ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・49話

俊足(アキレス)とカメ

「不思議だね。どうしてアイツらが追い付けないのか、意味が解らないよ」
「スピードじゃ、アイツらが上回ってるハズなのに」
「一向に追いつけないで、イイ的になってくれてんだからね」

 アシュピド・ケローネのクワトロテールに包まれた、ジャガー・グヘレーラーは、追尾して来る巨大なハチドリや巨大サギに向け、アサルトライフルの銃弾をばら撒く。

「アイツら自体が追いつけないのは、まだ解らんでも無いケド」
「アイツらの攻撃すら届かないって、どうなってんだ?」
「ビームの攻撃なんて、実質は光速なハズなのに……」

 セシル、セレネ、セリスが、コミュニケーションリングを通して見た光景。
ハチドリの口から放たれた光速であろうビームも、アシュピド・ケローネには追いつけず、近くのセノーテの壁に当たって爆発する。

「そう言うモノなんですゥ。どんなに俊足(アキレス)でも、カメは常にその先を行くのです」
 ハート形のカメの甲羅を持ったサブスタンサーは、ゆっくりとした動きで、凄まじいスピードで猛追して来る敵の攻撃をかわし続けた。

「セノンのヤツ、どうなってやがんだ。ま、自分の仕事に、専念できるってコトか」
 空中戦を任された真央のタンガタ・マヌーが、敵の大半を撃ち落とす。

「マケマケ、穴の中はどうなってますか?」
 セノンが、セノーテの天井に開いた穴の中身を確認するように、促(うなが)した。

「待ってろ、今見て来てやるから」
 鳥のような長いクチバシと、巨大な翼を持ったタンガタ・マヌー。
鳥人の如きフォルムのサブスタンサーは、大きく空いた穴の中へと消えて行った。

「なあ、真央が突入してから、ケッコウ経ってねェか」
「セノーテ内の敵は、あらかた片付けたしよ」
「アタシらも、突入してみようぜ」

「わかりました。マケマケ、待ってて下さい」
 アシュピド・ケローネは、クワトロテールの3つにジャガー・グヘレーラーを包み込んだまま、大穴へと突入する。

 電源など存在しない大穴の中は真っ暗で、完全なる闇に包まれていた。
けれども赤外線カメラにもなっているサブスタンサーの目は、日の光も届かない暗闇ですら、周囲の情景を少女たちの脳裏に映し出す。

「うわァ、薄気味悪い洞窟だね。汚れた水が、流れ込んで来ちまってる」
「洞窟じゃ無くて、敵が掘った穴だからな。コウモリが、入り込んで来てるよ」
「これだけの規模の穴を、どうやって……」

「見て下さい、セシル、セレネ、セリス。洞窟の奥に、なにか居るのですゥ」
 ハート型の甲羅を持ったサブスタンサーは、大穴の深部に敵の姿を確認する。

「え、こっちはまだ、なにも確認できないよ」
「セノンのサブスタンサーの目の方が、高性能なのか……」
「一体、どんなヤツが居るんだい?」

「巨人です……大っきな、巨人が居るのですゥ」
 アシュピド・ケローネの進む先には、放射能に汚染された巨大な水溜りがあり、そこには半身まで水に浸かった巨人が聳(そび)え立っていた。

「うわァ、コイツが巨人だったのか!」
「今までずっと、壁だと思っていたよ」
「アタイらのセノーテの隣に、こんな巨人が居たなんて……」

 驚愕の事実に、セシル、セレネ、セリスは我を失い、呆然と巨人を見上げる。

 巨人は、丸い頭に2つの巨大な目を輝かせ始め、アシュピド・ケローネに向け巨大な腕らしきモノを伸ばして、攻撃を仕掛けて来た。

「セ、セノン、巨人が殴って来やがった」
「避けないと、潰されちまう!」
「あ、間に合わない!」

「大丈夫なのですゥ、アシュピド・ケローネに攻撃は届きません」
 堂々と言い放つ、世音(せのん)・エレノーリア・エストゥード。

 彼女が言った通り巨人の攻撃は届かず、巨大な腕は濁った水となって水溜りに消えて行った。

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