ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第5章・3話

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二人の少女騎士

 シャロリューク・シュタインベルグは、可憐なる女将軍・プリムラーナ・シャトレーゼによって遣わされた二人の少女騎士と共に、王都に向け馬を走らせる。

「シャロリューク様……カーデリア様を置いて来てしまって、よろしかったのでしょうか?」
 少女騎士の一人が言った。
小柄だが、真っ白な肌にインディゴブルーの短い髪、切れ長の目にラベンダー色の瞳を湛えた少女だ。

「アイツがいると、ガミガミうるさくてな。気ままに旅も……と、思ったんだが」
 赤毛の英雄は乾いた空を見上げ、ため息を付いた。

「……まさか、王都への使者が『二人とも女』だったとはな。こんなのがカーデリアにバレたら、血の雨が降るぞ……」

「恐れながら、我らが女であるコトなど、気にする必要はございません」
 インディゴブルーの髪の、少女騎士が言った。
「わたしは、プリムラーナ様にお遣えする『アーメリア・ジーレティス』……ただ、それだけです」

「オレは気にしなくても、気にする奴がいんだよ!」
「……はあ、そうなのですか?」「ヤレヤレ……」
 アーメリアの生真面目さに呆れる、赤毛の英雄。

 一行は王都までの旅の行程で、最大の難所とされる『イティ・ゴーダ砂漠』に差し掛かった。
「こっから先は、今までみてーに街もねえからな。でっかいサソリやら、ワームやらがウジャウジャ生息する死の砂漠だ。覚悟は良いかい? 引き返すなら、今のうちだぜ?」

「問題ありません、シャロリューク様。我らに気遣い無く、お進み下さい!」
 気丈に言い放つ、アーメリア・ジーレティス

「そうは言ってもなあ……ン!?」
 シャロリュークが懸念する間もなく、熱砂の砂漠を住処とする巨大なサソリが、群れを成して襲いかかって来た。

「ヤレヤレ、言わんこっちゃねえ……」
 英雄は、背中の大剣に手をかける。
すると、もう一人の少女騎士が、ワームの群れの前に立ちはだかった。

「ボクは、『ジャーンティ・ナーラシャ』だよ! まずはボクが戦るから見てて!」
 同じく小柄だが、褐色の肌にアッシュピンクの短い髪、モスグリーンの瞳の少女が、巨大サソリの大群に向って突進して行った。

 無防備に迫る少女に向って、巨大サソリの毒針が次々に突き刺さる。
「おわッ!? いきなりマズくねえか?」

「心配には及びません、シャロリューク様。ジャーンティの剣は、彼女の体に毒耐性を与えております」
 アーメリアは、もう一人の少女騎士のピンチにも、動じなかった。

「残念だケド、ボクに毒は利かないよ。今度はボクのターンだ。『アマゾ・ゼッツァ』!!」
 褐色の肌の少女は野生的に飛び回りながら、ドリル状の剣を次々にサソリへと突き刺す。

「決めるね!!」
 ジャーンティの掛け声と同時に、魔物は内部から煮えたぎった臓物を撒き散らしながら破裂する。

「……こりゃまた、凄まじい戦い方をするねえ。いとも簡単にサソリの装甲を貫いたかと思えば、内部に膨大な熱を送り込んで崩壊させちまうたぁな」
 シャロリュークは肩を竦め、苦笑いを浮かべた。

 すると今度は、ジャイアント・サンドワームが群れを成して現れ、流砂を起こして一行を自分たちの『巣』へと押し流しにかかる。

「次は、わたしが出ましょう」
 アーメリアが、腰に刺した剣に手をかけながら言った。
「お前も、アイツくらいには強いのか?」

「見ていれば、すぐに解ります!」 
砂丘を滑り降りながら、アーメリアは呪文の詠唱を開始する。

「芳醇なるワインの如く赤き剣……『アムリ・ソーマ』よ! 汝が敵を滅せよ!」
 アーメリアの持つ『赤き細身の剣身の刀』の周囲に、無数の『赤い光球』が出現し、彼女が剣を振ると敵に向って放たれた。

「溶け落ちよ!!!」
 アーメリアが叫ぶと、赤い光球がワームに命中する。
光球が炸裂し赤い液体がまき散らされると、巨大ミミズは次々に溶解した。

「やるなあ? 強烈な酸によってあれだけのワームを、溶かし尽くすとはね」
 シャロリュークは、感心する。

「これで我らの実力が、お解かりいただけましたか?」
「ボクたちに、気遣いなど不要だってコトがね!」
 銀色の鎧に蒼いマントを翻した二人の少女は、赤毛の英雄をその実力で納得させる。

「お前たちが強いのはわかったよ。んじゃま、改めて王都までヨロシクな。『アーメリア・ジーレティス』に『ジャーンティ・ナーラシャ』!」

「あうっ!」「うぐう!」
 二人は、一度名乗っただけのフルネームで呼ばれ、顔を赤らめる。

「ヤレヤレ、どーなんだ?」
 シャロリュークは、再び肩を竦めた。

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