3体の魔王対12人の少女たち
暴風が吹き荒れる闘技場では、ミノ・テリオス将軍が、大魔王ダグ・ア・ウォン率いる魔王軍と対峙している。
「流石は、大魔導士リュオーネ・スー・ギルの、高弟よ。若いのに、大したモノじゃ」
ミノ・アステ将軍となった、ルーシェリアが言った。
観覧席では、3人の船長と12人の少女たちが、2人のメイド服姿の少女が呼び出した風と水の精霊によって、庇護されている。
「これで妾も心置きなく、戦いに参戦できると言うモノじゃ」
ルーシェリアは、重力剣イ・アンナによって重くしていた、船長たちの盾に対する能力を解いた。
「さて、天空の街での決着を、付けようではないか……海皇ダグ・ア・ウォンよ」
ルーシェリアは、ミノ・テリオスと交戦中の大魔王に、立ち向かって行く。
「オワッ! 盾が、急に軽くなりやがった」
「やっぱルーシェリアの嬢ちゃんが、重くしてくれてたんだな」
「我々が吹き飛ばされずに済んだのは、彼女のお陰か」
ルーシェリアに感謝を述べる、ティンギス、レプティス、タプソスの3人の船長。
「だけど敵は、大魔王にされた海皇サマなんでしょ?」
「部下みたいな3匹に、ミノ・テロぺさまがやられちゃったし」
「ルーシェリアさんだけで、大丈夫かな?」
イオ・シル、イオ・セル、イオ・ソルが、言った。
「そうは言ってもなあ、お前ら。海皇の部下にしたって、そうとう強いぜ」
「少なくとも、オレらの敵(かな)う相手じゃねェ」
「ここは大人しく、退散した方が……」
「アアン。なんだか強そうなのが、まだ残ってんじゃねェか!」
「アハハ、ホントだ。コイツら、かなり強力な精霊呼び出してるっしょ」
「金色のヤツはオデのカニクリヤマが吸い込んじまったし、退屈してたんだァ」
ティンギスらの前に、ミノ・テロぺ将軍との戦いに勝利した、3体の魔王が立ちはだかる。
「し、しまった。つの間にやら、囲まれちまってるぞ!」
慌てふためく、ティンギス。
「こうなったら、覚悟を決めて戦うより他にない」
「そうだな。例え敵わずとも、せめて1矢報いるまでよ」
「戦わずして逃げたとあっては、冥府でお待ちのアステさまに、顔向けができぬ!」
両刃の戦斧を両手に構え、戦闘態勢を取るハト・ファル、ハト・フィル、ハト・フェル。
「なんだってお前ら、そんなに交戦的なんだよ」
「せっかく助かった命だ。もっと大事にしろ」
レプティスとタプソスが、苦言を呈(てい)した。
「ギヒヒィィ。コイツら、自分の立場ってモンを解ってねェな」
「命を大事にって、ムリな話っしょ」
「おめェら纏(まと)めて、オデの槍が吸い込んでやるんだな」
蒼玉の魔王メディチ・ラーネウス、黄玉の魔王ペル・シア、橙玉の魔王ソーマ・リオが、それぞれの得物である槍を構えて、船長たちを囲む輪を縮めて行く。
「わたし達が、攻撃を仕掛ける」
「1撃を入れて退避するから、防御を頼んだ」
「よし、行くぞ!」
スラ・ビシャ、スラ・ビチャ、スラ・ビニャの3人が合図をすると、船長たちの盾から飛び出した12人の少女たちが4人ずつ3方向に別れて、3体の魔王へと攻撃を行った。
「そんなモン、効くかっての!」
「アハハ、カワイイ、カワイイっしょ!」
「ふゥん!」
けれども3体の魔王は、少女たちの攻撃をあっさりと跳ね除ける。
「コ、コイツら、やっぱ強い……」
「斧での攻撃自体、ぜんぜん効いてないよ」
「ど、どうする!?」
相手との力の差を身を以て味わった、ロウ・ミシャ、ロウ・ミチャ、ロウ・ミニャ。
少女たちは、船長たちの構える盾の内側に戻っていた。
「みんな、もう1回攻撃だよ」
皆を暴風から護っていたウティカが、12人の少女を前に言い聞かせる。
「ウティカの嬢ちゃんよ、そりゃムリってモンだぜ」
「ああ、危険が過ぎる」
「だが、このまま手をこまねいていても……」
「そう! だから今度はわたし達が、援護する」
ルスピナも、少女たちを抱きしめながら語りかける。
2人のメイド服姿の少女の言葉に、頷く12人の少女たち。
少女たちは再び両腕に斧を携(たずさ)え、3体の魔王に立ち向かって行った。
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