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萌え茶道部の文貴くん。第三章・第七話

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対案

 オワコン棟の部活を存続させる計画は、始動した。

 学校や生徒会に突きつけるための、『対案』の作成に入る。
お陰で、以前なら橋元と渡辺がいるだけの茶道部の部室が、活況をていしていた。

 キワモノ部の部長たちは、自分たちの部活に戻って意見を取りまとめ、まとまった意見を持って茶道部に集まり、他の部の意見との刷り合わせを行う……といった作業を繰り返したからだ。

「なんで、お前らの部員が揃いも揃って、ウチで茶をすすってんだ? 礼於奈!」
 訝しげな表情を浮かべる橋元の前に、ずらりと並んだ巫女さん風レオタード姿の少女たち。
「あの時飲んだ抹茶が、けっこ~美味しかったからさ。部のみんなにも飲ませてあげたいじゃん!」

 巫女・美娘ダンシング部に所属する五人が揃って、抹茶をすすり饅頭を頬張っていた。
「対案の作成のためならともかく、単に抹茶をすすりに来ただけって……やる気あんのか?」
「それ、アンタが言うかな~橋元。大体、さっきから抹茶を点ててくれてんの、渡辺と絹絵ちゃんじゃない! アンタはゲームやりながら、ダラダラしてるだけでしょ!」

 二畳の畳スペースで寝そべり、携帯ゲーム機をプレイしながらポテチを口にする橋元。
「ん……それがどうした? オレは、ダラダラするために茶道部に入ったのだ!」
「威張んな、アホ!」だが礼於奈は、直ぐに『コイツに何を言っても無駄だ』と思った。

「それよりコレ、あたしらでまとめた対案の要望書だよ。どうかな、渡辺」
「うん、有難う……天原さん」五人の後ろに立っていた渡辺が、肩越しに要望書を受け取った。
「この間、屋上で見せて貰ったダンス、ブルーレイにしたいと思ってるんだケドどうかな?」

 抹茶を美味しそうに飲んでいた巫女・美娘ダンシング部のメンバーから声が上がった。
「あ、あの……あたし達みんな、機械とか苦手で……」
「スマホのカメラで撮ってもぶれちゃうのに、ブルーレイなんてとても……」

「大丈夫だよ。ビデオカメラも映像編集も、オレと橋元でなんとかするから」
「え~、オレ編集とか無理ィ~!」橋元が気だるそうに、ゴロン……とソッポを向いた。
「面倒いだけだろ。機材は揃ってんだから、グダってないで手伝って貰うぞ!」

「そんなの出来ちゃうんだ?」「機材も揃ってるって……なんか凄いね?」
 礼於奈を始めとした、巫女・美娘ダンシング部のメンバーは驚く。
「パソコンとかビデオカメラは、今じゃそんなに値が張るモノじゃないから……ね」

 実は橋元が、中学時代に立ち上げようとしていた映画やアニメの部活で、みんなで小遣いを出し合って調達したモノが残っていたのだ。

「それより、天原さんたちこそ凄いよ! 大須で開かれたダンス大会で準優勝だなんて! 運動音痴なオレとしちゃあ、カッコよく踊れる方が羨ましいケドな……」
「屋上のときのダンス、凄かったッス! アチシも踊ってみたいッス!」

 五人のメンバーは、一同に少し顔を赤らめた。
「な、なんか照れるな……。でも、ダンスをブルーレイにしてどうすんの?」
「うん、自分たちの実績をアピールするのに、映像ってのは強いと思うんだ。必要な部活だと認められれば、存続の道も開けるかも知れないからね」

「え? ホント? マジで嬉しい!」「やったぁ~♪」
 巫女・美娘ダンシング部のメンバーは、ハイ・タッチを交わし歓声を上げた。

「今の時点じゃ絵に描いた餅だケドな~礼於奈」「なんですってッ!」

 水を注された礼於奈は、冷たい視線を畳で寝転がってる声の主に向ける。
「そんな怖い顔すんなって、礼於奈ちゃ~ん」「こ……こいつッ!!?」
更に機嫌を悪くする礼於奈に、橋元は少しフォローを入れることにした。

「……確かに、ブルーレイの記憶メディアも、安くなったからな~。生徒会だけじゃなく、理事会とかPTAの連中にバラ撒けば、見てくれるヤツもいるかもな? 再生機器くらいは持ってるだろうし。バラ撒ければ……の話だが」

「渡せる機会があるか……ってコトか? 無理なら、ネット動画って手もあるケドな。天原さんたちの承諾は必要だし、学校が許可するかどうかだが……」「潰そうとしてんだから、無理じゃね?」
「まあ……な」「ブルーレイにしても、音楽を入れる場合、著作権とか絡んでくるぞ」

「う、ううむ。ど、どうしたモノか?」
 橋元と渡辺の会話に、巫女・美娘ダンシング部のメンバーたちは、ビミョーな顔をしていた。
IT化の波からは、大幅に遅れているようだ。

「ま、何にしろ……だ。悔いは残さないようにしね~とな。飛ぶ鳥、アトを濁さずだ」
「勝手に、廃部前提で話を進めてんじゃね~、橋元!」
 喰ってかかる礼於奈を尻目に、橋元は立ち上がって部室の入り口へと向う。

「……んじゃま、生徒会行ってくるわ。生徒会長なんで、少しは顔を出さね~とな~」
「まったく、アレでよく生徒会長なんて務まるよね~?」
 天原 礼於奈は、侮蔑の言葉で見送った。

 

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