ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第10章・EP007

ある優等生2人の戦略(タクティクス)1

 かつては印刷会社の入っていたビルの、3階にあるデッドエンド・ボーイズのオフィス。
黒髪の優等生と赤茶色の髪の優等生が、机を挟んで向かい合ったソファに座っていた。

「先日の試合、オレたちは2ー14と言うサッカーでは考えられない点差の敗北を喫(きっ)してしまった。キャプテンとして、大いに反省している」

「雪峰キャプテン。誰も謝罪をしろとは、言ってませんが……まずは、現状把握ですか?」
「そうだ。練習試合では勝って来たし、地域リーグであれば行けるのかとも思ったが、考えが甘かった」

「同感です。やはり、日高グループがプロデュースする3チームの参戦が、大き過ぎますね」
 赤茶色の髪の優等生は、机のノートパソコンの隣に、タロットカードを並べ始める。

「どのクラブも、地域リーグの2部では考えられない質(クオリティ)の選手を、揃えているからな。それに引きかえ、ウチなどはフィールドプレーヤー全員が、高校1年の学生だ。練習時間も、限られる」

「学業とサッカーの両立は、大変ですからねェ。キャプテンの親御さんは、納得されているのですか?」
「理詰めで、納得させたさ」
「どんな論理を、使ったのです?」

「アメリカでは、高校や大学時代にベンチャー企業を立ち上げ、起業家として成功する人間も多い。サッカーチームの立ち上げから運営に携(たずさ)われるコトは、貴重な経験になる。それに日本の大学であれば、オレなら入れるだろ……と言っただけだ」

「日本トップの大学に、サッカーをしながら入学できると?」
「ああ。恐らく、問題は無いだろう」

「雪峰キャプテンの自信も、スゴいですがね。納得してしまう、親御さんも凄まじいモノですよ」
 呆れ果てる、もう1人の優等生。

「柴芭は、どうなんだ?」
「ウチの親は、放任主義でしてね。ボクが占いで身銭を稼いでいるのは、知っていますし」
「けっこう、信頼されているんだな」

「どうでしょうか。ですがデッドエンド・ボーイズのメンバー全員が、親御さんたちを納得させれるかと言えば、恐らくはムリでしょう」
「常時戦える、二十歳を超える選手の獲得を、視野に入れるべきだな」

 黒髪の、優等生が言った。
机に置いたノートパソコンの数字やグラフが、細いフレームの眼鏡レンズに映っている。

「倉崎さんは、亡くなった弟さんのノートに載っている、選手たちで戦いたち様ですが……」
「現実を考えると、厳しいだろうな。だが倉崎さんに提案するにしても、今のウチにそんな予算は無い」

「けっきょくのところ、スポンサー集めが急務なワケですか」
「ああ。倉崎さんが、海外移籍するかは置いておくとして、将来的に1人の選手のサラリーに頼るクラブ運営は、上手くは行かないだろう」

「正論ですが……スポンサー集めは、流石に順調とは言えませんよ」
「解っている。オレにも柴芭にも、ビジネス経験など無い。会社経営も、マーケティングも、初心者なのだからな。だからこそ、面白いのだがな……」

 尚もノートパソコンのデータに集中する、黒髪の優等生。
赤茶色の髪の優等生は、クスリと微笑みながら机のカードを引く。

「さて、雪峰キャプテン。我々は倉崎さんから、デッドエンド・ボーイズの参謀役を任されました。貴方の戦略(タクティクス)を、お聞きしましょう」

「まずは、広報活動だろう。ホームページの強化や、クラブとして地域イベントに選手を参加させる。一馬や黒浪には、もう1度チラシ配りを尽力してもらう」

「デッドエンド・ボーイズは、まだ活動を始めたばかりだ。スポンサー以前に、サポーターの数も限りなく少ない。地道な戦略も、継続的に続ける必要がある」

「小さなコトから、コツコツと……と言うワケですか?」
 赤茶色の髪の優等生の手には、教皇のカードが正位置で握られていた。

「柴芭には何か、戦略はあるのか?」
 手を止める、黒髪の優等生。

「ええ、有りますよ。サーフェス・サーフィンズの佐藤さんからの提案なんですがね。次の土曜日に、名古屋を始めとした中部の企業のコンベンションが開催されるそうです」

「サッカークラブとして、企業のコンベンションに参加するワケじゃないんだろう?」
「ええ。我々が名刺を持って、コンベンションに乗り込むんですよ」

「土曜日までに、スーツを用意する必要があるな……」
 黒髪の優等生は、ため息を吐いた。

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