ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・35話

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過去と弓使い

「小娘風情が、面白いコトをしてくれるじゃない!」
 石化した泡を破砕しながら、荒ぶる太古の大地母神。

「バルガ王。今、回復を致します」
 そう言って両腕を王の胸に当てがったのは、先代騎士団長の娘であるビスティオだった。

「すまねえな。それにしてもアンタ、回復魔法が使えるのか」
「娘は、騎士としての戦闘センスは持ち合わせておりませんが、神官としての能力は母譲りでしてな」
 ザバジオス騎士団の、現行の騎士団長が言った。

「母親とは、ジャイロス殿の奥方ではなく、先代のオシュ・カー騎士団長の奥方のコトですよね?」
「キティ、お前そこ詮索するかァ?」
「う、うるさいな、ベリュトス。しかしながら、不躾(ぶしつけ)でした……」

「イヤ、構わんよ。娘(これ)の母親は、王宮魔導所の筆頭神官でしてな。もっとも、オシュ・カー団長よりも早く、亡くなられてしまわれたがな」

「流石は、神官殿の娘だぜ。もう力が、みなぎって来やがった!」
 バルガ王の顔に、いつもの快活な笑顔が戻る。

「それにしても王は、生命吸収(エナジードレイン)の攻撃を受けたのでしょう。普通の回復魔法じゃ、回復できないハズよ?」
「時間退行の魔法を、併用致しました。王の戦闘力も、ほぼ元に戻ったと思います」

「ソイツは、心強いぜ。あの化け物を相手にするには、それくらい無いと厳しいからよ」
 バルガ王は、黄金の長剣を手に立ち上がった。

「バルガ王……策はあるの?」
「策なんてシャレたものじゃ無ェが、オレが直接戦う。ベリュトスは攻撃面で、キティオンは守備面でサポートしてくれ。カーデリアは、援護を頼まれてくれるか」

「任せて。ここの地形も、大体把握したわ。全部は無理だけど、ある程度の矢は当てられると思う」
「オレは、攻撃だな。了解したぜ」
「守備は、任せろ。お前たちの面倒は、見てやる」

 バルガ王は、2人の側近を従えて、避難場所(シェルター)となっていたジャイロスの大盾を離れ、ゲー・メーテルに斬り込んで行く。

「逃げ出さずに、まだわたしに向かって来てくれるなんて、光栄だわ」
 大地母神も、邪眼剣エレウシス・ゴルゴニアを振り上げ応戦した。

「させるか!」
 ベリュトスの放ったオシュ・カーの槍が、ゲー・メーテルの攻撃を遅らせる。

「アレって、投げ槍なのよね。1度放たれたら、お終いじゃないの?」
 ベリュトスの背には、あと僅か2本の投げ槍が残されていた。

「オシュ・カーの槍は、1度放たれても、主(あるじ)の元に戻って来る能力があるのです。鉄壁のオシュ・カーと呼ばれた団長は、この聖盾エルスター・シャーレを構えながら、24本もの投げ槍を駆使して戦っておられました」

「流石は、最強と呼ばれたパーティーの、1員だけはあるわね」
「それでも、大魔王には及ばなかった。残された槍も、僅か3本だけだったのです」

「大魔王とは、そこまで強大だったのね。そんな戦いに、サタナトスの母親も……」
 カーデリアは、ひなびた山間の村での出来事を思い返す。

 大魔王との闘いに挑んだ最強のパーティーは全滅し、蜃気楼の剣士であるムハー・アブデル・ラディオだけが生き延びて、仲間の遺品を届けたのだ。

 サタナトスの母親も、当初は死んだと思われていたものの、突如として故郷の村に姿を現す。
精神を病み、その腹に誰の子かも解らない双子を身籠って。

「腹に宿っていた双子の、兄がサタナトス……事情があるのも理解できるケド、こっちだってシャロを殺られてんのよ!」
 カーデリアは邪念を振り払って、奏弓トュラン・グラウィスカを奏でる。

 10本番えた矢が不自然な軌道を描き、そのウチの何本かがデー・メーテルを貫いた。

「おのれ、鬱陶(うっとお)しい小娘が。まずはお前から、石人形に変えてくれるわ」
 デー・メーテルは、大盾を凝視する。

「グワッ!!」
 けれどもその背中に、10本の矢が突き刺さった。

「どこを、見ているのかしら。わたしは、簡単には見つけられなくてよ」
 『消える弓使い(バニッシング・アーチャー)の声が、鍾乳洞に木霊した。

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