ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・68話

沈み行くセノーテ

 ドーム内部の事故で、亡くなった人々の遺体は、そのままドッグの水の中へと沈められた。
それが、彼らが先祖から引き継いで来た文化であり、仕来りでもある。

「お疲れ様、貴女たち。大丈夫そう?」
 アーキテクターである、トゥランが聞いた。

「あ、ああ。アタシらは、何とかな。正直、死体を運ぶのは恐ろしかったケドよ」
「アレは、慣れるモノじゃない……」
「そうね。でも心配なのは、あのコの方よ」

 真央、ヴァルナ、ハウメアの視線は、アフォロ・ヴェーナー内部のラウンジで、ソファーに突っ伏す栗毛の少女に向く。

「セノン、事故はお前のせいじゃ無いって。お前が居なきゃ、もっと大勢の命が失われていたんだ」
 真央がセノンの横に座り、クワトロテールの頭を抱き寄せた。

「そう、セノンは良くやった……」
「セノンが頑張ってくれなきゃ、このドーム自体が潰れてたんだ」
 ヴァルナとハウメアも、親友の少女を慰(なぐさ)める。

「で、でも……わたしが……もっと上手くやってれば……」
 けれども栗色のクワトロテールの少女の後悔が、消えるコトはなかった。

「今、テル・セー・ウス号から、連絡が入ったわ。地球の衛星軌道上に現れた謎のサブスタンサーは姿を消し、異次元より降り注いだ隕石の群れも、現れなくなったと……」
 トゥランが、事実のみを伝える。

「そ、それじゃあ、このセノーテも、持ち堪(こた)えるってコトか?」
「残念だケド、セノーテは隕石の直撃を受けてしまっているわ。海水の浸水は止まらず、この海底ドッグが放射能で汚染された黒い水で満たされるのも、時間の問題ね」

「やっぱ、宇宙に避難しないとダメか……」
「せっかく敵を退(しりぞ)けたってのに、ここを放棄しなきゃ行けないだなんて」
 ヴァルナとハウメアも、やり切れない気持ちを抱えていた。

「新たなセノーテを開拓しようって矢先に、悔しいね」
「仕方ないさ。ここはアタシらの生まれ故郷だし、名残り惜しくはあるケドね」
「アフォロ・ヴェーナーには、また宇宙と地球を往復してもらうコトになるよ」

 汚水の巨人の群れとの戦いを終え、遺体の埋葬作業を終えた、セシル、セレネ、セリスの3姉妹が、無理やり自分を納得させる。

「ドス・サントス代表も、亡くなってしまったしね」
「その上、国土までもが、汚水の下に沈んでしまう」
「これで、トラロック・ヌアルピリも、終焉を迎えるんだね」

 寂しそうに呟く、マレナ、マイテ、マノラの3姉妹。

「なんだよ、姉貴たちは弱気だなァ」
「国なんて、人があってのモンだろ」
「アタイらが生きてる限り、トラロック・ヌアルピリは無くならねェよ」

 末妹のシエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、あっけらかんと言った。

「アンタらは、ポジティブって言うか、お気楽って言うか」
「国なんて、人あってのモン……か」
「確かに、その通りかもな」

 セシル、セレネ、セリスのの3姉妹も、妹たちのポジティブな思考を受け入れ、微笑む。

「計算だと、4往復でこのセノーテの住人を全て宇宙へ運べるわ。最後の2回は、貴女たちのサブスタンサーを載せてね」

「了解だ、トゥランさん。セノンは、どうする?」
 真央は、落ち込む親友の気もちを聞いた。

「おじいちゃんが……まだ帰って来てませんから……」
 小さな声が、真央の耳に返って来る。

「だよあ。アタシらは、最後まで残るか」
「セノンだけ、置いてけない……」
「だね。セシルさんたち、それでイイ?」

「ああ。アタシらは、構わない」
 セノーテ生まれの9人の少女たちは、真央たちの提案に納得した。

「プリズナーも、宇宙斗艦長を迎えに行ったままだモノね。ここが完全に水の中に沈むまでに、まだ時間はあるから、それまでに帰って来てくれればイイんだケド」

 プリズナーの相棒(バディ)である女性型アーキテクターは、生きのこった住人を載せたアフォロ・ヴェーナーで、再び宇宙へと飛び立って行った。

 前へ   目次   次へ