ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・44話

ボクの行方(ゆくえ)

「結論から、言います。宇宙斗艦長は現在、太陽系の外縁部……冥王星の軌道付近におられます」
 テル・セー・ウス号の艦長、アンティオペーが言った。

「め、冥王星の軌道って、どうしてそんな遠くに!」
「北アメリカのセノーテから、いきなり……?」
「現在最速の宇宙船を使っても、1週間じゃ行けない距離だよね」

 ドス・サントスの執務室に集った、真央、ヴァルナ、ハウメアが驚きの声を上げる。

「いきなり、ブッ飛んだ話だな。随分と、自信あり気だケドよ?」
 キャラメル色のソファーにふんぞり返ったプリズナーが、スクリーンに疑念を向けた。

「それがMVSクロノ・カイロスの、コンピューターさまの答えなのかい?」
「そうです、ドス・サントス代表」

「こちとら統合コンピューターには、痛い目に遭わされてっからよ。どうもにわかには、コンピューターの出した答えを信じられねェんだが」
 スクリーンの向こうのアンティオペーに、反論するドス・サントス代表。

「地球では、古い時代の遺物とも言うべき量子統合コンピューター、ゲーや、ウーに、自分たちの未来を委ねたのでしたね」
「もっと前の世代の、地球人がな。お陰で子孫が非難されて、とんだとばっちりだぜ」

「疑念はもっともですが、ドス・サントス代表。答えは単純なモノです」
「どう単純だったんですか?」
 今度は、セノンが問いかけた。

「宇宙斗艦長のサブスタンサーには、独自の発信機が取り付けられていて、その位置はMVSクロノ・カイロスのコンピューターが、常に把握しているとのコトです」

「マジかよ。そんじゃ、オレのバル・クォーダにも付いてやがるのか?」
「はい。クロノ・カイロスで製造されたサブスタンサーには、どれも位置を把握できる発信機が取り付けられているとのコトでした」

「ベルダンディのヤツ、発信機を埋め込んでやがったとはな。首根っこ掴まれてるみたいで、気に喰わねェぜ」

「監視システムは、普通の人間には気にならないモノよ。むしろ、今回の艦長みたいに遭難した場合、見つけ出せて便利だと思うわ」
 プリズナーの相棒の、全身が紫色とワインレッドの装甲に覆われた、アーキテクターが言った。

「トゥラン。テメー、なにが言いたい?」
「監視システムを嫌がるのは、だいたいは悪いことを考えている、イタズラ坊主ってコト」

「うっせー。黙ってろ」
 憮然(ぶぜん)とする、アッシュブロンドの男。

「それにしてもオヤジのヤツ、冥王星の彼方までブッ飛んで行っちまったのか」
「サブスタンサーなら、極寒の宇宙にもある程度の時間は耐えられるが……」
「そんで、オヤジは生きてるのかよ?」

 セシル、セレネ、セリスの3姉妹が、質問を畳みかけた。

「ゼーレシオンの機体反応から、ほぼ生存していると思われます。機体の外気温データから、宇宙船等の内部に居ると推察されました」
 テル・セー・ウス号の参謀たる、オリティアが答える。

「良かったのですゥ」
 小さな胸を撫で降ろす、栗毛のクワトロテールの少女。

「まったく、オヤジのヤツ心配させやがって」
「でも宇宙船の中に居るんなら、とりあえずは安心か」
「ンで、どうやって迎えに行くんだ?」

 シエラ、シリカ、シーヤの3人が、姉であるマレナ、マイテ、マノラに問いかけた。

「冥王星の軌道まで、どうやって行くつもりだい」
「ウーの妨害を回避しながら、地球の大気圏を抜けるだけでも大変なんだ」
「例え宇宙に出れたとして、冥王星軌道まで到達できる宇宙船なんて、持ってないだろ」

「アンティオペー艦長の艦なら、行けんじゃね?」
「そうだぜ。オヤジは、地球に還る手段なんて無いんだ」
「アタイらが、迎えに行ってやんねェと」

「わざわざ実の娘がゾロゾロと、迎えに行く必要は無ェだろ。行くんなら、テル・セー・ウス号だけで行けばいい」
 合理的な意見を述べる、プリズナー。

「そ、それは、そうなんですケド……」
 自分も助けに行くつもりだったセノンは、顔を伏せた。

「了解致しました。では……わた……救出……」
 突然、テル・セー・ウス号からの通信が途切れる。

「なんだ、電波障害か?」
「イヤ、警報が鳴ってる。敵が、襲撃して来やがった」
 ドス・サントス代表が、敵の襲来を告げた。

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