2人の少女の救援部隊
ルーシェリアの重力剣(イ・アンナ)で重くなった盾をシェルター替わりに、暴風から身を護る3人の船長と12人の少女たち。
「な、なんだよ、雲のドラゴンってなァ!?」
「それに、この暴風だ。顔上げたら、1瞬で吹き飛ばされちまう!」
「イイか、お前たち。オレたちにしがみ付いて、離れるんじゃないぞ!」
ティンギス、レプティス、タプソスの3人の船長は、自分たちの身体に12人の少女たちを纏(まと)わり付かせ、強風を耐え忍ぶ。
「い、言われなくとも、わかっている!」
「わたし達だって、犬死にはしたくないのでな」
「だがこの強風、いつまで続くのだ」
船長たちの大きな身体に、小さな身体で必死にしがみ付きながらも強がる、イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルの3人の少女たち。
他の少女たちの穿(は)くミニスカートも、強風に煽(あお)られ激しくはためいていた。
「見て、前!」
「雲の龍が(クラウドドラゴン)が、突っ込んで来るよ!」
「みんな、伏せて!」
ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルの、3人の少女が叫んだ。
1匹のクラウドドラゴンが、船長たちの居る闘技場の観覧席に差し迫る。
「く、来るぞ! お、お前ら、なんとか耐えるんだァ!」
雷(いかずち)を帯電したクラウドドラゴンが、観覧席を駆け抜けた。
「ギャァアァァーーーーーッ!」
「グエェエーーーーッ!!」
雷撃は、船長たちの大きな盾でも完全には防ぎ切れず、少女たちの悲鳴が上がる。
「ヒイィィィーーーッ!」
「イヤアアァァ――――――ッ!」
「た、助けてェッーーーーェ!!」
雲の龍は去って行ったが、少女たちの叫び声が闘技場の上空から木霊した。
「クッソ! 何人か、引っぺがされやがった!」
「マ、マズいぜ。あの高さから堕ちたら、助からなねェ」
「だが、もうどうしようも……」
上空へと舞い上げられた少女たちを見上げながら、どうするコトも出来ない船長たち。
少女たちの身体は頂点に達し、やがてゆっくりと落下し始めた。
「見て、ウティカ。スラ・ビシャたちが、空に投げ出されちゃってる!」
風の精霊に乗って闘技場の上空までやって来た、ルスピナが指刺す。
「あのまま落下したら、みんな死んじゃうよォ!」
ウティカは風の精霊を操って、上空に投げ出された少女たちの元へと急行した。
「みんな、こっち。手を伸ばして!」
ルスピナは、落下死する寸前の少女たちを、水の精霊を使って次々にキャッチする。
「……あ、ありがと……」
「た、助かったのか……」
「こ、恐かったよォ!」
スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの3人は、泣きながらルスピナにしがみ付く。
「ホラ、泣かない、泣かない」
「もう、大丈夫だから」
ウティカとルスピナは、助けた少女たちを小さな胸に抱き寄せた。
「お姉ちゃん、温かい」
「とっても、安心する……」
「なんだか、アステさまみたい……」
1命を救われた、ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャの3人は、安心し切った顔をしている。
「他のコは、吹き飛ばされなかったみたいね」
「でもウティカ。吹き飛ばされた人が、大勢……」
ルスピナは、地面に叩き付けられた人の多さに、言葉を詰まらせる。
「今は、このコたちを助ける方が、優先だよ」
「そ、そうね。船長さんたちの元へ、向おう」
6人の少女を助けたウティカとルスピナは、闘技場の観覧席へと降り立った。
「お、お前ら、よく無事だったな!」
ティンギスが大きな腕を広げ、助かった6人を抱き寄せる。
スラ・ビシャたちも、顔では嫌がりながらも、ホッとしていた。
「だがよ、まだゼンゼン油断は出来ねェぜ」
「突風も吹き荒れたままだし、なんたってあの雲の龍だ」
ウティカたちに注意を促(うなが)す、レプティスとタプソス。
「オイオイ、見ろよ! 言ったソバから、雲の龍がまた突っ込んで来るぜ!」
ティンギスが、慌てふためく。
「大丈夫だよ、船長さん」
「あのコたちは、もう敵じゃないから」
ニコッと微笑む、ウティカとルスピナ。
「ね、ねえ、どう言うコト?」
「敵じゃないって、意味が?」
助けられた少女たちも、2人にしがみ付きながら、疑問を顔に浮かべていた。
「あのコたちも、高位の精霊ではあるケド……」
ウティカの乗っていた風の精霊アニチ・マリシエイが、本格的に実体化すると、今までが嘘のようにパタリと風は吹き止む。
「わたし達の精霊ホドじゃないから」
少女たちをキャッチしたときの水の精霊、メガラ・スキュレーを実体化させる、ルスピナ。
小さな水の粒で出来た雲の龍は、まるでペットのように彼女の周りをかけ周っていた。
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