ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP007

ショータイムの始まり

「へェ。今日の開幕戦、日高オーナーが来てんのかよ?」
 紅華さんも、メインスタンドの貴賓(きひん)席へと、ピンク色の頭を向ける。

 日高オーナーとは、日本を代表する複合企業、日高グループの総帥だ。
日高グループは、IT分野を始め数多くの企業分野を手掛けてる……らしい。

「確か日高さんは、Zeリーグ1部のクラウド東京スカーフェイスの、オーナーでもあるんだろ?」
 センターバックの、野洲田(やすだ)さんが言った。

「ウム。あの倉崎さんを削った、美堂 政宗の居るクラブだな。これは、陰謀の匂いを感じる……」
「感じねェーよ、龍丸(たつまる)!」
 もう1人のセンターバックである龍丸さんに、突っ込みを入れる紅華さん。

「アイドル事務所のシャイ・ニー事務所も、日本トップの男性アイドルを多く輩出してるよ」
 システムによってサイドも出来るセンターバックの、亜紗梨(あさり)さんも話に加わる。

「するってェと、ロムさんの後ろに控えてんのが、シャイ・ニー事務所の男性アイドルたちか?」
「だろうな、野洲田。そして日高氏は、1代にして成り上がった。だが、不思議には思わんか。誰が資金を出した。やはり影には、世界を代表する大財閥ロスチャ……」

「ハイハイ。わかりましたよ、龍丸。その話は、後でゆっくりと」
 龍丸さんの陰謀論を、軽く受け流す亜紗梨さん。

 すると、今までスタジアムに流れていた音楽が途切れた。
自然とボクたちも、バックスタンドのステージに視線が移る。

「日高オーナーは、全てを失ったボクに、新たに創るサッカーチームのオーナーにならないかと声をかけ、誘ってくれました。今日、ボクがここに立っていられるのも、日高オーナーと、ボクの意志を継いでくれたレムのお陰です」

 ステージでは、ロムさんの挨拶が続いていた。

「なあ、ピンク頭。レムって、誰だ?」
「有葉 路夢(あるば ロム)には、有葉 零夢(あるば レム)って弟が居てな。兄の意志を継いレーサーになって、今はヨーロッパに挑戦してるって聞いたコトあるぜ」

「そっかァ。オレさまも、サッカーでヨーロッパ目指してるし。なんかレーサーの世界も、サッカー界と大して変わらねェんだな」
 腕を組んで、ウンウンと納得している黒浪さん。

「少し、長くなってしまいましたね。お待たせして、申しワケありません」
 不平不満が出ているワケでも無い観客席に、ロムさんは頭を下げる。

「さあ、我らがフルミネスパーダMIEの、ショータイムの始まりだァ!」
 頭を上げたロムさんは、親しみのある口調に替わっていた。

 ホーム側の観客席に、赤と黒の巨大なチェッカーフラグが出現する。
それ外のスタンドにも、MIEのチームフラッグがいくつも翻(ひるがえ)った。

「オ。いよいよアイドルステージが、始まるぜ」
 ボクの前にあった黒浪さんの頭の向こうで、スモークが激しく吹き上がる。

「流石は、シャイ・ニー事務所を手掛ける日高グループでありますな」
「まったく、ド派手な演出だぜ」

 紅華さんが言った通り、スタジアムの全周囲から再び花火が打ち上げられ、豪快な音楽が響き始めた。

 ロムさんはステージ脇に下がり、後ろに控えていたアイドルたちがダンスを開始する。
回転しジャンプし、リズムに乗る男性アイドルたち。

「アイツら、新人のアイドルかな。オレさま、見たコトねェぜ」
「ホンマや、知わん顔ばっかやで」
「当たり前だろ。いくら贅沢チームでも、シャイ・ニー事務所のトップアイドルを連れて来れるかって」

 ステージで踊る、男性アイドルたちの顔を、知らないと言う3人のドリブラー。
けれどもボクは、全ての顔を見知っていた。

「キャーッ、アグスゥ。ステキー!」
「スッラ、スッラ、スッラーーー!」
「カイザだわ。本物のカイザが躍ってる!」

 黄色い声援が、推しのアイドルたちの名前を叫んでいる。

「ヘッ……なあ、女のコたちの叫んでる名前って?」
「相手のメンバー表に、載っていた名前の気がするであります」
「そう言やMIEのヤツら、アップ練習にも出て来てなかったな……」

 そう、ライブステージに立っていたのは、今日サッカーの試合をする、フルミネスパーダMIEのメンバーたちだった。

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