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萌え茶道部の文貴くん。第三章・第六話

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天の川

 『オワコン棟のキワモノ部・部長たちによる会議』が終って、学校は静まり返る。

 散々悪口を言われた橋元は、下駄箱の前で一人ため息をついた。
「まったく、生徒会長ってのも大変だぜ。厄介ごとは一手に押し付けられるは、何かあったら悪役にさせられるわ……」

 乱雑に自分の運動靴を床に放り投げると、後ろから声がかかる。
「お疲れ、橋元。今日はお互い、大変だったな」  
振り向くと、先に靴を履き替えていた渡辺が、正面玄関をバックにして立っていた。

「お~お~、今日の会議の立役者さまがお出ましか? ……ところでシルキーはどうした?」
「絹絵ちゃんなら、さっき帰ったよ。遅くなったから送ろうかって言ったんだケド……遠慮されちゃった。それより悪かったな。悪役を被ってもらって」

 下履きに履き替えた橋元は、渡辺の方に駆け寄り、肩に持たれかかる。
「ま、い~んでね~の? お前も、多少はやる気になったみて~だし?」
「……本当にアレで良かったのか……自信は無いけどな」

 外に出ると、少しばかり雨が降っていたらしく、あちこちに水溜りが出来ていた。
「ま、お前にしちゃ、随分な進歩さ。しっかしよォ? あんな積極的に会議を指揮り出すとは思わんかったぜ」
今は雨も既に上がり、二人の上には夜の帳が降りようとしていた。 

「な……どう言う心境の変化だ? 先輩のこと、吹っ切れたのか?」
 渡辺は、首を横に振った。
「いや、まだ全然駄目だな……でも、反省した」

「反省? 一体、何を?」橋元は渡辺の、意味不明な言葉を問い正す。
「今日、始めてオワコン棟の他の部の人たちと、面と向って話してみて……」
 渡辺は、夜空に輝き始めた星々を見上げて答えた。

「みんな、真剣に部活をやっているんだなあ……って感じた。キワモノ部なんて呼ばれてるケド、皆それぞれにちゃんとした『やりたい理由』や『部活に対する想い』があるんだな……ってさ」
 橋元と渡辺は、それぞれの自転車にカバンを載せ、乗らずに押し始める。

「ま、そりゃそうさ。ヤツらに部活の許可を出したの、何を隠そうこのオレだかんな! やる気のね~ヤツに、許可なんか出すモノかよ」
「我が校が始まって以来、『最もやる気の無い生徒会長』と言われる、お前の言葉とも思えんな?」

 橋元は、渡辺の反論にヘラヘラと笑ってのけた。
 だが、この『橋元 蒔雄』という人物は、表面上はチャラついていて、いい加減に見えるが決して中身までそうでは無い。

 渡辺は中学時代の橋元を思い出していた。

 当時、橋元も映画やアニメが好きで、渡辺をはじめ、サブカルチャーが好きな人を集めて、部活を立ち上げようと試みた。
だがこの時は、中学校の校長に強行に反対されてしまう。

 橋元は、映画やアニメの魅力、芸術性、先進性などを説いたが、受け入れられなかった。
 口には出さなかったが、学校は学びの場であり、アニメや映画など、教育にとって有害でこそあれ、芸術性や先進性など無い……と、頑なに信じる老人の耳には届かなかったのだ。

「橋元……お前の目に狂いは無いと思うよ。オワコン棟の住人は、一風変わってるケド、みんな気のいい人たちばかりだ。若干、女の子の比率が高すぎるのが気になるケドな」
 渡辺は、一年から生徒会長の座に居座る、親友の顔を見た。

「男も居ただろ? 根性無くて、みんな辞めたケドな。ま、自分たちがやりたいと思った部活だ。守り通せるかどうかは、結局は自分たち次第さ」
 橋元は、相変わらず悪態を付いている。

 渡辺は何となく立ち止まって、自転車を押している橋元の背中を見た。
(……そうは言ってもお前は、悪役を買ってまでみんなを助けようとしてるケドな……)

「……橋元」「ん? どうした?」「オレ……さ。やっぱ、茶道部をこのまま終らせたくは無いんだ」
 雨の上がった空は、星の輝きが際立つほどに黒く深くなっていた。
「そっか」 「千乃先輩のことだって、有耶無耶のまま幕引きなんて絶対に嫌だ!」

「ああ……そうだな」 渡辺は、自転車を停めて待ってくれている、橋元の隣に並んだ。
「……みんなの部活も、守りたい!」「お前急に、メッチャクチャ欲張りになりやがったな~」
 暗がりの通学路を、合理的とは正反対に自転車を押す二人の頭上……。

 巨大な天の川が、初夏の透き通った夜空に美しく流れていた。

 

次回・対案

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