ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・57話

勝者の権利

 丸いテーブルに並んだ魚や野菜などの料理は、すでに大半が船長たちの胃袋へと納まっている。
けれども12人の少女たちの皿は、料理がそのまま残されていた。

「ヤレヤレ。いくらオメーたちが心配したって、どうにかなるモンでも無ェだろ?」
「あの女将軍サマのコトだ。自分の力で、ちゃんと生きて行けるさ」
「オメーたちも、しっかり喰って、しっかり働くんだ」

「確かにアステさまは、我らよりも大人だ」
「我らが身を案じるなど、おこがましいコトかも知れん」
「わたし達も、自分たちが生きるコトを考えねば……」

 スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの3人が、自答し納得しかけたとき。
宿屋の食堂に、昼飯を食べに他の客が入って来て、盛り上がり始める。

「お前、聞いたか。新たにミノ・アステ将軍の名を受け継ぐ、後任が決まるみてェだぜ」
「聞いた、聞いた。昼過ぎから、就任式があるんだってな」

「前の女将軍は、抜群のプロポーションだったからよ」
「後任の将軍を見る目も、ハードル高いぜ」
 漁師街の男たちは、地酒のジョッキを片手に、魚の煮つけや肉料理を食べていた。

「やはり、ウワサは本当であったか」
「功労あるアステさまが失脚されて、早急に後任人事とは」
「納得が行かん。どんなヤツが後任か、わたしが確かめてやる!」

 ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャの3人の少女たちは、怒りを顔に出す。
他の9人の少女たちも含め、文句をまき散らしながら、遅れた朝食を食べ始めた。

「だったら午後からは、みんなで腹ごなしに闘技場に繰り出すとしようぜ」
「イイのかよ、ティンギス」
「あの蒼い髪のボウズが、捕まったままなんだが?」

 ティンギスの提案に、レプティスとタプソスが反論する。

「それも、引っくるめてだ。坊主が捕まってんのは、闘技場の牢屋なんだぜ。面会は無理でも、観客としてなら入って問題無ェだろ?」

「なるホドな。お前にしちゃあ、頭を使ったな」
「だが、コイツらまで連れて行くとなると、目立つぞ?」
 タプソスは、12人の少女たちを見る。

「目立って、なにが悪い。オレたちゃ、勝者なんだ。この国じゃ、勝者は絶対なんだろ。いっそ、いただいた鎧や武器を装備して行くってのは、どうよ?」

「流石に、悪ノリし過ぎだ」
「門前払いを喰らうに、決まっているだろう」
 軽率なティンギスに、同僚の船長2人が苦言を呈(てい)す。

「じょ、冗談だって。本気に……」

「イヤ。この国では、闘技場での勝者は、武装しての入場が許される」
「50人隊の隊長の地位と、特等席での観覧も許されるぞ」
「我らをはべらすくらいは、多めに見られるハズだ」

 イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルが、カタマリ肉にかぶり付きながら言った。

「オイオイ、マジかよ。勝者にとっちゃ、天国だな」

「だから皆、強さに憧れるのだ」
「ラビ・リンス帝国が、屈強な軍隊を揃えていられるのも……」
「飴(アメ)と鞭を、ちゃんと用意しているからこそなのだ」

 ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルも、魚介スープを豪快に一気飲みしている。

「我らが主、ティンギスさまが、闘技場に赴(おもむ)かれる」
「レプティスさまと、タプソスさまもご同行されるだろう」
「皆の者、祝杯を挙げよ」

 スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャが、乾杯の音頭を取ると、宿屋に居合わせた客が一斉に盃を掲げた。

「オオ。貴方が、闘技場で女将軍を討ち負かした、パーティーの隊長でしたか」
「わたしも、あなた方の雄姿を見て、興奮しましたぞ」
「今日の目的はやはり、後任の女将軍さまですかな。ハハハ」

「な、なんで、そんな話に!?」
「ど、どうすんだ、ティンギス」
「この雰囲気じゃ、後に引けないぞ」

 慌てふためく、3人の船長。

「鎧を、お持ち致しました」
「盾や武具は、我らが持ちますので」
「さっそく鎧に、着替えてください」

 ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャが、3人の船長が闘技場で拝領した鎧を用意する。

「そ、そんじゃ、行くとすっか……」
「あ、ああ……」
「オ、オウ」

 ティンギス、レプティス、タプソスの3人の船長は、重たい鎧を装備し、12人の少女たちを従えて、宿屋を出て行った。

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