ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・74話

地下闘技場の激戦

「それにしたって、アレがこの国最強の大将軍サマかよ。もっとゴツい、髭(ひげ)モジャのオッサンかと思ったが、ずいぶんと若えじゃねェか」
 観覧席から身を乗り出しながら、ティンギスが言った。

「どうした、お前たち?」
「いつもみたいな、解説は始めないのか?」
 レプティスとタプソスが、冗談交じりに12人の少女たちの顔を見る。

「残念だが我々は今まで、大将軍サマのお姿を見たコトは無かったのだ」
「大将軍サマは普段、次元迷宮の置く深くにて、ミノ・リス王をお護りされている」
「姿を見せられるのは、戦争の時に限ってなのだ」

 スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの、3人の少女たちが言った。

「ずっと、地下暮らしってか。お天道サマの光も、届かないだろうによォ」
 闘技場中央の鏡に目を移す、ティンギス。

 鏡からは音や声は聞こえて来なかったが、サタナトス1向とミノ・ダウルス大将軍との戦闘の様子は、引き続き映し出されていた。

「ヤレヤレ、やっと来てくれたか。それにしたって、ボロボロじゃァないか」
 ケイダンこと魔王ケイオス・ブラッドに助けられたサタナトスが、血だらけの盟友を皮肉る。

「情けない話だが、ミノ・テリオス将軍と言う男は、中々に骨のある男でな。少々、手こずった」
「手こずった……ねえ。それで、ちゃんと仕留めたのだろうね?」

「イヤ、まだだ。いずれ決着は付ける」
 ケイオス・ブラッドは、サタナトスを床に放り投げると、大将軍の方へと歩みを進めた。

「新手か? 我が配下と、1戦交えたようだな」
 光り輝く金色の髪の男は、落ち着いた口ぶりで問いかける。

「ああ。今度はお前と、戦ってやる」
 魔王は、錆びた青銅色の石のような剣を振り上げた。
すると地下闘技場の天井に届くくらいの、次元の裂け目が現れる。

「なるホド、キサマも次元を操るか」
 ミノ・ダウルス大将軍は、大戦斧を刃を下にして置き、柄を握ってジッと身構えた。

「どうした。避けんと次元に飲み込まれるぞ?」
 攻撃したケイオス・ブラッドが、訝(いぶか)しむ。

「ハッ!!!」
 大将軍の美しくも勇壮な声が、地下闘技場に響き渡った。
大戦斧(アステリオス)を中心に、同心円状に衝撃波が駆け巡る。

「な、なんだとッ!?」
「次元の裂け目が、消滅した……?」

 戦いの経過を見守っていた、ティ・ゼーウスとダエィ・ダルスも、衝撃波に堪(こら)えながら目を丸くする。

「こうも簡単に、次元の裂け目を防ぐなんて、赤毛の英雄ですら成せなかった業(わざ)だよ」
 サタナトスも、呆れながら感心していた。

「なるホド、大将軍を名乗るだけはあるな。だがこの地下闘技場は、外とは違い次元が入り組んではいない。オレの攻撃に、どこまで絶えられる?」
 魔王は、再び刻影剣・バクウ・プラナティスを振りかざし、次元の裂け目を造る。

「何度やっても、無駄だ」
「ソイツはどうかな。裂け目は何も、1つじゃ無いぜ」
 ケイオス・ブラッドは、錆びた青銅色の石のような剣で、次元の裂け目を無数に生み出した。

「次元の中に、自ら隠れたか。だがそんな攻撃は、このミノ・ダウルスには通じん!」
 再び衝撃波を飛ばす、大将軍。
時空の裂け目が、次々に消滅して行く。

「オイオイ。力任せにも、ホドがあるぜ」
「違うな、ティ・ゼーウスよ。アレは、微細な衝撃波だ。大戦斧である1定の波動を発生させ、魔王の剣が生み出した時空の裂け目を不安定にし、消滅させているのだ」

「高説、どうも。大建築家」
「だが魔王(ヤツ)はまだ、次元の向こうに潜んだままだ。いつ、姿を現すかも解らん」
 ダエィ・ダルスが、言った。

 地下闘技場の中央では、大将軍ミノ・ダウルスが、目を閉じ戦斧の柄に手を置いたまま、直立不動で立っていた。

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