最悪の結末(バッドエンド)
地球から見れば、点よりも小さな存在でしか無い、謎のサブスタンサー。
けれども地球の全域には、謎のサブスタンサーによってもたらされたと思われる、無数の隕石群が雨のように降り注いでいた。
「ど、どうしちまったんだ!」
「ドス・サントス代表の執務室が、シグナル・ロストしたぞ」
「それにこの揺れは、なんだい!」
通信が途絶えた祖父の安否を心配する、マレナ、マイテ、マノラの3姉妹。
セノーテのショッピングモール最上部をかすめるように落下した1つの隕石が、ドス・サントスの執務室を完全に消滅させ、蒸発させていた。
「う、上で、なにが起きてんだよ!?」
「衝撃波が、こんな地下深くにまで伝わって来るなんて」
「敵もまだ、倒せてないってのにさ!」
シエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、巨大なコンドルが舞う地下空間で、大量に沸いた敵に向かって銃を放ちながら、愚痴(ぐち)っていた。
「ねえ、メイリン。アフォロ・ヴェーナーに、確認してみようラビ」
「そうだリン。トゥランさんなら、なにが起きてるか判ってるかもリン」
セマル・グルを駆るラビリアと、メリュ・ジーヌを操るメイリン。
2人の首には、コミュニケーションリングは無かったが、その特殊能力でトゥランにコンタクトを取る。
『ラビリアにメイリンなのね、無事でよかったわ。こっちは避難民の収容に手一杯で、申しワケないケド援護には行けない状態なのよ』
2人の少女の脳裏に、トゥランの声が響いた。
「ドス・サントス代表からの通信が、いきなり途絶えたラビ」
「地上で、なにが起きてるリン?」
『それは、こちらでも確認しているわ。地球に降り注いだ隕石の1つが、ドス・サントス代表の執務室を直撃したのよ』
「そ、そんなメル……」
「ドス・サントス代表は、死んじゃったリン?」
『隕石の衝突が、執務室のあった辺り一帯を蒸発させたわ。残念だケド……』
「……な、なんてこった」
「アタシらだって、ついさっきまで執務室に居たんだぞ」
「あの執務室が、消えて無くなっちまったのかッ!」
「ジイさんのヤツ、死んじまったんだな……」
「身内だって判って、大した時間も経ってねェのによ」
「代表を失って、この国はどうなっちまうんだ」
ジャガー・グヘレーラーに乗る、6人の少女たちの間に動揺が走る。
『イイ、落ち着いて聞いて。現在地上では、無数の隕石が降り注いでいるの。謎のサブスタンサーが、地球上のあらゆる場所に隕石を降らしていると、思われるわ』
「たった1機のサブスタンサーに、そんな能力があるのか?」
「隕石って、そんなに都合よく宇宙を漂ってるモンでも無いだろ」
「まさか隕石は!?」
『ええ。異空間から呼び出されていると、推察しているわ』
「それじゃ、隕石を降らしてる謎のサブスタンサーってのは……」
「時の魔女ってヤツの、手下ってコトか」
「時の魔女は、トラロック・ヌアルピリを滅ぼしたいんだな」
『いいえ。隕石は、北アメリカだけじゃなく、地球の全域に渡って堕ちているわ。とくに、地球に生き残った人間が密集する地域に、集中的に落下している』
「だったら時の魔女の狙いは、地球に残った人類を、完全に滅ぼすコトだって言うの?」
セノーテ下の地下空間に、1機のサブスタンサーが姿を現す。
「ハウメアも、無事だったメル!」
「よかったリン」
歓声を上げる、ラビリアとメイリン。
「わたしだけ先に戻ったから、なんとかね。でも、セノンや真央たちが心配だよ」
黒いサブスタンサーに乗った、ハウメアが答えた。
「ま、まさか姉キたちも……」
「隕石にやられて、蒸発しちまったんじゃ」
「チ、チキショウ!」
シエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、不安を増幅させ、最悪の結果を想像する。
『大丈夫よ、みんな無事だわ。現在、貴女たちの居る場所に向かっている』
「ホ、ホントか!」
「よ、よかった」
「セシルたちも、無事なんだね」
安堵の声を上げる、マレナ、マイテ、マノラ。
『残念だケド、朗報ばかりじゃないのよ。隕石が流星となって地球に降り注いだ影響で、地盤が崩れて海水が地下に流入し始めている。セノーテも、放棄するしか無いわ』
トゥランの声が、最悪の結末(バッドエンド)の1つを告げた。
前へ | 目次 | 次へ |