ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP009

アイドルとサッカー選手

「副キャプテンの、スッラだ。今日のステージは、ここまでとなる。試合に、支障が出てしまうのでな」
 ネロさんからマイクを受け取り、今度はスッラさんがステージ挨拶に立った。

「ええ、そんなァ。もっと、歌って欲しい!」
「だけどスッラたちの本業は、サッカー選手なのよ。仕方ないじゃない」
「そ、そうね。ケガとかあったら、大変だもの」

 スタジアムを埋める女性ファンたちも、渋々ながら納得している。

「試合前にアイドルステージとか、ずいぶんと余裕かましてんなァ」
「サッカーの試合前にステージで歌って踊るのは、体力消費も激しいでしょうからね」
 紅華さんと柴芭さんが、指摘した。

「そ、そうだぜ。オレさまたちを、ナメてんのかって話だ」
「ま、ウチはウチで、レギュラーの大半が高校1年やで」
「向こうから見れば、完全に格下と見られても仕方ないでありますな」

 ……格下と見られるのは、イヤだな。
だけど静岡では、オリビさんやアルマさんを要するチームですら、サッカーをさせて貰えなかった。
例え体力が削られていても、かなり厳しい試合になるに違いない。

「我々の所属する地域リーグは、試合数も上のリーグに比べれば限られている」
「練習場では、ステージを定期的に開催するから、見に来て欲しい」
 ステージで、スッラさんとカイザさんが宣言する。

「行く行く~、絶対に駆けつけるよ」
「カイザたちの頑張ってる姿、見に行くからね」
「ネロキュンも、練習サボっちゃダメだよ」

「ゲゲッ。サッカーの練習は、サボんねェよ」
「アイドルのダンスも、真剣にやるんだな。生半可にやっていては、ケガをするぞ」
 キャプテンのカイザさんが、ネロさんを注意した。

「ケガはしたくありませんが、なんでサッカー選手がダンスなんか……」
「ダンスには、身体の柔軟性を高める効果がある。それに歌って踊るのだから、肺活量もアップするぞ」
「スッラさんは、よくそこまで前向きで居られますね」

 やはりネロさんは、アイドル活動に乗りきじゃないみたいだ。

「アイドルとしてのボクたちは、ここまでです。ですが直ぐにグランドで、サッカー選手としてお会いしましょう」
 マイクを右手に、左手をファンに向け振るカイザさん。

「サッカーでも、カッコいいトコ見せてねェ!」
「カイザー、スッラー、無失点を期待してるよー」
「絶対勝ってね!」

 女性サポーターたちの歓声が鳴り止まぬ中、ステージにドライアイスが吹き上がり、アイドルたちは退場した。

「ボーっとしている間に、練習時間が終わってしまったな」
 雪峰キャプテンが、言った。

「ええ、マジか!」
「そい言えば、ランニングの途中だったでありますな」

「アイドルが歌ってる中を、ランニング続けるのもシュール過ぎるぜ」
「だよな……」
 黒浪さんだけで無く、全員が紅華さんの意見に納得する。

 スタジアム内の控え室に入ったボクたちは、汗を拭き水分補給をしながら、試合開始を待った。

「日高グループも、シャイ・ニー事務所抱えてるからって、スゲェ試みして来んな」
「流石にオレさまも、度肝を抜かれたぜ」
「せやケド、実力はホンマもんやで」

「ああ。カイザの統率するディフェンスラインを破るのは、一筋縄じゃ行かなさそうだ」
「オレさまのスピードで、裏抜けするくらいしか無いんじゃね?」
「否定したいトコやケド、ホンマそうかもな」

 デッドエンド・ボーイズの3人のドリブラーたちが、複雑な感情を吐き出している。
無名のボクたちと違って、ネット上を探せばいくらでも情報が転がっている選手ばかりだ。
自分たちで情報をチェックし、その強さも認識してるのかも知れない。

「今日の試合、相手のセンターフォワードのバルガ、どれだけ止められるかにかかってるね」
 セルディオス監督が、ボクの顔を見た。

「……」
 ボクは、反射的に頷(うなず)く。
心臓の音が、メチャクチャ速く鳴っているのが聞えた。

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