ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・10話

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2人の少女

「思った通り、この辺りの地盤は固いようだね。砂浜からの高さもあるし、居住区を創るには最適な場所じゃないか」
 褐色の肌の魔導士は、岩肌の大地にヒザを付けると、地質を確かめるように地面をさする。

「ソイツは何よりだぜ。だが辺りは、草木が生い茂っている。まずは伐採から始めるしかねェな」
 自慢の跳躍力で、高台の上へと駆け上がって来たバルガ王が言った。

「村を作るってのはね。そんなに簡単じゃ無いんだよ、バルガ王。無計画に草木を抜き去ってしまえば、雨が降れば土地が流失してしまうからね」

「そ、そうなのか。すまない、オレとしたコトが……」
 見た目に反し、永い年月を生きて来たリュオーネの前では、若き王も経験不足を露呈(ろてい)する。

「ふぉっ、ふぉ。バルガ王も、大魔導士サマの前では、形無しじゃな」
 バルガ王とリュオーネの前に、白髪の老人が現れた。
両脇には、2人の少女を伴っている。

「これは長老。山の村からはそこそこ距離があるのに、大したモノだな」
「道を知っておるからのォ。尾根を伝えば、老人の脚でもそこまで苦労はせんよ」
「ご謙遜じゃないか。山で鍛えた足腰が、そう簡単に老いたりはしないだろう」

「カカカ、ワシも魔導士さまに1本取られましたな」
 しゃがれた声で笑う、老人。

「それで、長老がわざわざ山を降りて来られた、理由はなんですか?」
「もしや我々の村作りに、ご協力願えるのでは?」
 合流したベリュトスとキティオンが、伺いを立てた。

「ワシができるのは、助言くらいですじゃ。それもすでに、大魔導士サマに言われてしもうたがのォ。この辺りは海の村の土地じゃが、森を切り開くとなると少しばかり、コツが入りますでな」

「イヤイヤ。わたしが持っているのは、ただの知識であって経験じゃないよ。山を知る長老の助言は、是非(ぜひ)とも仰ぎたいモノだね」

「ふぉっ、ふぉ。もちろん、協力は惜しみませんぞ」
 長老は、硬い岩盤の高台に、ドカッと腰を降ろす。

「山の民としても、海の村との交易は欠かせないモノでしてな。海の村を、海底国家フェニ・キュアの最大都市カル・タギアと、ヤホーネス王国とを結ぶ交易ルートの拠点とされるとか」

「その通りだよ。そうなれば、木や石など多くの資材が必要になるし、大勢の人手も必要となるからね」
「長老、人材の派遣と物資の調達を、お願いできるか?」

「お任せ下され、バルガ王。津波で流された流木のうち、使えそうなモノを確保させておりましてな。足場くらいには、使えるハズですじゃ」
「ソイツァ助かるぜ」

「ときに大魔導士さま。村の設計をするともなれば、助手も必要ではありませんかの?」
「それはモチロンだケド、居るのかい?」

「このモノたちを、お使いくだされ」
 長老がそう告げると、脇に控えていた2人の少女がお辞儀をした。

「右側の女の子って、バルガ王が助けたコですよね?」
「ああ、ルスピナと言ってな。子供たちを安全に洞窟まで導いた、勇敢な娘だぜ」
 バルガ王が顔を向けると、ルスピナは頬を赤らめて俯く。

 助けたときとは異なり、海の民の青を基調とした民族衣装を着ていた。
コバルトブルーの髪をお下げにして左右に垂らし、コーラルグリーンの瞳をしている。

「左の少女は、最初に長老の家を訪れたときに、お茶を出してくれたコだよ」
「そうだったぜ、キティオン。あのときは、名前も聞いてなかったよな?」

「名は、ウティカと申しますじゃ、バルガ王」
「ウティカか。良い名じゃねェか」
 バルガ王が笑うと、ウティカも頬を染め下を向いた。

 彼女は、茶色や緑を基調とした山間の民族衣装に、ハンターグリーンの髪を背中で纏めている。
耳は尖っていて、青っぽい肌にターコイズブルーの瞳をしていた。

「このモノは、森に迷い込んだ妖精族の男の娘でしてな。その男は、戦争に参加していたのか、大きなケガで直ぐに息絶えたしまったのですじゃ」

「それで長老が、身寄りの無くなったウティカを、引き取ったんだね」
 大魔導士が問いかけると、長老は小さく頷いた。

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