ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・38話

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侵略の終焉

 突然、春が訪れたかのような、ゴルディオン砦の地下にある鍾乳洞。
咲き乱れる花々からは甘い香りが漂い、チョウやハチが蜜を吸いに集っている。

「大地母神の力ってのも、恐れ入るぜ。こんな地下洞窟を、春の装いにしちまうんだからよ」
 バルガ王は、黄金の長剣を鞘へと納めた。

 邪眼剣エレウシス・ゴルゴニアの元となった3本の邪眼剣は、ウチの1振りが眠っていた地底湖の前に刺さっている。
花畑に囲まれた地底湖の周りには、裸の少女たちがあちこち散らばって倒れていた。

「それより王。早く元となった3本の邪眼剣を、回収しないと……」
「地母神の依り代(よりしろ)とされた、トカゲ娘たちの身柄も確保しないとな」
 2人の側近であるベリュトスとキティオンが、王の元を離れようとする。

「残念だがそれは、叶わぬ願いのようだぜ」
「こ、この気配は!」
「アイツが、戻って来たのか?」

 離れるのを止め、それぞれの武器を構えて警戒する、ベリュトスとキティオン。
3本の剣が刺さっている真上の空間が歪み、長髪の男が姿を顕す。

「ケイダン……いや、魔王ケイオス・ブラッド」
 バルガ王も、鞘に納めたばかりの剣に手をかけた。

「どこまで使えない、ヤツらだ。つくづく手を焼かせる」
 時空から現れた男は、王たちには目もくれず、3本の剣の袂(たもと)に降り立つ。
邪眼剣が浮上して時空に消えると、男は手にしていた剣で斬撃を放った。

「カーデリア殿、伏せて下され」
「いいえ、ジャイロス団長。あの攻撃は、わたし達に向けてのモノでは無いわ」

 カーデリアが言った通り、攻撃はバルガ王らに向けたモノでは無く、湖の畔(ほとり)に散乱して倒れている、トカゲ少女たちに命中する。
斬撃を受けた少女たちは、時空の狭間へと消えて行った。

「どうやら天下七剣(セブン・タスクス)を手に入れるって任務は、失敗みてェだな」
 バルガ王が、ケイダンに語りかける。

「よもやキサマの剣が、天下七剣の片割れだったとはな。だがいずれ、復活した大地母神がキサマの剣を奪いに行くだろう」

「ソイツは厄介な話だぜ。どうせ付きまとわれるんなら、もう少し若い女が好みだな」
 海の新たな王と闇と幻影の魔王が、互いに小さく笑みを浮かべる。

「バルガ王、ご無事か」
「王都より、援軍を引き連れて参りましたぞ」
「ケイオス・ブラッドよ、ここまでだ!」

 地下鍾乳洞の入り口から、アルーシェ、ビルー二ェ、レオーチェの3人の少女騎士の声が響く。
蒼い軍装に身を固めた3人に率いられた1団が、洞窟の内部へと侵入して来た。

「どうやら、ジャマが入ったようだな……ケイダン」
「フッ、元よりこの場所で、決着を付ける気など無かろう」

 人の姿のままの魔王は、表情も変えずに空に舞い上がると、時空の狭間へと姿を消した。

「済まねェな、ジャイロス団長。結局のところアイツに、3本目の剣を奪われちまった」
 王は当初の任務を果たせなかったコトを、砦の主に詫びる。

「いえ。王が来援していただけなければ、ゴルディオン砦はケイダンの手に堕ちておりました」
 ジャイロスが王の前で片膝を付いて頭を下げると、3人の少女騎士も馬から降りて平伏した。

「止してくれよ。ザバジオス騎士団の主は、レーマリア女王だろう」
 王は照れながら、4人の騎士たちを立ち上がらせる。

「それにしても女王の側近の方々も、この短時間で王都から救援を引き連れて来られるとは、凄まじい機動力ですな」
 ベリュトスが、少女騎士の3人の偉業を称えた。

「実は我々が引き連れて来たのは、この先にある砦の警備隊なのですよ」
「流石に王都までは距離があり過ぎるので、彼らを大軍に見せようと考えたのです」
「王都には別途、伝令を出して貰っています」

「なるホド。ゴルディオン砦は、数ある支砦の中核にあるから、互いに防御を補っているのね」
 キティオンが、砦の防御網に感心する。

 それから暫(しばら)くして、王都からも援軍が到着した。
援軍に組み込まれていた魔導士や司祭たちは、石化させられていた騎士たちを、バルガ王の剣の黄金化の力を借りて治療し、多くの命が救われる。

 こうして、ケイダンによるゴルディオン砦の襲撃は、最小限の被害にて幕引きとなった。

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