ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP025

2人のライバル

「クッソ。レフェリーが余計なところで笛を吹かなけりゃ、同点に出来ていたモノを」
 ランスさんが、ベンチに引き返しながら文句を言っている声が聞こえる。

「前半、彼は無得点だったからな。この調子で、抑え込めればイイんだが」
 ランスさんの決定機を阻止した、オリビさんが言った。

「残念だがオリビ。ウチのチームに、相手の攻撃を防ぎ切る守備は無い。相手より1点でも多く、得点を上げるのを優先しよう」
 ロランさんは、より攻撃的な案を示す。

「それが現実的か」
 ベンチで顔をタオルで吹きながら、オリビさんが納得した。

「いいえ、オリビ。現実的なのは、やはり守備を意識することだと思いますよ」
 1人の男が、反論した。
彼は青いビブスの左サイドバックで、23番の背番号を付けている。

「もしかしてキミは、土御門 鈴鳴(つちみかど リナル)か?」
「なんだ、オリビ。知っているのか?」
「覚えて無いか、ロラン。浜松のチームで10番を付けていた、司令塔のエースだ」

「そうですよ、オリビ。キミやロランの居た沼津のチームとは、去年は何度もやり合ったね」
 どうやらオリビさんも、最初は気付いて無かったみたいだ。

「思い出したぞ。1年前とは、かなり雰囲気が変わったんじゃないか?」
「フフ。プロのチームにスカウトされたとは言え、目立たなきゃ使って貰えるか怪しくてね」
 リナルさんは、青黒いストレートのロングヘアをしていた。

「だったら、オレも覚えていねェか?」
 今度は、右のサイドハーフのポジションでプレイしていた選手が、名乗りを挙げる。

「も、もしかして、降津 悪汰(こうつ ワルター)か?」
「そうだぜ、ロラン。久しぶりだな」
 27番を背負ったワルターさんは、ロランさんの首にヘッドロックを掛けた。

「イデデ。お前、なんだその頭。ぜんぜん、ワルターって解らなかったぞ」
「イメチェンってヤツよ。やっぱプロは、目立ってなんぼってな」

 イメチェンしたワルターさんの頭は、中央に真っ赤なモヒカンがあって、その両脇にもオレンジ色の小さなモヒカンがある。
元の髪型がどんなだか知らないケド、試合前から明らかに目立っていた。

「なんだ、お前たち。ロランの知り合いなのか?」
「ええ、イヴァンさん。彼らは去年、ウチのチームと戦った対戦相手のエースですよ」

「リナルは、ボランチとして中盤の底から、前線にボールを配球してましたね」
「でも今は、左サイドをやっているんですよ」
 オリビさんの説明を、リナルさんが訂正する。

「慣れないポジションで、大変じゃねェか?」
「そんなコトはありませんよ、イヴァンさん。今はサイドバックが、ゲームを作る時代ですからね。楽しんで、やれてますよ」

「ソイツァ、頼もしい限りだ。オレへのパスも、任せるわ」
「善処しましょう、イヴァンさん。オリビ、左サイドは遠慮なくオレを使ってくれ」
「ああ、リナル。そうさせて貰うよ」

「ワルターは、本名は芥汰(あくた)って言うんだったよな?」
「そうそう、ロラン。ガキの頃に周りから、芥汰を悪汰って呼ばれちまってよ。そっから、ワルターなんてあだ名になっちまったんだ」

「コイツは、焼津のチームのエースストライカーで、去年はガンガンに点を決めてくれてたんだ」
「お前らのチームからも、5点くらいは取ったっけか」
「ああ、厄介な相手だったぜ。だけど、サイドハーフになったのか?」

「仕方ねェだろ。前線は、イヴァンさんとランスさんって言う、実績のあるストライカーが並んでんだからよ。それにオレは元々、右サイドに展開して点を決めてたかんな」

 リナルさんと、ワルターさん。
去年、ロランさんやオリビさんの所属していた沼津のチームの、ライバルとして立ちはだかった2人。

「これは壬帝オーナーに、感謝しないといけないな、オリビ」
「ああ、ロラン。オーナーのスカウトセンスには、間違いはないようだ」

 再びピッチに脚を踏み入れる、背番号10番と7番。
その後を追って、背番号23番と27番の数字の大きい背番号の選手が続いた。

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