女VS女の戦い
上半身のみとなったペルセ・フォネーは、長い紫色の髪で自身とゼーレシオンを締め付ける。
「女の髪に巻き付かれて、死ぬのも悪くは無いだろう。このままアタシと共に、宇宙の藻屑(もくず)となっちまいな!」
コリー・アンダーソンの声が、密着するゼーレシオンに届いた。
「こんなところで、死ぬ気はないさ。それにキミだって、こんなところで死ぬべき女性じゃない!」
ボクは、ゼーレシオンの本体と共に、紫色の髪が巻き付いていたシールドを展開する。
「ブリューナグ……」
本来であれば巨大なエネルギー球を生成するシールドだったが、あえて最低限の出力でエネルギーキューブを繋ぎ止める光の鎖だけを生み出す。
「なにをする気だい?」
「実に、簡単なコトさ」
バチバチとスパークする光の鎖が、宇宙に放り出された全てを斬り裂く剣を確保した。
「フラガラッハ!!」
長く伸びた光の鎖が収縮し、フラガラッハがもの凄いスピードで接近して来る。
ゼーレシオンとペルセ・フォネーを無理やり抱擁(ほうよう)させていた、紫色の髪を斬り裂いた。
「クッ……女の髪を、斬り裂いた代償は高いよ!」
「覚悟はして置くよ……」
ボクはゼーレシオンで接近すると、ペルセ・フォネーの残った左右の手を斬り落とす。
頭と胸部のみとなった女性型のサブスタンサーを鹵獲(ろかく)し、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアへと帰還した。
「敵の女エースを生け捕りにするなんざ、今や完全にベテラン兵だな」
「ホント、大したモノだね」
格納庫に入りゼーレシオンから降りていると、プリズナーと美宇宙が声をかけて来る。
「ゼーレシオンの、性能に助けられただけさ。力量じゃ、彼女のが上だよ」
ボクの視線の先には、両手を上げ拘束される、コリー・アンダーソン中佐の姿があった。
「宇宙斗艦長。よくぞご無事で、ご帰還下さいました」
格納庫に、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダが姿を現わす。
「クーリア、敵の追撃は大丈夫か?」
「はい。高速艦で無ければ、このクーヴァルヴァリアに追いつけるモノではありません」
「そうか。一先(ひとま)ずは、安心だな」
ボクはクーリアの細い腰を抱き、キスをした。
「ヒュー。敵の女エースのみならず、カルデシア財団のご令嬢まで堕としてやがったとはな」
「まったく、どうして男ってのはみんな、エッチなんだろ」
冷やかすプリズナーと、膨れっ面の美宇宙。
「へェ。アンタが、火星のアクロポリスの街を火の海に沈めた、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダかい?」
シルヴィアさんとカミラさんに連行される、コリー・アンダーソン中佐が、通り過ぎざまに言った。
「……それが、どうかしたのですか?」
「イヤ。アンタの顔は、コミュニケーションリングの仮想情報で知った程度だったんでね。大量虐殺者(ジェノサイダー)の顔を、実際に拝んで見たかっただけさ」
「お前は、捕虜だ」「私語は、慎(つつし)め!」
「わかってるよ、可愛い衛兵さん」
コリー・アンダーソン中佐は、2人の少女によって背中に銃口を突き付けられる。
「でも……これくらいは、イイだろ?」
突然コリーは、ボクに近づき口づけをした。
「……!?」
意表を突かれ、ボクは固まってしまう。
「オ、オイ、キサマ!?」「な、なんと言う、コトを!」
「アハハ。冗談だよ、初心(うぶ)な娘たちだね」
銃口を背にしながらも、コリー・アンダーソンは笑いながら連行されて行った。
「クーリア。彼女は仮にも、12神(ディー・コンセンテス)の1人に任命された女性だ」
「解っております。捕虜として、丁重に扱いましょう」
言葉とは裏腹に、不機嫌そうなクーリア。
ここで言い訳をするのも、藪蛇(やぶへび)だと学んだ。
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