ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・55話

ノアの箱舟の定員

 異空間より現れた隕石が、真っ赤な火球となって地球の大気圏へと突入する。
やがて火球は、真っ黒な分厚い雲を突き抜け、放射能や化学物質で汚れた雨で満たされた海や、幾多の戦争で荒れ果てた大地に激突した。

「オオオ……な、なんと言うコトだ」
「これで地球も、お終いじゃな……」
 母なる地球に縋(すが)り続けた、僅かに残された人類が、嘆きの声と共に蒸発する。

「上(地表)は、どうなってるって言うんだよ!」
「汚染された濁流が、流れ込んで来ちまってるぞ」
「このままじゃ、アタイらも水没しちまう」

 シエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、セノーテの底である天井の地盤から流れ落ち始めた、汚水の瀧を見上げながら言った。
巨大なコンドルが生み出した異次元の空も、汚水の瀧によって綻(ほころ)びが生じている。

「ある意味では、恵みの雨ではあるケドね」
「汚水の水溜りにハマって、アイツら身動き取れなくなってやがる」
「だけど、ここが水没すんのも時間の問題だよ」

 マレナ、マイテ、マノラの3姉妹の駆るジャガー・グヘレーラーは、広大な地下空間の高台に防衛線を構築していたために、現状は水没を免(まぬが)れている。
けれども水位は急激に上昇し、空間は巨大な地底湖と化していた。

『みんな、聞いて。セノーテの人々の収容作業も、もう直ぐ終わりそうよ』
 その時、少女たちが首に巻いたコミュニケーションリングに、女性の声が響く。

「あ、トゥランさんメル」
「それは、良かったリン」
 セマル・グルで空間を飛ぶラビリアと、メリュ・ジーヌで水中を潜航するメイリンが、歓声を上げた。

『だけど、収容出来たのはごく1部の人たちだけなの。アフォロ・ヴェーナーがいくら巨大な機体と言えど、格納庫まで詰めても1000人も載せられないのよ』

「こ、このセノーテには、2万人以上の人間が暮らしているんだぞ」
「それが、たった1000人しか助けられないだって!?」
「それじゃあ他の人たちは、汚水に呑まれて死ぬしか無いってのかよ!」

 激高する、チピリの3人の娘たち。

『その通りよ。ノアの箱舟ですら、選ばれた人間しか助けられなかった。箱舟にも、定員はあるの。悪いけど、迷ってる時間は無いわ。子供や女性を中心に、わたしが選んだ人間たちだけを乗せて、アフォロ・ヴェーナーは宇宙に脱出する』

「そ、それが、1番大勢の人間の命を救える、方法だって言うんだな」
「格納庫まで埋まってんなら、アタシらが助かる術はないってコトか」
「仕方ねェ。覚悟を決めるぜ」

 マクイの3人の娘たちは、自分たちの命をかける決意をする。

『アフォロ・ヴェーナーは、地球と宇宙を往復するコトが可能なの。宇宙のテル・セー・ウス号に避難民を送り届けたら、必ず戻って来るわ』

 巨大なドッグからも顔を出す、アフォロ・ヴェーナーが潜航を開始した。
真珠色の巨大なイルカは、地下水路を抜けて黒い海水に満ちた大洋に浮上する。
やがて反重力システムを使って宙に浮かぶと、宇宙に向かって飛び立って行った。

「ブハアッ、なんとか助かったのですゥ」
 そのとき、汚水の地底湖の壁に空いた穴から、気の抜けた声と共に、サブスタンサーの集団が現れる。

「セ、セノン。無事だったんだな!」
 ハウメアの乗るクホオ・ネ・エヌウが、セノンのアシュピド・ケローネに駆け寄った。

「ハウメアも、無事でなによりですゥ。ところで、戦況はどうなってるですか?」
「こっちはセノーテの上に巣くってた巨人を、倒したんだケドよ」
「巨人を倒したのは、わたし……」

 真央の言葉に、ヴァルナが喰い付く。

「うっせ。アタシは、気絶してただけだよ。助けてくれて、感謝感謝」
「それより、戦況はどう?」
「ヴァルナ、テメェ!」

「アハハ、それが最悪なんだわ」
 乾いた笑い声と共に、ハウメアが答えた。

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