ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第四章・第三話

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生徒会の双子姉妹

 茶番だった会議は、結論を得ずに幕を閉じ、皆も副会長に続き生徒会室を出て行った。
 ただ一人、生徒会長を残して。

「……なんだよ? やけにあっさり認めやがんな~、沙耶歌のヤツ……」
 橋元は、副会長の態度が妙に気になった。
 冷静で可愛げの無い最近の彼女は、彼の目には妙に寂しげに映っていたからだ。

「渡辺も、もう少し反論があるって予測してたのに……何だか拍子抜けだぜ、まったく!」
 だが周りに、橋元の独り言に付き合ってくれる人間は存在しない。
仕方なく、ぶ然とした顔をぶら下げて、生徒会室の入り口を出た瞬間だった。

「ふぎゃっ!!?」橋元は背中に衝撃を受けて、廊下に倒れ込む。
「痛って~! なんだ、一体!?」
 たいした怪我も無かったので、起き上がろうとすると、そこには二人の少女が立っていた。

「なんだぁ~、お前たち……?」
 彼女たちは、絹絵よりは多少背が高いくらいで、仁王立ちで橋元を睨みつけている。
「副会長を哀しませる、悪いヤツ!!」「副会長のお気持ちもわからない、酷いヤツ!!」

 少女たちは、顔から背格好まで瓜二つで、おそらく双子なのだと認識できた。
「何だぁ? ……オレの背中を蹴飛ばしたのは、お前らか!!」
 橋元は立ち上がって、いきなりダブルキックを喰らわせられた相手を威嚇する。

 二人は、ショートカットのボーイッシュな髪で、体つきは華奢だが整った顔をしている。
「あん、誰だっけお前ら? そいやあ、生徒会にいたよ~な?」
「物覚えも悪いヤツ!?」「いい加減なヤツ!! 許さない!!」

 双子たちは殺気を帯び、もの凄い剣幕で橋元に襲いかかってきた。
咄嗟に攻撃をかわして逃げ出す橋元を、猛スピードで追いかける二人の少女。
「うわ、なんなんだ……!? 一体、オレが何したっつーの!!?」

「副会長を泣かせた!」!「副会長を裏切った!!」
「ふ……副会長って……ハアハア……!! お、お前ら……沙耶歌と……何の関係……が……!?」
 日頃から茶道部で怠惰な生活を送っている橋元は、直ぐに息が上がり、走るだけで精一杯だった。

「……ちきしょう……なんだって……オレが……こんな目に!?」
 最後の気力を振り絞って、何とか双子姉妹を撒いた橋元は、茶道部に逃げ込む。

「た、助けてくれ……渡辺。ヘンな双子に、追われてんだ!!」
「そんなに息を切らせて……会議で一体何があったんだ、橋元?」
 茶道部の部室では渡辺が、相変わらずマイペースで抹茶を点てていた。

 橋元は顔を上げる事すら出来ない程、ゼエゼエ……と荒い息を吐き続ける。
「……いや、オレに聞かれても……何がなんだか……さっぱりわからん!?」

 渡辺は点てた抹茶茶碗を二つ、長机に置く。
「少し温めに点てたから、飲んでみない? 二人とも」「ふ……二人?」
 抹茶茶碗から立ち昇る湯気の向こうで、二人の少女が『コクリ』と頷いた。

「ゲエ! お前ら!」橋元は勢いよく顔を上げると、血走った目で双子を見る。
「我らから、逃げ切れると思ったか? 頭の悪いヤツ」
「貴様が逃げ込むと踏んで、先回りをしたのだ! 顔も悪いヤツ」

 そこには、長机の椅子に座って、優雅に抹茶をすする二人の少女がいた。
「な……なんで、この『双子の小悪魔ども』に、抹茶なんか振舞ってるんだ……渡辺!?」
「何、言ってるんだ。可愛らしい、お客さんじゃないか?」

「可愛いだなんて絶対あり得ん! この凶暴なモンスター共のど~こが可愛いものかッ!!」
 二人はさっさと抹茶を飲み終えると、橋元に『トライアングルドリーマー』をかける。
すると、授業を終えた絹絵が、ノコノコと部室に入ってきた。

「あれッス? 二人とも、ウチの部になにか用事ッスか?」
「え? この子たち、絹絵ちゃんの知り合い?」
「知合いも何も、アチシと同じクラスッスよ?」二人の正体が判明した。

「え~っと名前は、『浅間 楓卯歌』ちゃんと、『浅間 穂埜歌』ちゃんッス!」
「わたしが『浅間 楓卯歌(ふうか)』だ」「わたしが『浅間 穂埜歌(ほのか)』だ」
「言われても、見分けが付かね~よッ!」橋元は、再び蹴飛ばされる。

 絹絵は何かに気付き、スチールラックに置いてあった紙を二枚取り出して、二人の前に並べた。
「ここに、自分の名前を書いて欲しいッス♪」言われた通り、二人は名前を書く。
「へえ~、難しい字を書くんだね? これで、『ふうか』と『ほのか』って読むのか~?」

 漢字の難しさに関心する渡辺だったが、ある重大な事実に気付いた。
「……き、絹絵ちゃん。これ、『入部届け』じゃないかあッ!?」
「え? お二人とも、茶道部に入部しに来たんじゃ無いッスか???」

 絹絵は、頭をポリポリと掻いて、場を取りつくろった。
「ゴ、ゴメンなさいッス! アチシとしたコトがとんだ勘違いをしたッス~!」
「……分ればいい」「……問題無い」

 どうやら、双子姉妹に敵視されているのは橋元だけであって、橋元はそれが不満の様だ。
「お前ら、何だってオレを追いかけ回すんだ? 沙耶歌と何の関係があるってんだよ!」

「副会長の名前は、確か……醍醐寺……沙耶歌……? いや……待てよ……?」
 渡辺は再び何かに気付いたらしく、二人の名前の書かれた入部届けを手にとって眺めた。
「『沙耶歌』……『楓卯歌』に『穂埜歌』。両方とも名前の最後に『歌』の文字……?」

「クッ……流石は茶道部・部長!」「既に、気付かれてしまったか!」
 二人の少女は、急に観念したかのように自らの素性を語り始めた。
「実はわたし達は、沙耶歌姉さまの義理の妹!」「……由緒正しき、醍醐寺の血縁の者!」

「ええ! ……それってつまり、キミたちと醍醐寺副会長は、従姉妹どうしってこと?」
 渡辺が聞きなおすと、少女たちは同時に『コクリ』と頷いた。

 

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