ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第5章・2話

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調査報告

 夜が明け始めた頃、双子姉妹は疲労困ぱいで小領主の城に戻って来た。

 二人で軽くシャワーを浴び、妹の血を洗い流す。
体だけ拭くと、裸のまま一つのベッドに潜り込んだ。

「リーフレア……ごめんね。痛かったでしょ?」
「いいえ、姉さま……わたしの油断が原因です。足を引っ張ってしまい、申しワケございません」
 姉妹は、自分たちに用意された部屋のベッドの中で、お互いの温もりを確かめ合った。

「リーフレアの心臓の鼓動が聞こえる……良かったぁ、ちゃんと動いてる」
 姉は妹が生きていることを実感し、心の底から安堵する。

「お姉ちゃんの体、ポカポカしててあったか~い~♪」
 普段とは口調の違う妹に、少しだけ戸惑う姉。

「リーフレアったら、いつもは『お澄ましさん』なクセに、甘えん坊なんだから」
「いいのォ! 誰も見て無いんだから。今日はホントに怖かったんだモン!」
「ゴメンね。もう二度と、あんな目には合わせないから……」「うん、お姉ちゃん!」

 頭まで潜り込んだベッドの中で、姉妹は今日の出来事を思い出す。
「……舞人くんが居なかったら、二人とも危なかったよ。感謝……しなくちゃね」
「はい。わたしの命の恩人です」妹は、普段の澄ました口調に戻っていた。

「そう言えば『消えた魔王の謎』も、『謎の少年剣士』も、舞人さんのお陰であっさり解決ですね?」
「そっかあ。謎の剣士は、舞人くんのコトだし、消えた魔王の謎も、舞人くんの剣で魔王が少女に変えられた……ってコトだよね?」

「はい」「そっか、全て解決かあ?」「あ、でも、今回の報告がまだすよ、姉さま?」
「う~ん。それ、起きてからにしようよ? 今日は疲れたからもう寝る!」
「……ですね~。明日に……しましょう……」 

 そして姉妹は、長い眠り就く。
五日後、二人は一糸纏わなない姿のまま目覚めると、部屋には二人の女性がいた。

「……あれ、カーデリア……どうしてここに……?」
「そ、それに、プリムラーナ・シャトレーゼ様まで!?」
 双子は自分たちが全裸であることに気付くと、はしたない姿をシーツで覆った。

「別にいいわよ、隠さなくても?」
「この部屋には、女性しか居ないのだ。それより、五日ぶりのお目覚めだね?」
「へ? 五日ぶりって?」「ま、まさかわたしたち……五日間も寝ちゃってましたぁ!?」

 双子姉妹は、自分たちが『五日五晩も眠り続けてしまった事実』を知った。
「うわああ、ゴメ~ン!」
「色々、報告しなきゃ行けないことがあるにも関わらず……申し訳ありません!」
双子姉妹は、ペコペコと頭を下げる。

「……いや。五日前の街での惨事、情報の収集に手間取って、キミたちへの救援が遅れてしまった。済まない、許して欲しい」
 銀色の鎧に蒼いマントを纏った、金髪の女将軍が頭を垂れた。

「そんな……! 顔をお上げ下さい、プリムラーナ様!」「そ、そうだよ~」
 双子姉妹は恐縮して、可憐なる女将軍に頭を上げるようお願いする。

「ホントに謝罪が必要なのは、クーレマンスのアホよ! 街が燃えて二人がピンチだってのに、飲んだくれてベロンベロンで身動きが取れない状態だったんだから!」
 いつも以上に、機嫌が悪いカーデリア。

「ところで、カーデリアはなんで居るの? シャロと一緒に王都に向ったんじゃないの?」
 リーセシルの質問に、カーデリアのパッションピンクの髪が逆立つ。
「置いてけぼりに・さ・れ・た・の・よ! 全くシャロのヤツゥ~!!!」

「そ、それより、二人の報告を聞こうか?」「そ、そうね。どう? 何か掴めた?」
「掴めたと言うより……」「全部判明しました」
「なッ……何と!? あの短い時間でか?」「アンタたち、探偵も出来そうね?」

 双子姉妹は服を着ると、カーデリアとプリムラーナ将軍に、これまでの経緯を話した。
「信じられん……まさか、その様に不可思議なコトが……!?」
「……魔王や死霊の王が、『女の子』になっちゃうだなんて、あり得ないわ!?」

「しかし、事実なのです。わたしも姉さまも、この目ではっきりと見ました」
「リーフレアは瀕死の重症だったケドね。でも、その少年に救われたの」
 
 すると、オレンジ色の鎧に黒いマントを纏ったグラーク将軍と、ニャ・ヤーゴ小領主が、報告の行われている『小領主の間』に姿を現す。
「双子の司祭も目覚められたのだな?」「……して、何か成果はあったのであろうか?」

 女性陣一同は、男性二人に内容を伝えた。
「ふむ。かなり奇妙な話ではあるが、司祭の姉妹が言われるのなら、真実であろう」

「どうなされますかな、グラーク公? 早馬にて王都に報告を?」
「いや、待たれよ。プリムラーナ公。事の真相を確かめるのが先では無いか? その少年に直接会って、事情を聞くのが先決だろう?」

「確かに。して、リーセシルにリーフレア。少年の居場所は掴んでいるのか?」
 可憐な仕種で自慢の金髪をかき上げた女将軍は、双子姉妹に問いかける。

「えっと……それが五日前は疲れてて、あんまり舞人くんのことは聞かなかったんですぅ!?」
「……ですが、自らを『因幡 舞人』と名乗っておりました」

 双子の妹の方の言葉に、小領主が反応する。
「因幡 舞人』と申されましたか!? そんな……まさか彼が……?」
「その者をご存知なのですか、ホアキン殿?」

 麗しいプリムラーナ将軍の質問に、小領主は顔を赤らめながら答える。
「え、ええ……。この街の人間からは『ステューピット(=間抜け)』などと呼ばれ、からかわれておりました。戦災孤児で、確か街の外れの教会で養われていたかと……?」

「なる程。なれば、早速教会に……」
「ですが彼は、一ヶ月ほど前から街を離れております」
「……となると、再び舞い戻ったのでしょう」

「どちらにせよ、街外れの教会に行ってみる必要があるな。あわよくば、本人が帰っているやも知れん」
 グラーク・ユハネスバーグの言葉に、皆が賛同した。

「……では、お礼も兼ねて」「わたたち姉妹が……」「ならば、わたしも共に行こう」
 教会へは、双子姉妹とプリムラーナ女将軍がおもむく事となった。

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