達ですわ」「友だちの悩みは、ボク達みんなの悩みだ!」
ナース服・学生服化推進委員会と、水鉄砲サバゲ部の部長も、輪に加わる。

「サヤ姉さま、酷いです」「わたし達を追い出すなんて!」
「ごめんなさいね、フウ、ホノ。でも、あんな家に居たら、あなた達にも悪い影響が……」
「もっと、わたし達を信頼して下さい!」「もっと、ご自分のコトを考えて!」

 義妹たちに説教され、申し訳無さそうにしている醍醐寺 沙耶歌。
渡辺や橋元ら全員が、この従姉妹の対等に近い関係に驚いた。

 

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