ミーティングと弱点
フルミネスパーダMIEとの戦力差に、圧倒されていたデッドエンド・ボーイズのメンバー。
「サッカーってのは、勝たなきゃ面白くないスポーツだ。例え、相手がどれだけ強くてもな」
落ち込んでいたボクたちを前に、倉崎さんが言った。
「そりゃ、そうッスけど……」
「勝ちに行くとして、具体的な方法があるんですか?」
紅華さんと雪峰さんが、反論する。
「オレが言ってしまってもイイんだが、出来れば自分たちで考えて欲しい」
「……自分たちで?」
「そうだ、雪峰。フルミネスパーダMIEは、勝つコトが出来ない無敵のチームか?」
倉崎さんは、メンバー全員に対して問いかけた。
「言いたいコトは、解るッスけどね。フルミネスパーダMIEとウチじゃ、10回……イヤ、20回戦って、1回勝てるかどうかですよ」
「その通りだ、紅華。つまり、20回に1回は勝てるコトになる」
「20回に、1回ッスよ?」
「ソシャゲのガチャに比べれば、高い確立だろ?」
「そ、そっか。そうだよな。オレさま無課金勢だケド、ソシャゲのガチャまあまあ当たるモンな」
「せやな。ソシャゲのガチャだと、100連して3~5パーセントってところや……ン?」
「5パーセントなら、同じじゃねェか?」
黒浪さん、金刺さん、紅華さんが、冷静に確立を分析する。
「と、とにかくだ。ソシャゲのガチャだって、当たるときは当たる。MIEにだって、勝てるときは勝てるんだ」
「でもよ。ソシャゲのガチャと、比べるのもどうかと思うぜ」
「サッカーの試合と、違う気するモンな」
「試合前ならともかく、ウチら2点差で負けてるんやで」
「そ、それはだな……」
困った顔の、倉崎オーナー。
「紅華くん、黒浪くん、金刺くん。倉崎さんは、20回に1回の勝ち試合を、どうやって今日に持って来れるかを考えろと、言っているのですよ」
柴芭さんが、完璧なフォローを入れた。
「そ、その通りだ。MIEは、弱点の無い無敵のチームか?」
言い訳する間を与えない、倉崎さん。
「無敵って言われたら、違いますケドね」
「え、そうなの? オレさま、無敵かと思ってた」
「世界にはもっとえげつないチームが、ようさんあるやろ」
やっと倉崎さんの言葉に納得する、3人のドリブラーたち。
「サッカーの世界には、ブラジルやアルゼンチン、フランスやイングランドのようなサッカー強豪国の代表チームが、たくさんありますからね」
雪峰キャプテンが、言った。
「他にも、イングランドやドイツ、スペインなどのリーグには、大金をつぎ込んで世界中から選手を獲得する、ビッグクラブだってかなりの数が存在します」
「雪峰や、柴芭の言う通りだ。フルミネスパーダMIEは、確かにバランスの取れた優れたチームであるコトは、間違いない。だが、世界から見れば、決して最強のチームじゃ無いんだ」
熱弁を振るう、倉崎さん。
「そっかァ。世界って、スゲェんだな」
ポカンと口を開け、感心する黒浪さん。
「そりゃオレだって、MIEが世界の強豪国や、ビッグクラブより強いとは思いませんがね。でも……」
「紅華。言いワケなら、負けた後だって出来る」
「なんだよ雪峰、なにが言いたい?」
少し、険悪な雰囲気になる、雪峰さんと紅華さん。
「倉崎さんは、MIEにどうやったら勝てるかを、考えろと言っているんだ」
「ど、どうやったらって……それが解れば苦労は……」
「解れば、勝てる確率が上がる。紅華、MIEに弱点は存在しないと思うか?」
倉崎さんが、ピンク色の髪のドリブラーに、問いかけた。
「そ、そうッスね。カイザの率いるバックラインは完璧だし、キーパーも鉄壁の守護神が居る。オレやクロが、何度かチャンスは作ったけど……」
「何度か、チャンスは作れてる。どんなときが、チャンスになった?」
「相手の右サイドバックが上がって、オレが背後を突いたときと、あとはクロがスピードを行かして、相手の左サイドバックの裏をブッ千切ったときッスね」
「せやで。相手の右からのコーナー、ショートコーナーにするとき多いと思うで」
「ショートコーナーに絡んで、右サイドバックが上がってやがったから、オレが裏抜け出来たんだ」
「オレさまも、相手の左のサイドバックが上がったままだかんな。裏抜けすんの、苦労してないぜ」
黒浪さんが、言った。
デッドエンド・ボーイズのメンバーは、それからも意見を出し合い、MIEの弱点を分析する。
なにも喋れない、ボクを除いて……。
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