ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第五章・第五話

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悪役ヒロイン

 オワコン部の他のメンバーと別れた後、茶道部のメンバーだけで少し寄り道をした。

「相変わらずココは、神秘的で落ち着くッスねえ」絹絵が呟く。
「ほんと……大っきな木が三つ、天に向ってそびえてる!」
「樹の葉っぱから見える星が……プラネタリウムみたい」

 そこは、大須商店街の神秘スポットとして、渡辺が絹絵に紹介した場所だった。
「ここ、昔は古墳だったんスよね~」「そうだね。……誰かの『お墓』だったんだ」

 渡辺は、都会の灯りが落ちて、綺麗に浮かび上がった星空を見て思った。
 (そう言えば最近、美夜美先パイのことを思い出す機会が減ったよな……? 大須商店街のイベント参加申請や、動画の編集やらで忙しかったのもあるけど……)

「ご主人サマ……千乃先パイのコト、考えてるッスか?」
 六月と言っても夜はまだ冷えるからか、絹絵は渡辺の膝に乗っかかって来た。

「千乃先パイ?」「誰?」双子も、絹絵の左右にペトリと張り付く。
 渡辺は、両腕で三人の少女を包み込んだ。

「……オレの一つ上の先輩。去年の火事で、行方不明になったんだ……」
 渡辺は、『千乃 美夜美』先輩との経緯を、双子にも話した。

「千乃……アレ? どっかで聞いたことがある苗字じゃない、ホノ?」
「そうだ! 二年くらい前に伯父様のところに来た、『あの女』と同じだよ、フウ!」
「え? 誰のことを言って……先輩と同じ苗字って……詳しく聞かせてくれないか!?」

 双子は、渡辺の鬼気迫る眼差しに驚いたが、その『謎の女』について語ってくれた。
「名前は確か……千乃 玉忌(たまき)だっけ、ホノ?」
「うん。経営コンサルタントとか言ってたけど、なんだか妖しい気がする……」

「け~えいこんさ~と? なんスか、それ?」
「経営コンサルタント。企業の経営者に、経営についてのアドバイスをする人のこと……だよ」
 渡辺はそう口にしてみて、改めて何か繋がりの様なモノを感じた。

「考えたらさ……その女が現れた辺りから、伯父様もおかしくなった気がしない……フウ?」
「そうだね。それまでは、伯母様とも仲がよかったのに……」
 とは言ったものの、なんの確証も無い双子は顔を見合わせる。

(謎の女……経営コンサルタント……変ってしまった企業経営者……?)
 渡辺は、それらの点を結びつける『何か』を、見つけ出そうとしていた。
「どうしたの、渡辺先パイ?」「気になることでも?」「あるッスか?」

「まだ、なんとも言えないケド、糸口は見てた来た……」
 立ち上がって、星を見上げる渡辺。
「オワコン棟の解体や、キワモノ部の廃部の期限も差し迫ってる。今は『動く時』なのかも……な」

 次の日、『醍醐寺 沙耶歌』副会長は、キワモノ部の部員たちに呼び出され、廊下を歩いていた。

「何かしら……でも、なにがあっても、おかしくは無いわね」
 現在の学校の理事長兼・学園長は、彼女の母親だった。
オワコン棟の取り壊しと、キワモノ部の廃部を決定したのも、彼女の母親である。

「オワコン棟を壊して、高層マンションを建てる計画も、すでに知っているのでしょうね」
 彼女の父親が社長を務める、醍醐寺グループの筆頭企業であるゼネコン会社は、今回の旧部室棟の解体や、その後の高層マンション建築も請け負っている。

 つまり、彼女の両親が、キワモノ部の未来を閉ざそうとする張本人であった。

「……お父様から、大した譲歩も引き出せなかった……悪役ってのも楽じゃないわね、蒔雄」
 彼女は、肩で小さくため息を付いた後、覚悟を決めて茶道部の扉を開ける。
部室には、牢獄のように重苦しい空気が流れていた。

 長机に居並ぶ、オワコン部の部長たちの放つ視線は、全て醍醐寺 沙耶歌に向けられる。
部屋を見渡すと橋元や渡辺、義理の妹たちの姿もあった。

「……今日はこちらからも、あなた方にお伝えしたいことがございます……」
 そう切り出した途端、彼女の背後でピシャリと部室の扉が閉まる。 
「なっ……ッ! 貴方たち、一体何を!?」

 次の瞬間、浅間 楓卯歌と穂埜歌の双子姉妹が、副会長に飛びかかった。
「きゃああああぁぁぁぁーーーー!?」
 モンドリを打って倒れ込む、醍醐寺 沙耶歌とその義妹たち。

「ね、姉さまどうして……どうしてわたし達を遠ざけたのです!?」
「わたし達は、姉さまの義妹なのですよ! もっと頼って欲しいのです!」
 予想外の反応を見せる義妹たちに、沙耶歌は戸惑う。

「……あなた達!? で、ですが、今のわたしには……ああするより他に手が……」
 それは、彼女なりに必死に考えて出した決断だった。

「ごめんね……副会長。あたし達、あんたのコト勘違いしてた」
 頭に宇宙人カチューシャを付けた少女が、後ろから両腕で沙耶歌を優しく包み込む。

「わたしもゴメン。勝手に悪い奴だと決め付けて、勝手に敵だと思い込んでた」
 赤いレオタードに羽織姿の少女も、同じよう副会長に寄り添った。

「……こ、これは一体……どういうことですか!?」
 『悪役を演じる覚悟』で来たハズが、余りの予想外な展開に理解が及ばない副会長。

「悪ィ、沙耶歌。全部バラしちゃった♪」
 ヘラヘラした態度で、『スマン!』とばかりに手を合わせる橋元 蒔雄。
「バ、バラしちゃったって……あなたねえッ!?」副会長は苛立ちを隠せない。

「まあそう怒るなって~沙耶歌ぁ」「怒らせる様な言い方をしてるのは、お・ま・え・だ!」
『アスファルト研究部』の工藤 梢が、生徒会長を羽交い絞めにした。

「大丈夫だったガオ?」「ホラ、立てるアル?」
 小柄な二人の部長も、双子を引っぺがして副会長を助け起こす。

「醍醐寺副会長……」うしろからの声に振り向くと、そこには眼鏡の少年が立っていた。
「渡辺……文貴くん。これは一体何なの? どうして……」
 茶道部の部長は、副会長の顔を真っ直ぐに見て言った。

「誰かが悪役を演じて幕引きなんて、そんなのおかしいし、何の解決にもならないからです」