ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・50話

ヴァール・バルカ

「ホントに、どうなってんだい?」
「物理攻撃まで、無効にしちまうのかよ」
「アンタのサブスタンサー、凄まじいな」

 ジャガーの頭を持ったサブスタンナーに乗る、セシル、セレネ、セリス。
改めて、アシュピド・ケローネの能力に驚いていた。

「だケド、驚いてばかりも居られないよ」
「ああ、そうだね。今度は、こっちが銃弾をお見舞いしてやる」
「喰らいな!」

 アサルトライフルを巨人に向ける、3機のジャガー・グヘレーラー。

「ま、待ってくださいですゥ!」
 けれどもその銃口の先を、アシュピド・ケローネのクワトロテールのゲルが覆った。

「ど、どうしたんだい、セノン」
「なんで攻撃を、止めさせる?」
「理由でも、あるのか?」

「理由は、2つあります。巨人の身体の中に、マケマケのタンガタ・マヌーが取り込まれてしまってるんです。今、撃ったら……」

「マケマケって、真央のコトだよな。一瞬、誰かと思ったぜ」
「確かにアサルトライフルで攻撃したら、真央のサブスタンサーに当たりかねないね」
「それで、もう1つの理由ってなんだい?」

「あの巨人は、水で出来ているんです。銃弾の攻撃じゃ、ダメージを与えられません」

 汚水で構成された水の巨人は、表面全てから淀(よど)んだ水が流れ落ちている。
放射能の汚染水による水溜りに浸かった巨人に、下半身があるのかすら判らなかった。

「巨人の正体が、水溜りに溜まった放射能で薄汚れた水だってのか!?」
「セノンの言う通りだとすると、水に銃弾を撃ち込んでも意味が無いね」
「セノンのサブスタンサーの攻撃は、通りそうかい?」

「いいえ、たぶんダメですゥ」
 自信なく返事をする、栗毛のクワトロテールの少女。

「そ、そんじゃ、打つ手無しってコトかよ?」
「真央が、アイツの体内に捕らわれてんのに!」
「手も足も出せないまま、見てろって言うのか……」

 悔しさを吐露する、セシル、セレネ、セリス。

「いえ、もう攻撃する必要はありません」
 その時、セノンが言った。

「攻撃する必要が無いって、どう言うコトだ?」
「まさか、諦めろってのかい」
「いくら手も足も出せないからって、アンタの親友が捕らわれてるんだぞ」

「そ、そうじゃ無くてですね。水の巨人は、すでに倒されてるんですゥ」

「な、なに言ってるんだ、セノン」
「こうして巨人が、目の前にそびえ立って居るじゃないか」
「さっきだって、攻撃を仕掛けて来ただろ」

「アレが、最後の攻撃だったんですゥ。だってアレから、攻撃を仕掛けて来ません」
 セノンのサブスタンサー(アシュピド・ケローネ)は、3姉妹のサブスタンサーを乗せたまま、巨人へと近づいて行く。

「そ、そりゃ、そうだケドさ」
「アタシらを、油断させようとしてるだけじゃないのか?」
「もしそうだったとして……だ。一体誰が、水の巨人を倒したってんだい?」

 3姉妹の質問の最後に、巨人の丸い頭の2つの目が消える。
同時に、水の巨人は本体を維持できなくり、汚水に戻って崩壊した。

「オワッ、巨人が!」
「ブッ壊れて、巨大な水柱が上がってやがる」
「クソ、前がよく見え無ェ」

 巨人を構成していた大量の汚染水が、一気に広大な水溜まりへと注ぎ込まれ、巨大な水柱が上がる。
舞い上がった汚染水が、スコールのように降り注ぎ、視界が遮(さえぎ)られた。

「倒したのは、わたしの親友の1人です」
 セノンのアシュピド・ケローネだけが、巨人の頭があった場所を見上げる。

「セノン、お待たせ……」
 そこには、蒼い肌をしたサブスタンサーが、澄んだ水を纏(まと)って宙に浮かんでいた。

「アレが、巨人を倒したサブスタンサーか?」
「ずいぶんと、華奢(きゃしゃ)な機体だね」
「よくあんなので、巨人を倒せたな」

 けっこうな時間、降り続いたスコールが止み、視界が回復した3姉妹が問いかける。

「あのコは、ヴァルナ・アパーム・ナパート。ヴァール・バルカは、水と雷光を操る能力を持った、サブスタンサーなのですゥ」
 セノンは、親友のサブスタンサーを、自慢げに紹介した。

 前へ   目次   次へ