ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

萌え茶道部の文貴くん。第五章・第四話

f:id:eitihinomoto:20190808162902p:plain

大須大茶会

 渡辺は茶道部を、今回の計画に入れていなかった。

 部員も橋元を除くと、絹絵と二人だけだったので、今回は撮る側に徹っするつもりでいた。
それが急遽、双子が入部することになって事情が変る。

「……わたし達も、何かしたい」「考えよう、わたし達で!」
「お二人とも、やる気っスね? 確かにご主人サマに頼りっぱなしは良くないッス!」
 三人の少女たちは大須の街へと駆け出し、情報収集を開始した。

「三人で、だいじょうぶかな?」
 あまり交渉事の得意そうに見えない三人を、渡辺は心配する。

「……チャイナ服少女・復権友の会の屋台が、商品売り切れてたッス!」
「明美ちゃん、屋台、貸してくれるって」「でも、抹茶も抹茶茶碗も無い……」
 けれども少女たちは三人で補い合い、頑張って交渉して来た。

「抹茶ならあるよ、ホラ」渡辺はカメラバックを探って、紫色の巾着を取り出す。
「綺麗な入れ物ッスねえ?」巾着の中身は、小さく艶やかな入れ物だった。
「これ漆器……茶入れだ」「高いのだと、国宝だったりする」「そ、そうなんスか!?」

「……まあ、安いのだけどね。一応は本物の漆塗りではある」 
 渡辺は、茶入れを双子に手渡した。

「あの……抹茶茶碗なら、アチシもこないだ買っていただいた物を持って来てるッス」
「ええ、抹茶茶碗を!? 割れちゃわないか?」  
「だいじょ~ぶッスよぉ♪ アチシのシッ……」「シ?」「シマシマ……ポシェットっす……」

 焦げ茶と茶色の縞のポシェットから、翡翠色の抹茶茶碗を取り出す絹絵。
「……か、可愛い」「これ、どこの焼き物?」「信楽だよ、『タヌキ』で有名な」
 横を見ると、何故か絹絵が脂汗を流している。

「実は今日、大須に来たのには、もう一つの理由があってね」
「理由?」「どんな?」双子は渡辺に、つぶらな四つの瞳を向けた。

「我が『愛理大学付属名京高等学校・茶道部』に伝わる、儀式……ってとこかな?」
「儀式?」「儀式って……どんな?」「ご主人さま……あとはアチシに任せるッス!」
 絹絵は渡辺の意図を察してか、屋台の準備を引き受けてくれる。

 渡辺は双子を、『宣伝用の大きな有田焼の壺』が飾ってある土産物屋に連れていった。
   

 店に入るとおばちゃんが、相変わらずの『遠慮の無い笑顔』で出迎える。
「好きな抹茶茶碗を選ぶといいよ。予算は一人、三千円くらいまで……だけどね」
「渡辺先パイ、そこまで……」「……甘えられない」双子は、渡辺の申し出をためらった。

「言ったろ。これは我が茶道部の伝統儀式だって。遠慮するコト無いよ」
 双子はその後もためらったが、茶道具事態には興味があるらしく、真剣に茶碗を選び始める。

 姉の浅間 楓卯歌は、『志野焼のピンク色の気泡の多く含んだ茶椀』を選んだ。
 妹の浅間 穂埜歌は、『唐津焼の垂れ穂の描かれたグレーの茶碗』を選んだ。

 二人が選んだ抹茶茶碗は、素朴な民芸品であり、珍しいモノでは無かった。
店には同じ抹茶茶碗は、一客かあっても二客しか置いてなかったので、必然的に違う物を選ばざるを得ないのだが、双子の好みはかなり違っている。

「ありがと渡辺!」「フウ……渡辺先パイでしょ!」「あッ……渡辺先パイ……」
 性格も、姉の楓卯歌は、実は以外におっとりした性格で、少し天然が入っている。
対して妹の穂埜歌はしっかり者で、姉をよくたしなめていた。

「んじゃ後は自由に使っていいアル♪」「ありがとッス!」
 抹茶茶碗を手にした双子を連れて戻ると、絹絵が一条さんから屋台を受け渡されていた。

「ウチは人気店で商品が売り切れたアル~。橋元の奴にも見せてやりたかったアル」
「カメラで撮ってるから大丈夫。明日にでも橋元に、見せてやるからさ」

「おお。戻ったか、渡辺。じゃが、屋台をやっていては撮影など出来んじゃろうて?」
「はい……鯰尾さん。じゃあ、カメラ頼めますか?」「任せるのじゃ!」
渡辺は、ビデオカメラを、電気ウナギ発電・エコの会の部長に手渡した。

 茶道部の屋台は、抹茶を振舞うとあって、直ぐに大勢の人だかりが出来た。
「……最初は、どれだけお客さんが来てくれるか心配だったけど、これじゃ茶入れに入っている量じゃ全然足りないな。オレ、ひとっ走り行って来る!」

「アチシもお供するッス!」渡辺と絹絵は、大須のお茶屋に向った。
「あ、いい香りがするッス! ありゃ……なんスか? あのクルクル回ってるヤツ?」
「あの機械でお茶の葉を煎ってるのさ。今どき珍しくなったけど、昔はウチの近所でも見かけたよ」

 渡辺と絹絵は抹茶を多めに買うと、急いで双子の居る屋台に戻った。
 屋台は、先ほどまでは居なかった、中国だのヨーロッパだのの外国人客に囲まれていた。
「うわ! どうするッスか、アチシ英語も中国語も喋れないッスよ~!?」

「英語のお客さんは、楓卯歌ちゃんたちとメイド流剣道部の五人が、対応してくれてるみたいだ。中国語は、一条さん達チャイナ服少女・復権友の会が手伝ってくれてる!」

「みなさん、凄いッスねえ?」
「よし、オレたちも接客だ。オレの英語力でも……少しは……」
「アチシも、一条さんたちに中国語を教えてもらうッス!」

 その日は、抹茶の袋が三つも空になる盛況ぶりだった。
とくに外国人にとって『日本の抹茶』は珍しく、実際に目の前で点てた抹茶をその場で飲めるとあって、人気を得る。

 夜の帳が降りる頃には、オワコン部の誰もが身も心もヘトヘトになっていたが、各自が率先して屋台から出たゴミの後始末をしたり、屋台の後片付けを行った。

「今日はみんな、有難う。手伝ってくれて、ホントに助かったよ」

「それはこちらの台詞じゃな。今日の段取りも、根回しも、お主がやってくれたのじゃ……」
「鯰尾先パイの言う通り、助かってるのは、わたし達の方アル♪ 最近、ウチも人気急上昇アル♪」
「渡辺のお陰ガオ♪ 子供たちにもいっぱい喜ばれたガオ!」

「……そっか。でも、やっぱオレも、みんなに『有難う』だッ!」
 渡辺は心の底から、オワコン棟に集った、キワモノ部を潰したくないと思った。