ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第三章・第八話

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生徒会副会長

 生徒会室まで向う途中の廊下を、橋元はため息混じりに歩いていた。

「しっかし茶道部も、ゆったりとくつろげる場所じゃ無くなったよな~。礼於奈たちの前は、迷彩水着を着た女コマンドーたちが雁首並べてたし、その前は恐竜の帽子を被った幼女たち……だもんな~」

 すると、誰かが後ろから声をかけてきた。
「あっれ~橋元アル? こんなところでどうしたアルか? 今からみんなで、茶道部に押しかけるトコだったのにアル?」

 橋元は、面倒臭そうに声の主の相手をする。
「……なんだ明美か? オレはこれから生徒会なんだよ。茶道部は渡辺とシルキーがいるから、オレが居らんでも問題はあるまい?」

「確かに全然無いアル」「じゃあ、渡辺に味見してもらおう」「新人のコ、食べるトコ可愛いしね」
 きっぱりと答え、立ち去ろうとする一条 明美ら、五人のミニスカートのチャイナドレス少女。
「時代遅れな格好のクセに、ムカつくな。で……お前らの持ってるその籠は、なんなんだ?」

「フッフ~♪ よくぞ聞いてくれたアル。これは我ら『チャイナ服少女・復権友の会』が、調理技術の粋を込めて作った、アップルパイ風・小籠包アル!」
「なんだ。ゲテモノ料理か……」橋元は、興味を示さず素通りしようとした。

 プライドの傷付いた明美は、猛烈に抗議を開始する。
「違うアル! 白くて透明感のある小籠包の皮を、あえてキツネ色になるまで焼き……そこにリンゴを蒸して砕いたジャムを入れた一品アル。ちゃんと美味しいアル!」

 橋元は訝しげな目で、その『一品』とやらを見た。
「……で? どうしてそんなモノを持って、茶道部に押しかけようとしてんだ?」
生粋の日本人である一条 明美が、勝ち誇ったように腰に手を当てて答えた。

「渡辺の提案アル! 自分たちの良さを、ドンドンアピールして行こうってなったアル。アタシたちの場合、中華料理が得意だったアル。とくに蒸し料理には自信あるアル~♪ でも、写真は苦手なので、渡辺に撮ってもらうアル」

「『物撮り』も意外と難しいからな。レフ板で光を当てて立体感を出すとか、蒸し料理の場合、ドライアイスでも炊いて湯気を演出したりとかよ」
「何のことアル?」「……茶道部に行けば判るよ。じゃあな」「……アルル?」

 橋元は丘の上の校舎を出て、丘の下にある校舎の生徒会室へと向った。
「渡辺のヤツ、オレがダラダラしてる間に、随分と事を進めてるじゃね~か?」
 先ほどまで居た小高い丘の上を、廊下の窓越しに見上げながら歩く。

「料理の写真は、ホームページかブログでも作ってやって、載っけるつもりだろう。礼於奈たちのダンスは、ボイパで雅楽をオリジナルアレンジして著作権をクリアし、水鉄砲サバゲ部のサバゲープレイ共々、ブルーレイ化して配布……か。中々に考えやがる」
 橋元は口元にシニカルな笑みを浮かて、立ち止まった。

「……だがな、渡辺よ。お前らのせっかくの努力も、水泡と消えるかも……だぜ……」
 窓の外に視線を固定したまま、再び歩き始めた。
「今の生徒会は何かがおかしい。前から別に、キワモノ部の味方だったワケじゃね~がよ。今じゃ完全に潰そうとしてやがる」

 橋元の脳裏には、やっとやる気を取り戻し、他の部活の世話まで焼く渡辺の姿が浮かんだ。
「……さて……どうしたモノかねえ」ため息混じりに、窓の外を眺めながら歩く。

「きゃあぁッ!」「おわ!」橋元は人にぶつかり、ぶつかった相手だけ悲鳴を上げて倒れた。
「わ……悪ィ、沙耶歌。つい、ボーっとしてて……な。大丈夫だったか?」
 橋元に手を差し出された少女は、幾分頬を赤らめながらも手を取って立ち上がった。

 少女の名は『醍醐寺 沙耶歌』。
凛とした立ち姿に、廊下の窓から少しだけ流れ込んでくる風にそよぐ黒髪。
彼女こそが、愛理大学付属名京高等学校の生徒会・副会長であり、同校の理事長兼・学園長の娘……つまり橋元 蒔雄の許嫁であった。

「ええ……蒔雄。それよりオワコン部の廃部の件は、ちゃんと伝えたんでしょうね?」
 倒れていた時とは別の、冷たい目線で橋元を問い詰める沙耶歌。
「ああ……伝えた、伝えた~♪ ま、ヤツ等もすんなり納得なんて、してね~ケドな?」

「まったく、貴方と言う人は。伝えるだけでは、何の意味がありません」
 ヘラヘラと笑う橋元に対して、引きつった顔で怒りを顕にする副会長。
「あっれぇ~そうなの? オレ、それ初耳だわ~」

「ですから、わたしが直接伝えると言ったのに、自分が伝えるからと啖呵を切った挙げ句が、この座間ですか? 大体、貴方はいつもいい加減過ぎます!」
 黒髪の副会長の視線は、許嫁の生徒会長に対してでも厳しかった。

「……つ~かさ。いくら何でも、強引過ぎやしね~か~? ヤツらに反論する機会くらいは、与えてやってもいいだろ~に?」
 橋元の態度に腹を立てた醍醐寺 沙耶歌は、更に厳しく糾弾する。

「そんな弱腰で、交渉事が纏まるとでも思ってますの? 行く行くは、この学校の経営にも携わっていただきたいと、両親も申しておりますのに! 貴方と来たら、茶道部で毎日ゴロゴロと。これではお父様やお母様に、合わせる顔がございません!!」

「そんなの、親同士が勝手に決めた事だろ~。お前との許嫁の話だってさあ? お行儀良くハイ、そうですか……って、すんなり従うとでも思ってたのか?」
 少女の吊り上がった目は、急に哀しみの色を帯びた。

「……蒔雄は、わたしの事が嫌いなのですね? ……ですが構いません。貴方はわたしには……『醍醐寺』には決して逆らえないのですから……」
 それだけ言うと、醍醐寺 沙耶歌はその場を後にする。

「ヤレヤレだぜ。昔っからツンケンしたトコはあったケドよ。前はもう少し、可愛気があったんだがな~。今だってパンツは、純白フリフリで可愛いしィ~♪」
 橋元は、許嫁の揺れるスカートを見送りながら、呟いた。

「……生徒会、バックれたら……アイツ怒るかな~? あ~行きたくね~!!」

 

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