ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・79話

2人の少女の救援部隊

 ルーシェリアの重力剣(イ・アンナ)で重くなった盾をシェルター替わりに、暴風から身を護る3人の船長と12人の少女たち。

「な、なんだよ、雲のドラゴンってなァ!?」
「それに、この暴風だ。顔上げたら、1瞬で吹き飛ばされちまう!」
「イイか、お前たち。オレたちにしがみ付いて、離れるんじゃないぞ!」

 ティンギス、レプティス、タプソスの3人の船長は、自分たちの身体に12人の少女たちを纏(まと)わり付かせ、強風を耐え忍ぶ。

「い、言われなくとも、わかっている!」
「わたし達だって、犬死にはしたくないのでな」
「だがこの強風、いつまで続くのだ」

 船長たちの大きな身体に、小さな身体で必死にしがみ付きながらも強がる、イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルの3人の少女たち。
他の少女たちの穿(は)くミニスカートも、強風に煽(あお)られ激しくはためいていた。

「見て、前!」
「雲の龍が(クラウドドラゴン)が、突っ込んで来るよ!」
「みんな、伏せて!」

 ハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェルの、3人の少女が叫んだ。
1匹のクラウドドラゴンが、船長たちの居る闘技場の観覧席に差し迫る。

「く、来るぞ! お、お前ら、なんとか耐えるんだァ!」
 雷(いかずち)を帯電したクラウドドラゴンが、観覧席を駆け抜けた。

「ギャァアァァーーーーーッ!」
「グエェエーーーーッ!!」
 雷撃は、船長たちの大きな盾でも完全には防ぎ切れず、少女たちの悲鳴が上がる。

「ヒイィィィーーーッ!」
「イヤアアァァ――――――ッ!」
「た、助けてェッーーーーェ!!」

 雲の龍は去って行ったが、少女たちの叫び声が闘技場の上空から木霊した。

「クッソ! 何人か、引っぺがされやがった!」
「マ、マズいぜ。あの高さから堕ちたら、助からなねェ」
「だが、もうどうしようも……」

 上空へと舞い上げられた少女たちを見上げながら、どうするコトも出来ない船長たち。
少女たちの身体は頂点に達し、やがてゆっくりと落下し始めた。

「見て、ウティカ。スラ・ビシャたちが、空に投げ出されちゃってる!」
 風の精霊に乗って闘技場の上空までやって来た、ルスピナが指刺す。

「あのまま落下したら、みんな死んじゃうよォ!」
 ウティカは風の精霊を操って、上空に投げ出された少女たちの元へと急行した。

「みんな、こっち。手を伸ばして!」
 ルスピナは、落下死する寸前の少女たちを、水の精霊を使って次々にキャッチする。

「……あ、ありがと……」
「た、助かったのか……」
「こ、恐かったよォ!」

 スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの3人は、泣きながらルスピナにしがみ付く。

「ホラ、泣かない、泣かない」
「もう、大丈夫だから」
 ウティカとルスピナは、助けた少女たちを小さな胸に抱き寄せた。

「お姉ちゃん、温かい」
「とっても、安心する……」
「なんだか、アステさまみたい……」

 1命を救われた、ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャの3人は、安心し切った顔をしている。

「他のコは、吹き飛ばされなかったみたいね」
「でもウティカ。吹き飛ばされた人が、大勢……」
 ルスピナは、地面に叩き付けられた人の多さに、言葉を詰まらせる。

「今は、このコたちを助ける方が、優先だよ」
「そ、そうね。船長さんたちの元へ、向おう」
 6人の少女を助けたウティカとルスピナは、闘技場の観覧席へと降り立った。

「お、お前ら、よく無事だったな!」
 ティンギスが大きな腕を広げ、助かった6人を抱き寄せる。
スラ・ビシャたちも、顔では嫌がりながらも、ホッとしていた。

「だがよ、まだゼンゼン油断は出来ねェぜ」
「突風も吹き荒れたままだし、なんたってあの雲の龍だ」
 ウティカたちに注意を促(うなが)す、レプティスとタプソス。

「オイオイ、見ろよ! 言ったソバから、雲の龍がまた突っ込んで来るぜ!」
 ティンギスが、慌てふためく。

「大丈夫だよ、船長さん」
「あのコたちは、もう敵じゃないから」
 ニコッと微笑む、ウティカとルスピナ。

「ね、ねえ、どう言うコト?」
「敵じゃないって、意味が?」
 助けられた少女たちも、2人にしがみ付きながら、疑問を顔に浮かべていた。

「あのコたちも、高位の精霊ではあるケド……」
 ウティカの乗っていた風の精霊アニチ・マリシエイが、本格的に実体化すると、今までが嘘のようにパタリと風は吹き止む。

「わたし達の精霊ホドじゃないから」
 少女たちをキャッチしたときの水の精霊、メガラ・スキュレーを実体化させる、ルスピナ。
小さな水の粒で出来た雲の龍は、まるでペットのように彼女の周りをかけ周っていた。

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