ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・32話

船団長

 島の南部の難所を抜けた3隻の船は、なんとかクレ・ア島の港に接岸するコトに成功する。
ティンギス船長が、碇(いかり)を降ろしてタラップを掛けようとしていると、槍で武装した役人らしき集団がやって来た。

「キサマたち、商人か。我が国の、交易の許可は取っているんだろうな」
 いかつい顔の隊長らしき人物が、高圧的な態度で告げる。

「モチロンですぜ。ですがアッシはただの日雇い船長なんで、船団の主を呼んで来やす」
「さっさとしろ。こっちも、ヒマでは無いのだぞ」
 普段より謙(へりくだ)った物腰の船長が、船の中へ消えた。

 直ぐに青い髪をした少年が、漆黒の神の少女を伴ってタラップを降りて来る。

「なんだ。まさかこんな子供が……」
「3隻の中型船の主と言うワケでは、あるまいな?」

「いえ、ボクが船団の主です」
「こう見えて、ご主人サマはやり手でのォ。ヤホーネスでは湖の畔に、自分の商品である武器などを売る街を、建設中なのじゃ」

 ルーシェリアは、レーマリアが発行した商権の登録書を見せた。

「因幡 舞人……お前たちは、ヤホーネスの商人か」
「レーマリア女王、直筆の登録書ではないか」
「しかし、その歳で街を築く財を得るなど、にわかには信じられん」

 そう言いつつも、役人たちの高圧的な態度も、いく分か和らぐ。
舞人やルーシェリアは、港に隣接した税関の区画の、商人ギルドに通された。

「積み荷は、食料品と医薬品。武器では、無いのですね」
 受付の若い女性が、舞人たちが提出した書類に目を落としながら確認する。

「いずれはこの国とも、武器を商(あきな)ってみたいのじゃがな。武器ともなれば、軍に性能や品質を証明せねばならぬし、まだ少しばかり先の話じゃ」

 ルーシェリアの機転を利かした話術は、商人ギルドに信用され1週間の滞在許可を得る。
書類審査を終えた一行は、荷下ろし作業をする3人の船長に挨拶したあと、街の宿に向かった。

「うわあ、お布団。フッカフカ」
「部屋も、山の村とは比べものにならないくらい、キレイです」
 豪華な部屋にはしゃぐ、ルスピナとウティカ。

「ホントに、キレイな部屋だね。ウチのみすぼらしい教会とも、大違いだ」
 舞人も、荷物をサイドテーブルに置いて、ソファに座る。

「お気に召していただき、なによりです」
 わざわざ部屋まで来ていた宿の主が、仰々しく頭を下げた。

「それにしても、このラビ・リンス帝国と言う国は、豊かで素晴らしいのォ」
 ルーシェリアの眺める窓の外には、紺碧の海が見えて、白い四角い建物の並んだ港町が眼下に広がる。
市場には商品が溢(あふ)れ、港には巨大な商船が何隻も並んでいた。

「はい。我らが帝国はミノ・リス王の指揮の元、北方のミュケーナイ連合との戦争に勝利し、毎年貢物を差し出させておるのです。今年も、もう直ぐ貢物を乗せた船団が、やって来るコトでしょう」

「1週間の滞在を予定しているのですが、他国人であるボクたちも、見るコトはできますか?」
「ええ、問題は無いかと。予定では3日後となっておりますので、当日にお知らせしましょう」
 宿屋の主は、ふたたび遜(へりくだ)って出て行った。

「軍事国家と聞いて最初は緊張したケド、そこまで独裁的な感じはしないね」
 舞人は、ルーシェリアの見ていた窓とは、違う窓から顔を出す。

「表向きはのォ。我らは彼奴(きゃつ)らからすれば、他国人じゃ。早々に、本性を見せてはくれんよ」
「そんなモノか……まあ、そうだよね」
 下に見える、路地を眺める舞人。

 その脇から、2人の少女の頭が顔を出した。

「ねえ、青き髪の勇者サマ」
「外を見て来ても、いいですか?」
 ウティカとルスピナは、舞人の顔をつぶらな瞳で見上げていた。

「舞人でいいよ。それじゃ、いっしょに行こうか」
「はい、舞人さま」
「早く行こォ」

 2人の少女たちは、舞人の手を取って駆け出した。

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