ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第七話

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二匹の獣

「なっ、一体どうなっているんだ! 千乃先輩が……どうして!?」
 千乃 美夜美だと思って追い駆けた少女が、経営コンサルタントの千乃 玉忌に成り代わって、困惑する渡辺。

「話は後ッス! ご主人サマは、会場に戻って大茶会の続きをお願いするッス!」
「絹絵ちゃん? キミは一体……?」絹絵は、質問には答えなかった。

「……アチシは、あの女と決着を付けるッス。茶道部を、お任せするッス!!」
 渡辺は、今起きている状況は理解出来なかったが、『絹絵の決意』は理解出来た。

「無理をしちゃダメだよ、絹絵ちゃん! 危なくなったら逃げるんだ!!」
 渡辺はそう言うと、体育館の中に走る。

「やっぱ、ご主人サマは優しいッスねえ。アチシ、絶対負けないッス!」
 絹絵は、妖女と戦う覚悟を決めた。

 絹絵の目の前の女は、妖艶な笑みを浮かべると、切れ長の目が狐の様に吊り上がった。
「ククク……狸の小娘風情が出てきて、ナニをするつもりかえ?」
千乃 玉忌は、ケラケラと笑った。

「決まってるッス! 性根の曲がったキツネの悪戯を止めるんスよッ!!」
 絹絵は頭に丸い耳を生やし、いつも腰に巻いていたポシェットがシマシマのシッポとなる。
「お前こそ人間に化けて、何をしてるっすかッ!?」

 女は、面倒そうな仕草で、ため息を付く。
「狸などは精々、茶釜にでも化けておれば良いのじゃ? 妾は人となり、人の世の理を理解して、人の世の規則(ルール)を利用する……お前のような稚児には到底理解出来ぬじゃろう?」

「何を……言ってるッス?」
 女が言う通り、絹絵には理解が及ばない。

「つまりは『人』となって、人の世を支配してやろうと言っておるのじゃよ? お前たち狸の頭でも、理解出来る言葉で言うとのォ」
 女は妖気を纏い、上空へと舞い上がる。

 絹絵は両腕の指から、それなりに鋭そうな爪を出した。
「そんなコトさせないッス! おとなしく、お山に帰るッス!」

「あの様な退屈な場所に、何の価値も無いわ。人間に開発され、消え行く場所などにのォ」
 千乃 玉忌は、周りに幾つもの『火の玉』を出現させる。

「狐火ッスか? 厄介ッスね……」
 絹絵は、頬の汗を拭った。

 その後、二匹の獣が街の上空で、壮絶な戦いを繰り広げる。

 渡辺は、絹絵のコトが気になっていた。
体育館に戻って、双子と共に抹茶を点て始めたものの、やはり絹絵のコトが頭から離れない。

(あの千乃 玉忌って女、一体何者なんだ? ……現実的に考えて……いや、もう現実的なんて言葉に意味が無い。先輩の姿に化けていた時点で……)

 浅間 楓卯歌と穂埜歌は、渡辺の様子ががいつもと違うことに気付いていた。
「コラ、渡辺先パイ! ナニ、この抹茶。全然気持ちが籠もってな~い!!」
「作り直し! こんなのお客様に、お出し出来ないよ!」

 双子の叱咤に、渡辺は我に返った。
「ゴ……ゴメン! つい考え事をしていて……」
「絹絵もいなくなるしィ!」「他の部は頑張ってんのに、やる気あんの!」

「絹絵ちゃんは今、大事な用事があって出てもらってるんだ……」
 咄嗟に嘘を付いた渡辺だったが、絹絵の言葉を自分に言い聞かせた。
(絹絵ちゃんは、茶道部を任せる……って言ったんだ。何としても大茶会を成功させなきゃ!)

「さあさ、いよいよ後半戦の開幕だぁ!」
 橋元生徒会長と、醍醐寺副会長が再び舞台に躍り出る。
「抹茶も茶菓子も、新しいモノを用意しました」「今から配るから、しっかり味わってくれ!」

 前半同様、『水鉄砲サバゲ部』と『未知との遭遇部』が配膳を行った。
ただし、水着は蛍光塗料で光っていたし、宇宙人触角もまだほんのり光っている。

「元気いっぱい『恐竜なりきる部』の登場だぁ~!!」
 壇上に『恐竜では無い古生物』をモチーフにした帽子を被った、五人の少女が上がった。

 

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