ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・45話

それぞれの想い

「アステさま!?」
「アステさまが、攻撃を受けるだなんて……」
 ミノ・アステ将軍の側近の少女たちに、衝撃が走った。

「アイツら、大将が攻撃喰らって、動揺してっぜ」
「ああ。やるなら、今だ」
「でも、やるのか?」

 相手が12歳くらいの少女とあって、ティンギスら3人の船長は攻撃をためらう。

「このようなザコなど、さっさと屠(ほふ)って、アステさまをお助けせねば」
「遊んでなど、おられん」
「行くぞ、お前たち」

 12人の側近たちは、両手の斧で3人の船長を攻撃した。
船長たちは、重装甲の鎧と重厚な盾で何度か防いだものの、次第に追い詰められて行く。

「甘いな。たとえ相手が赤子だろうと、オレなら躊躇(ちゅうちょ)なく殺している」
 熱気に満ちた、闘技場(コロシアム)の観客たちに紛れた、マントの男が呟いた。

 そんなコロシアムを、遠く窓越しに眺めている2人の少女たち。
空は晴れ渡り、白い積乱雲が海の上をゆっくりと移動している。

「ルスピナ。舞人さんや船長さんたち、だいじょうぶかな?」
 ハンターグリーンの髪を、三つ編みに編んで頭の後ろにまとめた少女が、もう1人に問いかけた。

「わ、わたしも心配だよ、ウティカ」
 コバルトブルーの髪を、頭の左右から垂らした少女が答える。

 2人とも、膝上丈の紺色のワンピースに、フリルの付いた白いエプロン、頭にはホワイトブリムを付けていた。
ウティカは窓を雑巾で拭き、ルスピナは床のモップ掛けをしている。

「わたし達、ここで待っているだけでいいのかな?」
「ど、どうかな。わたし達に、なにが出来るんだろ?」
 手を動かしながらも、会話を続ける2人の少女。

「わたし達は、お師匠サマに魔術を教わったわ。なんとか、役立てられないかな」
「いざとなったら、使うべきだと思う。でも、まずなにをするかを、考えないと……」
 積極的なウティカに、慎重派のルスピナ。

「そうだね。ウカツに動いて兵隊たちに見つかたら、せっかくかくまってくれた宿のご主人たちに、迷惑がかかっちゃう」
 山間(やまあい)の村で育ったウティカは、窓から身を乗り出して、外側からガラスを拭く。

「まずは、情報を集めよう。この宿屋は1階に食堂もあるし、お客さんたちが色々と話してるもの」
 海辺の村で育ったルスピナも、モップ掛けは手慣れたモノだった。

「舞人さんたちが、無事かどうかって情報だね」
 丘の上にある闘技場から、かすかに聞える歓声を聞きながら、ウティカが返す。

「それもだケド、みんなが無事に戻ったときのために、この国の情報もたくさん集めよう」
「ルスピナ、頭イイ。わかったわ、それに決定」

 2人が会話を終える頃には、宿屋の1室はピカピカの状態になっていた。

「ウティカ……舞人さんや船長さんたち、無事だよね?」
「今は、信じるしかないわ」
 海辺の街の潮風が、窓の外を見つめる少女たちの頬を撫でる。

 2人の少女はしばらくすると、掃除道具を手に次の部屋へと移って行った。

「クッ……このわたしに、土を着けるとは大したモノだな」
 闘技場では、女将軍が舞人の前で立ち上がる。

「ミノ・アステ将軍、貴女ではボクに勝てない」
 舞人は、顔色1つ変えずに言った。

「フッ。うぬぼれるなよ、小僧が!」
 激昂した女将軍は、アステ・リアのらせん状の鞭を舞人に向ける。

「うぬぼれてなど、いませんよ」
 舞人は音速を超える鞭を、素手で掴み取った。

「それがうぬぼれだと、言っている!」
 鞭に、稲妻のような高圧電流が走る。

「サタナトスや、ヤツが呼び出した魔王どもは、こんな程度の強さじゃなかった」
 舞人は、強引に鞭を引っ張った。

「なッ!?」
 鞭を手離さなかった女将軍は、急加速で引っ張られて、闘技場の壁に叩きつけられる。

「うわあ、ミノ・アステ将軍がやられちまった!」
「しかも相手は、ただの小僧だぞ!」
「この闘技場で、負けたコトなんて無かったのによォ」

 観客席に、悲鳴の様なざわめきが駆け巡った。

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