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萌え茶道部の文貴くん。第二章・第四話

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大須商店街

 次の日は日曜だった。

 渡辺は、茶道部に入部はしたものの、あまり茶道に詳しそうではない絹絵に声をかけていた。
名古屋のアキバと言われる『大須商店街』に出かけ、抹茶茶碗の一つでも見繕ってやろうと思ったのだ。

「あ、ご主人サマ!」
 絹絵は、大須商店街のシンボルの一つでもある、『巨大な招き猫』の袂で待ってくれていた。
「待たせちゃったね、絹絵ちゃん。橋元のヤツ、急用が入って来れなくなったんだ。ゴメンね」

「べ、別に気にしてないッスよ。橋元先パイも、お忙しい人ッスから」
 絹絵は白いミニスカートに、ベージュと白の横縞シャツ、上に茶色のブレザーを羽織っている。
「絹絵ちゃんの私服、可愛いね」「そ、そうっスか?」絹絵は、紅く頬を染める。

「人間のファッション誌を読んで、いっぱい研究したっス」「に、人間の?」
「あッ……や、その……に、人気の?」「ああ、人気のファッション誌ね。ゴメン、ゴメン」
「きょ、今日はご主人サマもお忙しいのに誘っていただいて、アリアトございますッス!」
 『ご主人サマ』という単語の入った挨拶に、周りから注目が集まった。

 しかし、そこはサブカルの街、大須だけあって一瞬で注目は解ける。
 (やれやれ、大須でよかったよ~。絹絵ちゃんの『ご主人サマ呼ばわり』も、大須じゃそんなに違和感無いもんな? 目の前、メイド喫茶だし)

「ん? どうしたッスか、ご主人サマ?」絹絵が不思議そうに覗きこんできた。
「ああ、何でも無いよ。それより今日は絹絵ちゃんの入部記念に、抹茶茶碗でもプレゼントしようかと思っているんだ」

「……え? ダメッスよ! ご主人サマにお金を使わせるなんて、とんでもないッス!」
「そんなに気をつかわなくていいんだよ。我が茶道部にも、僅かながらだけど活動費も出てるし、抹茶茶碗って言っても骨董品じゃ無ければ、二千円も出せば買えるんだ」
「……でもォ」絹絵はそれからも渋っていたが、渡辺が歩き始めるとそれに従った。

「絹絵ちゃん、大須に来るの始めて?」「はいっス」「名古屋に住んでるのに意外だなぁ?」
「えぇ……えと。アチシの住んでるのは、かなり田舎のほうでして……」
「そうなんだ? それじゃあ今日はオレが、大須商店街をくまなく案内するよ」
「ホントッスか? うれしいッス! ヨロシクお願いしますッス~!」

 絹絵は歩きながらも、ピョンピョん跳び跳ねて喜んでる。
「ふぇ~。大須って、なんだか賑やかな街ッスねえ~?」
 (どうやら抹茶茶碗のことは、頭から外れてくれたようだ)

「大須ってのは東京のアキバと同じで、名古屋のサブカルチャーの中心地なんだ。アニメやゲーム、パソコンの店なんかがいっぱいあって、茶道部の部室に飾ってあるフィギュアも大半はここで買ってる」  (流石に部費では落ちないから実費で……だけど)
「そ、そうなんスか……? でもちょと……人が多すぎや……しないッスかぁ~ッ!」

 大須のアーケードの中、絹絵が押し寄せる人ゴミに消え去ろうとしていた。
「やっべ……絹絵ちゃん! こっちだ、手を伸ばして!」「あう~っス」
 渡辺は、なんとか人ゴミの中から絹絵を引っ張り出した。

「……油断した。休日の大須を舐めてた。普段は平日の学校帰りに、寄ることが多いからな」

 安全圏へと脱出した渡辺が懐を見ると、絹絵が顔を真っ赤にしてうつむいていた。
「……ん? どうしたの、絹絵ちゃ……んん!?」

 冷静になって状況を確認すると、渡辺は絹絵をギュッと抱え込んでいた。
「うわあああぁぁぁぁ! ご、ゴメン! これはその……つまり、え~っと」
「……い、いえッス。助けてくれて、ありがとッス……」

(いかん、いかん! これじゃまるで、デートみたいじゃないかぁ! 見た目が幼いから、あんまし気にして無かったケド、よく考えたら絹絵ちゃんはオレと一つしか違わない!)
 渡辺や橋元は高校二年で、絹絵は一つ年下の一年だった。

 その後……数分間『無言の行進』が続き、『いたたまれない空気』が流れる。
「そ、そうだ、絹絵ちゃん。大須の歴史について知りたくない?」「知りたいっス」
渡辺は大須の歴史や、古い建物を紹介する事に活路を見出した。

「大須はアキバと違って、元々は『大須観音』って神社を中心にした、寺社街から発展した街でさ。大須観音以外にも神社や仏閣が多く集まってる。だから若者以外に、ご高齢の方も大勢来てるんだ」

「ほんとッス! おじいちゃん、おばあちゃんもいっぱい……お寺もいっぱいッス!」
「ここなんか有名な織田 信長の、お父さんである信秀公が開いた由緒正しいお寺なんだ」
「でもなんか……金ピカのビルみたいッスね?」「建物は完全に……ビルだね」

「ところで信長さんって、あの天下を獲った織田信長さんッスよねえ?」
 歴史に興味があるか心配だったが、なんとか食いついてくれた様だ。
「そうだよ。天下を獲る目前で、配下の明智 光秀に討たれて死んじゃったケドね。でも、茶道を世に広めたのも、織田 信長と言ってもいいくらいなんだ」

「え? そうなんスか?」
「信長は『抹茶茶碗』や『茶入れ』『茶釜』なんかの茶道具に、もの凄い価値を持たせたんだ。当時の茶道具なんてモノによっては、国一国より価値があったくらいだからね」

「……く、国より価値が、あったッスか!」
 絹絵は、タレ目を丸くして驚いた。

 

次回・翡翠色の信楽焼き

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