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萌え茶道部の文貴くん。第五章・第七話

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 キワモノ部の部長たちは、長机の自分の席に座り、本来の目的である対策会議を開始する。

 生徒会長と副会長は出入り口側の端に座り、渡辺も自分の席に付くと、絹絵が現れた。
「みなさ~ん、お茶が入ったッスよォ~♪ 今日はご主人サマに教えて貰って、アチシが抹茶を点ててみたッス!」

 楓卯歌と穂埜歌の双子姉妹も、茶請けのお菓子の配膳に回る。
「……お、これはこれは、意外といけるのォ?」
「うん、おいしいかも」「旨いガオ♪」

「うッ……やっぱ、ご主人サマよりは落ちる感じッスかねえ。仕方ないッスけど……」
 皆の反応の薄さに、悔しそうな絹絵。

「初めてにしては、上手く点てられてると思うよ。ちゃんと気持ちが籠もってる!」
「ありがとッス、ご主人サマ! これからも精進するッス♪」
 ホワっとした笑みを浮かべ、ご機嫌になる絹絵。

「……ところで渡辺、これからどうすんだ? 事前に情報が判ってもよ。どう対処するかが肝心だろ?」
「ああ、そうだな」渡辺は、橋元の意見に賛同する。

「それにはまず、副会長の協力が必要になります」「……え? わたしの?」
 醍醐寺 沙耶歌は、一瞬だけ戸惑いの表情を見せた。

「はい、今回の会議の交渉相手は、茶道の名家でもあり、巨大企業グループでもある『醍醐寺』なんです。出来れば、もっと情報が欲しい」

「確かに……相手の内情がわかれば、交渉も有利に進められるでしょう」
 『メイド流剣道部』の御子神 涼香が、渡辺の提案をフォローした。

「ええ……わたしの知ってるコトであれば、何でも話します」 
「楓卯歌ちゃんと穂埜歌ちゃんにも、醍醐寺にいた頃、気になったことがあれば話して欲しい」
「うん、いいよ」「姉さまとみんなの為だもの!」三従姉妹の承諾は取れた。

「有難う。実はオレが気になってるのは、二年くらい前に醍醐寺に入ったと言う、『経営コンサルタントの女性』のことなんです。そこら辺を中心に、話してもらえませんか?」

「それって昨日、わたし達が話した……」「『千乃 玉忌』って女のコト?」
「そうだよ。その女性が入ってから、醍醐寺がおかしくなった……ってのが気になってね」

 副会長も気になる節があったのか、言葉を発する。
「……確かに言われてみれば、わたしもあの女性については、不審に思ってました」
「何だか気味が悪いの」「ちょっと怖い感じだった」

「……なあ渡辺。千乃って……まさか?」「ああ」渡辺は、橋元の疑問を察していた。
「もしかすると『千乃 美夜美』先輩と、何か関わりがある人なのかも知れない」

「ご、ごめんなさい。わたしも、経営コンサルタントという以外に、詳しいことは判らないわ」
「でも、妖怪染みてるって言うか……」「人間じゃ無いみたいな、感じがした」
「そ、そうね」双子の現実離れした意見にも、副会長は異を唱えなかった。

「流石に、妖怪は無いと思うけど……」渡辺の言葉に、キワモノ部の部長たちもうなずく。
 すると、うしろにいた絹絵が、渡辺の元に寄って来る。
「あ……あの、ご主人サマ。さっきから、少し変った匂いがしないッスか?」

「え? 別にしないと思うけど……絹絵ちゃん……?」
 けれども絹絵は、『低くてぺっちゃんこな鼻』をヒクヒクさせ始めた。
「やっぱ、何か匂うッス! 副会長さんのスカートの辺りからッス!!」

「沙耶歌ぁ? お前……まさか!?」「……んなッ!!?」
 台詞が終らないうちに橋元の顔には、三つの赤い手形がクッキリと刻まれる。
「……そ、そんなワケ無いでしょ、蒔雄!」「やっぱ、サイテー」「姉さま、別れたら?」

「シルキーッ!!?」橋元は、騒ぎの元凶である絹絵を睨んだ。
「あ、あっれ、おかしいッスねえ? ポケットに何か入ってないッスか?」

「別に何も……あっ、コレ……!?」
 醍醐寺 沙耶歌は、自分のスカートのポケットに、『何か』が入っていることに気付く。
「そうだわ……あの時の!」副会長は、ポケットからハンカチを取り出した。

「これは……銀色の毛?」
 副会長の取り出したハンカチに包まれていたのは、フワっとした毛だった。

「犬か何かの毛みたいだな? シルキー、よく入ってるのがわかったな?」
「エッヘンっす!」絹絵は、平らな胸を張った。
「でもなあ。そんな毛、今は何の役にも立たないぜ?」

「……いえ、蒔雄。この毛は昨日、家で偶然『千乃 玉忌』と出会って、彼女が去った後に落ちていたモノなの。そのときは雨に濡れていたせいか、黒い人の髪の毛に見えたけど……」
(まさか、本物の妖怪……!?)部長たち一同は、一斉に副会長を見た。

「多分、犬でも飼っているのでしょうけど……ね?」
 副会長の冷静な分析に、中二病患者が殆どのオワコン棟の住人たちは、一様に顔を赤らめた。
「……ま、そりゃそうだよね」「ボ、ボクとしたことが、愚かな発想をしてしまった!」

「あの……その毛なんスけど、アチシに預からせて貰えないッスか?」
「どうしたんだシルキー? 別に妖怪の毛じゃあ無いんだぞ?」
「わかってるッスよ! チョット気になるだけッス!」

「いいわよ」副会長は、直ぐに了承する。
「では、お預かりするッス」絹絵はそれを、シマシマポシェットにしまった。

 渡辺を含め、その毛が重要な手掛かりだとも思えなかったので、話は別の話題に移った。
「……出来れば『もう一つ二つ』手を打って置きたいんだ。工藤さん、工事についてのアドバイスをいただけますか?」「オーケー。『アスファルト研究部』の、研究成果を見せるときだぜ」

「それと香住さんにも、大事なお願いがあって……」
「『ナース服・学生服化推進委員会』に出来ることなら、何なりとお申し付けくださいな」
 白衣に身を包んだ少女は、妖艶さの足りない脚を組んで答えた。

「わたしも出来る限り、千乃 玉忌の身辺を探ってみます」
「そうして貰えると助かります。副会長」

 一同は、それぞれの目的の為に動き出した。

 

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