ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP008

ある優等生2人の戦略(タクティクス)2

 催事場やビジネス用途で使われるビルの前に、『中部企業・国際フォーラム』と、銘打たれた白い立てかけ看板が立てられていた。
ビル周辺の道路や公園には、多くの人だかりが出来ている。

「ここが、会場のビルだな」
 白い肌に、黒い髪の優等生が言った。
彼は真新しい、グレーのビジネススーツを整然と纏(まと)い、空色のネクタイを締めている。

「ええ。まだ就職戦線の始まる前だと言うのに、かなりの賑(にぎ)わいですね」
 赤茶色の髪の、優等生が頷(うなず)いた。
彼は茶色のスーツに、薄紫色のネクタイをしている。

「フォーラムの目的は、企業と学生の顔合わせと言ったところか?」
「そうですね、雪峰キャプテン」

「柴芭……キャプテンと言うのは、ココでは止めてくれないか」
 黒い髪の優等生は、困惑した表情を見せた。

「おっと、失礼を。では、雪峰くんと呼びますよ」
「何だか聞き慣れない響きだが……まあ、仕方あるまい」

「では、中に入りましょう。雪峰くん」
「あ、ああ。そうだな」
 2人は、バブル時代の最先端なデザインの、ビルへと入って行く。

「今回のフォーラムでは、名古屋を中心とした30社以上の企業がブースを出しています。まずは、各ブースを周ってみましょう」
「視察というワケだな。了解だ、柴芭」

 ビルの1階の2つのフロアと、2階の1部が展示場となっていて、各企業がそれぞれ趣向を凝らした展示をしていた。
2人の優等生は、それをくまなく見て回る。

「すみません。このミシンは、どう言った特徴を持っているのでしょうか?」
 赤茶色の髪の優等生が、コンパニオンの女性に聞いていた。

「はい。こちらの製品は業務用のミシンで、電子制御も可能となっております。様々なパターンを、自動で刺繍する機能も備わっているのですよ」

「おお、それは凄いですね。実はボクたちは、サッカークラブの運営に携(たずさ)わっておりまして。例えばこちらの製品で、ユニホームやソックスに背番号やネームを入れるコトは可能でしょうか?」

「もちろん、可能となっております。弊社の製品は、スポーツ用品店にも実績がございまして……宜しければ、こちらのパンフレットをお持ち下さい」
「有難うございます。これは、ウチのサッカークラブの名刺なのですが」

 名刺交換をする、赤茶色の髪の優等生。
黒髪の優等生は、それを横目に見ていた。

「慣れたモノだな、柴芭。よく平気で、声を掛けられるな」
「それ程でも、ありませんよ。ボクは、占い師であり奇術師ですからね。客の心をつかむ術(すべ)は、心得ているつもりです」

「一馬ホドでは無いにしろ、オレも人見知りなところがある。中々、話しかけ辛いモノだな」
「慣れだと、思いますよ。まずは、興味のあるところから……あのブースなんて、どうです?」
 とあるブースを指さす、赤茶色の髪の優等生。

「アレは、半導体露光装置か!」
 黒い髪の優等生は、人ゴミの中を掻き分け1直線にブースへと向かう。

「あの、すみません。この装置は、半導体露光装置でしょうか?」
「ええ、そうですよ。お兄さんもしかして、パソコンとか興味ある?」
 作業着姿の気さくなオジサンが、優等生に聞き返した。

「はい。何台か、自作をしたコトがあります」
「ソイツは、スゴい。実はボクも、そんな感じで入社した口でね」
「この装置は、オランダのメーカーの様な半導体を、焼けるのでしょうか?」

「いやあ、アソコと比べられるとね。でもコイツは、セールスバリューに特化した露光装置なんだ。オランダみたいな高度なモノは無理でも、既存の半導体を組み合わせたモノを、1つの台に乗せて焼くコトが出来るんだよ」

「それぞれの機能に特化したチップを、1つの台に詰め込む感じですか?」
「そう、合ってるよ。もっともチップの規格は、ウチ独自なんだケドね」

「異なった製造プロセスのチップを、1つの台に入れられるってコトでしょうか?」
「ああ、その通りだよ。だからこそ、安価に抑えるコトが……」

 難解な言葉が飛び交う会話を、横目に聞く赤茶色の髪の優等生。

「雪峰くん。よくあんな専門的な用語が、理解できますね」
「そうか? 別に、初歩的な用語だと思うんだが」

 今度は、赤茶色の髪の優等生が呆れていた。

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