ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第09章・17話

非道なる尋問(じんもん)

「なにを聞いたって、ムダだよ。わたしは、目覚めたばかりなんだ。この世界について、知ってるコトと言ったらたかが知れてるからね」

 宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアの取調室にて、息巻くコリー・アンダーソン中佐。
彼女はクローンであり、オリジナルは冥王星圏の探索の果てに亡くなっている。

「それは、解っております。ですが貴女は、マーズと直接合っていらっしゃいますね?」
 モニター越しに詰問する、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ。
コリー・アンダーソン中佐は後ろ手に縛られており、取調室には他に誰も居なかった。

「クーリア。彼女を1人にして、大丈夫か。もし、自殺でも図られたら……」
 艦の艦橋で、取調室の様子を伺うボクたち。

「心配には及びませんよ、宇宙斗。彼女の、コミュニケーションリングをご覧ください」
「中佐の……コミュニケーションリングを?」
 クーリアに言われ、中佐の細い首に巻かれたコミュニケーションリングを見た。

 コミュニケーションリングとは、21世紀のスマホのような汎用デバイスだ。
千年後の宇宙に置いて、出会って来たほぼ全ての人たちが首に巻いている。
首筋の神経節から人の意志を読み取り、脳から直接デバイスを扱うコトが出来る仕組みだ。

「なにか、接続されているみたいだケド、アレは?」
「モチロン、自殺を防ぐためのモノですわ。いざとなれば、コリー・アンダーソン中佐の身体は、こちらでコントロールできます」

「ン……だとすれば、中佐の身体を完全に操って、マーズの情報を聞き出せたりはしないのか?」
 興味本意で、質問する。

「彼女の尊厳を無視すれば、可能です」
「そ、そうなのか……」
「コリー・アンダーソン中佐を1旦眠らせ、脳に直接問いかければ答えるでしょう」

 クーリアが目配せをすると、オペレーターのアンリエッタ、アデリンダ、 フーベルタが機器を操作し、取調室に捕らわれの女性を眠らせた。

「コリー・アンダーソン中佐、安定したレム睡眠に突入」
「捕虜の脳の判断力を、鈍らせました」
「これで、いかなる質問にも答えるかと」

「こ、これで……良かったのか?」
 クーリアの即決と、3人の冷静な対応に、ボクは少しの恐怖を感じる。

「わたくしが火星で犯した罪に比べれば、これくらいはワケもありません。そうでしょ?」
「あ、ああ……イヤ、キミの罪をどうこう言うつもりは……」

「まずは、貴女の名前と素性を伺いましょう」
 ボクの言い訳を遮(さえぎ)るように、詰問(きつもん)を開始するクーリア。

「コリー・アンダーソンだ。オリジナルではなく、セドナを拠点とする太陽系外縁部副局長であるコリー・アンダーソン中佐の、唯一のクローン体。階級は中佐。マーズによって、ディー・コンセンテス(12神)のプロセルピナの地位に任命された」

「思ったよりも、スラスラと答えるな。眠っているようには、見えない」
「彼女としては、眠っているとは思っておりませんから、当然です」
 クーリアは、キッパリと言って退けた。

「次の質問です。土星圏に派兵された、マーズ艦隊の規模を答えて下さい」
「レムス率いる主力艦隊がおよそ3万8000隻。バルザック・アイン大佐率いる別動艦隊が、3個艦隊で計1万4000隻」

「艦体の搭載する、サブスタンサーやアーキテクターの数は?」
「別動艦隊の搭載するサブスタンサーは、2万7000機。アーキテクターは、17万ほどだ」

「主力艦隊の、サブスタンサーやアーキテクターの数は?」
「判らない。聞かされていない」

「どうやら、レムスの主力艦隊については、本当に知らないみたいだな」
「ええ。別動艦隊の情報に比べ、表現が曖昧です」
「主力艦隊の情報は、当てにならないってコトか」

「質問を、別動艦隊に絞りましょう。3個艦隊の内、バルザック大佐以外の2個艦隊の司令官は、誰なのです?」
「ステュクス少佐だ。彼女が部下と、運用している」

 コリー・アンダーソン中佐が、新たな名前を出した。

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